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手を伸ばした先に、君がいた

14 - 第14話 最終話『優しさに、慣れちゃってたから──気づくのに時間がかかった』

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2025年06月15日

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『優しさに、慣れちゃってたから──気づくのに時間がかかった』

秋の終わり。

教室の窓の外に、落ち葉がくるくると舞っている。


季節が変わるたびに、

姫那の表情も少しずつ柔らかくなっていった。


「姫那、最近いい顔してるね」

そう声をかけると、彼女は恥ずかしそうに笑う。


それが、うれしかった。

でも、やっぱりどこか、心の奥が少しだけ空っぽで。


(……わたしは、いつから“応援する側”に慣れてしまったんだろ)

 • 


図書室での放課後。

レポートの下調べをしていたら、

ふいに声をかけられた。


「その資料、こっちの棚にも似たようなのあったと思う」


顔を上げると、

眼鏡をかけた、静かな雰囲気の男の子がいた。


あまり見かけないけど、

どこかで名前だけ聞いたことがある。


「えっと……ありがとう。あの、君は……」


「森下陸(もりしたりく)。たぶん、クラスは違う」


それだけ言って、陸くんはスッと資料を指差した。


「こっちも参考になるかも。……じゃあ」


「あ、待って。……ありがとう」


笑って頭を下げると、

彼も少しだけ笑って、歩いていった。


その笑顔が、思いのほか、

心にふっと残った。

 • 


帰り道、落ち葉を踏みながら歩いてると、

なんとなく思い出すのは、彼の後ろ姿だった。


(あれ……なんでだろ)


気になるっていうより、

“何かを忘れてたような感覚”に似ていた。


誰かに優しくされたとき、

「これは恋じゃない」って決めつける癖がついてた。


でも、

それって、ほんとはちょっと寂しいことなのかもしれない。

 • 


次の日も図書室に行くと、

陸くんは、また静かに読書をしていた。


目が合うと、

ふいに彼が言った。


「君、笑うときに少し首をかしげる癖、あるよね」


「……え?」


「昨日、思った。

たぶん、緊張してるときに出るクセ。

……ちょっとだけ、似てる人がいたから」


心臓が、ひとつ鳴った。


それは過去の痛みじゃなくて、

“これから始まるかもしれないもの”への合図だった。

 • 


凛は、思った。


(ああ……わたし、また誰かを、ちゃんと見ようとしてる)

 • 


まだ、それが恋かどうかなんてわからない。


でも、

“わからない”ことを、

今はちょっと楽しみに思える自分が、少しだけうれしかった。


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