「……その後は」
声が震えていることに気付いた。刘亦辰は今にでも泣きそうになっていた。頭を撫でてやりたかったけれど俺にはそんな義務はない。こいつの頭を撫でるべきなのは “ 俺 ” ではない事に 最初から気付いていた
「黄樱花、貴方しか居ないんだ。私の空いた隙間を綺麗に埋めれるのは貴方しか居ないんだ……」
「悪かった」「……悪かった」と何度も頭を床に付け謝っていた
「刘亦辰。君は悪くない。誰でも過ちを犯したと言われればそのような反応になるに違いない。」
「例え其が嘘でも本当でも。」
触れることは許されないが言葉なら幾つでも許されるだろう。俺は優しく師匠のように声をかけた。
「君が思うように生きれば良い。私は少なくとも其を願うばかり。」
「私達の絆と言うのは金のように堅く、蘭のように芳しい。」
「何時迄も君を恨んでは居ないさ。」
あははと笑うと強く抱き締められた感覚に襲われた。「苦しい…」と呟いても離してくれなかった。どうやら泣いているみたいだった、(こいつを泣かせて厄介なことに巻き込まれないか~…?)と、俺は不安でしかなかった
泣き止んだかと思ったら、こいつは呑気にこんなことを言い出した
「……私は貴方を忘れたくないんだ。何か一つでいい、貴方がいたと言う証拠をここに残してくれないか。」
「うーん」と一つ呟き俺は口を開いた。
そう言えばポケットの中にペンのような物が入っていた。 これが居たと言う証拠なのかは別としてまぁ、少なくとも形見にはなるだろう
「これは……?」
と恐る恐る尋ねるとまた刘亦辰は、ぶわっと涙を浮かべた。
( 俺まさか、またあかん事をしたか!?)とあたふたしていると刘亦辰はペンを受け取り、其を宝物を扱うかのように大切にホールドしていた
「…これは何に使っていたものなんだ」
俺がそう問い掛けるとゆっくりと口を開いてこう綴った
「師匠はいつも書き物をしていました。その時に使っていた物なんです。……これも忘れてしまいましたか」
「ああ~…そんなことあったな、!」
焦るように言うと微笑ましいかのように刘亦辰は笑っていた。調子が狂う。
「てか、刘亦辰。物でいいのか。私が此処に居るって言うのに」
「私を欲しがらなくていいのか?」
シーンっと静まった。チラッと刘亦辰の方を見たら刘亦辰は固まって赤面をしていた。何か変なことを言ったか?と、先程言ったことを脳内で並べてみると思わず俺も赤面をしてしまった。
「あいや、違うんだ。違うっていうか、これは何かの間違いだ」
「物で満足してくれないか」
あははと笑って誤魔化したが刘亦辰は生憎赤面のまま固まって口を開かなかった
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