放課後はリョウちゃんも誘って、近くの森で 手合わせをすることになった。
森へ歩いて向かいながら、それぞれの得意科目をやってみようという話が出たのだ。
ちょっと面白そう。
「も~…モトキが変なこと言うから、クラスメートに誤解されてるんだけど。お前は優しいから力を出せないんだなって」
リョウちゃんが困った顔でモトキに訴えている。
「ふうん。合ってるじゃん、それ」
「えっ…いや、僕は力なんて…」
いつもの優しい顔ではなく、少し厳しい目つきでモトキがリョウちゃんを見た。
「妖精たちの気持ちを無下にするの?子供の頃から側に居てくれたのに、いつ本気を出すの?」
「…っ」
多分リョウちゃんも解ってるんだろう
どうやって殻を破ればいいのか、自分の中に眠ってる物を引き出せるのか悩んでるのかもしれない。
モトキが空を見つめながら何かを考えている。
ふいにこちらへ視線を向けた。
その目に、何故かわからないけれど少し引っかかるものを感じる。
「先に僕とわかいで手合わせしようか」
「…ああ」
今度は何を考えてるんだろう。
森の中の少し開けた場所へ到着する。
「じゃあ、杖やるか。苦手なんだよなぁ」
「それは魔法使いじゃないのに詠唱しないからだろ」
「面倒くさいの嫌なんだもん」
なんだもんじゃないよ。
天才は興味無いことは頑張れないという偏りがあるよねぇ 。
俺にとっては得意な魔法。
高度魔法をある程度は身につけているため、詠唱を省くことが出来るようになった。
杖で打撃を与える接近戦も多少可能なため、頑丈な素材で作られた魔法杖を使っている。
青の魔法石がはまったペンダントから、同じく青の魔法石のはめられた大きめの銀杖を出す。
それを掴み、構える。
「始めっ」
リョウちゃんの合図で、お互いが間合いを取りながら走り出す。
最初は遠距離戦で行くか。
水を凍らせた細かい刃を飛ばす。
「うわっ、えげつないな」
モトキの杖は基本講習用のものなので、そんなに高い魔法が使える杖ではない。
その杖に攻撃レベルを合わせてはいるのだが、杖での魔法は苦手と言ってただけあり少々手こずっているようだ。
えーっと、とブツブツ言いながら。
杖から薄い炎の壁を作り出して氷を溶かす。
そして間髪を入れず、特大のファイヤーボールを打ってきた。
「ちょっなにこれ。デカすぎだろ!」
「えっわかんない。加減がわからないっ」
背丈より大きい物が、ビュン!と飛んでくる。
相変わらず面白いなぁ。
後ろの森へ入ったら大火事になってしまうので、更に大きな水のボールで包み空中で蒸発させる。
なんせ大きいため、爆発するように高温の水滴が飛び散った。
「あっぶ…あぶなぁ!」
高温過ぎて当たれば肉が溶けてしまう。
側で見ていたリョウちゃんが驚き、咄嗟に詠唱する。
リョウちゃんは緑の魔法花で作られた防御壁を、俺は水の防御壁を作って避ける。
モトキは…
「え?」
左腕をギュッと掴み、立ちすくむモトキが見えた。
なんで…
なんで炎の防御壁を作らなかった?
「モトキ!」
リョウちゃんと俺が急いで駆け寄る。
掴んでる患部は見えないけど、服から蒸気が少し上がって見える。
強い痛みのせいか、眉を寄せて唇を噛んでカタカタ震えている。
「基本ヒールじゃ、無理そうだからっ。高度魔法で、おねが…」
ガクリと地面に座り込み、耐えながらリョウちゃんへ高度魔法によるヒールをと訴えた。
「え、僕は…まだ、高度なんて…」
そう。
まだ覚醒出来てない彼は基本ヒールは習得してるものの、高度魔法が上手く操れないのだ。
「くそっ」
横から割って入り、腕の周りから水を凍らせて冷やしつつ、ありったけの魔法によるヒールをモトキの腕へ向ける。
基本よりはレベル高めだけれどヒーラーではない俺では表面しか癒やせない。
「このままだと、高温の熱が内部に浸透してモトキの腕が…頼む!」
全力で慣れないヒールを続けてるため冷や汗が流れてくる。
妖精たち、聞こえるんだろ。
モトキのこと助けろよ。リョウちゃんに力を。
きみのことばは、きけない
ぼくたちは…
頭に響いた声。
リョウちゃんの顔が、ハッとする。
「聞こえた?俺じゃ助けられない…」
リョウちゃんの目から不安と迷いが消えて、覚悟を決めた強さに変化する。
いいよ
やっとだね
ふふふと、可愛らしい声が沢山聞こえた瞬間。
眩しくて目を開けられないくらいの光で飲み込まれた。
コメント
4件
やばいしか出ない 日本語が思いつかないの初めてです。 天才作家……。
ついにリョウちゃんが殻を破る瞬間…!!!楽しみすぎて口角どっか行きました😇