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幼馴染みのもとへただ町を走り抜け、彼の病室へと急ぐ。
そして病室に着き、彼が寝そべるベッドに腰かける。
彼はふっと微笑んで言う。
「バスとかタクシーとかあるじゃん、わざわざ走ってこなくても…。でも、今日もきてくれてありがと。」
わたしは静かに頷く。
「うん、バスもあるけど、自分の足で来たくて」
その言葉を聞いて一瞬きょとんとした顔をする。
そしてすぐにふわりとやわらかく笑った。
その笑顔は少しだけ寂しげな色を帯びているようにも見えた。
「そっか、…ふふ、君らしいね。真面目だなぁ」
彼はベッドに寝たまま、少し体を起こそうとする。
すぐにわたしが駆け寄ってその背中を支え、枕を背もたれになるように整えてあげた。
何気ない、いつも通りの光景。
「ありがとう。助かるよ。」
彼は再び理屈っぽい口調で、でもどこか楽しそうに続ける。
「でも、無理はしないでほしいな。君に何かあったら、僕が悲しいから。」
「その前にわたしが悲しい。」
当たり前だろう。彼は余命宣告されているのだから。
予想外の言葉だったのか、水色の淡い瞳が見開かれる。
風がカーテンを大きく靡かせ、部屋に差し込む光がちらちらと彼の顔を照らす。
「…そっか。…ごめん。」
少し照れたように目をそらせ、ぽつりと呟く。
それからまたわたしの方に向き直り、困ったように、それでいて愛おしむように微笑んだ。
「ねえ、どうにかならないの、それ?手術とかでさ。」
彼はわたしから目をそらさずに静かに首を横に振る。
その動きはゆっくりとしていて、拒絶というより、どうしようもない現実を受け入れているようにも感じた。
風の音が止まり、病室がしん、と静まり返る。
「もう、手遅れなんだって。主治医の先生が言ってたんだ。先生が何回も説明してくれたけど、…僕の心臓はもうほとんど機能してないんだって。」
でも、わたしは彼が死んでしまうなど、諦められるはずがなかった。
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