夜の帳が静かに降りた。見上げた空には、ぼんやりと月が滲んでいる。
晴明と道満は、ゆっくりと並んで歩いていた。
誰もいない道。遠くで虫の声が響く。
家に着くまでのあいだ、言葉はほとんどなかった。
沈黙が気まずくもあり、でもどこか穏やかで。
玄関を開けると、いつもの匂いがした。
晴明の、そして――彼の暮らす匂い。
道満「……帰ってきたな」
晴明『うん』
短く返すと、靴を脱ぐ手が少し震えていた。
居間に灯りをつけると、柔らかな橙が壁を染めた。
ふたりきり。
たった今まで多くの人の前に立っていたのに、
急に世界が、僕らだけになった気がした。
道満「緊張してたな」
晴明『そりゃ、するよ……あんなにたくさん人がいたんだもん』
道満「でも、ちゃんと笑えてた。……綺麗だったよ」
晴明『や、やめてください……』
道満「何でだ?」
晴明『恥ずかしいから……』
彼はそんな僕を見て、静かに笑った。
ほんの少しだけ優しい顔をして。
晴明『……ねぇ、道満さん』
道満「ん?」
晴明『どうして……僕を、選んだんですか?』
その問いは、思っていたよりも静かに、
でも深く、夜の空気の中に溶けた。
道満「……そんなの、決まってるだろ」
晴明『……え?』
道満「お前じゃなきゃ、嫌だったからだ」
その瞬間、胸の奥で何かが鳴った。
息が、詰まる。
晴明『……どうして、僕なの?』
僕なんかより、もっと明るくて、可愛い人だってたくさんいる。
雨みたいに、ちゃんと笑ってくれる人も。
僕は、ただの――代わりみたいなものだったのに。
道満「お前は、人の幸せばかり見すぎだ」
道満「だから、俺はお前に言ってやりたかったんだ。
――自分の幸せも、ちゃんと見ろって」
その言葉に、胸の奥がぎゅっと締めつけられた。
頬に触れた彼の手は、少しだけ熱い。
晴明『……嬉しいのに、どうしてだろ……涙、止まんないや』
なーんだ、道満さんはずっと僕の事を見ててくれてたんだぁ、、
ずっと勘違いだったんだなぁ
道満「泣いていい。今日くらいは、泣いていいんだ」
その優しさが、余計に涙を誘った。
晴明『……僕、本当に、幸せになっていいの?』
道満「もう、なってるだろ」
唇が触れた。
涙の味が、少しだけ甘かった。
――世界が、静かに閉じていく。
そして、夜が始まった。
― 道満視点 ―
晴明『……どうして、僕を選んだの?』
あの問いを聞いた瞬間、俺は心の奥で小さく笑いそうになった。
あぁ、やっぱり――そうやって困った顔をするお前が、一番、俺を狂わせる。
本当は全部、計画通りなんだ。
この結婚も、この夜も。
お前が俺を信じきれずに揺れるその姿を、見たかった。
信じたいのに、怖くて、戸惑って、泣いて……
それでも俺から離れられないお前が、愛しくてたまらない。
道満「どうしてか、なんて、そんなの決まってるだろ」
口ではそう言いながら、胸の奥では別の言葉が脈を打つ。
――お前が俺を見失うたび、俺はお前を見つけたい。
――お前が俺に怯えるたび、その震えごと抱きしめたい。
優しさなんて、とうに偽りだ。
俺が欲しいのは安らぎじゃない。
お前が俺の名を呼ぶ瞬間の、あの切なげな声と潤んだ瞳――
逃げ場のない愛情だけが、俺を満たす。
頬に触れる。
お前の呼吸が、止まる。
怖がっているのか、求めているのか、その境界が曖昧で。
その曖昧さがまた、俺を深く沈めていく。
道満「……困った顔も、泣き顔も、笑い顔も――全部、俺だけのものだ」
月明かりが白い布を照らし、影がひとつに溶けた。
夜は、深く、静かに沈んでいった
コメント
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ぬぉっうぐっぐっぐはっ…あっっっっちゃんっっっっっ!!!!!!! お前まじそういうとこ好きだわ💕うんうんうん、やっぱり学晴だよね。うん!大好き!愛してる!!! あっちゃんヤンデレっぽいの好こ♡( ᵕωᵕ♡ )てか、最終回やん、寂しいよ?私🥺何周もするねこの話💕💕💕💕💕💕💕💕💕
途中から涙が出てきそうになった 笑 これはもう小説化していいって思う自分がいる 道満地味にヤンデレ?
一気に書いたから、結構変かも、、ごめんちょ