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若干グロ、死ネタ(?)注意⚠️
すきだよ、と当たり前のごとく呟いた。
夜遅く、今日も大好きな君の喉にナイフを当てる。切っ先が僅かに捉えた皮膚からは、深紅の鮮血が水泡を作り滴った。
喉に喰らいつくように、でも歯を決して立てることはせずに、甘美なその鮮血を味わった。広がる生臭い匂い。鉄の味。脳髄まで君色にとぷりと浸かるのが判る。
クラクラするほどの強い血の匂いが鼻腔を突いて、意識が遠のくのすら感じる。
必死に無我夢中でその鮮血をひたすらに舐めていると、君が起きてしまった。
幸い喉の傷には気づいていないようだ。
「どうしたの?顔色が優れないよ。」
寝起き開口一番に僕の心配だ。そんな甘ったるい優しさがとても好きだよ。喰らい尽くして、隅までしゃぶりきってしまいたい。そんな肉欲を堪え、ただ一言、
『大丈夫だよ』
とだけ返す。
本当を言うと大丈夫な訳が無い。
こんなにも魅惑的なのに。こんなに癖になる味なのに。僕のこの悪癖が知られたら。
そっと背に隠したナイフは、静かに鋭く月光を反射していた。
「本当に?僕と一緒に寝ようか。」
ガラスのように綺麗な声。さら、と一筋流れた髪。微睡んでいる表情。
『そう、だね。隣に失礼するよ。』
知られたら、生きては行けないから。ならばせめて知られるまでは、甘ったるいくらいの幸せを、君の血と一緒に啜っていたい。
隣にそっと寝転がると、君の体温がシーツから伝わってきて、絶え間なく脈を打つ心臓が騒がしい。
シーツにも、掛け布団にも、枕も、全部に君の匂いだけが染みている。
君の匂いしか感じられなくて、動悸は酷くなる一方だった。 ドキドキする。君の寝息も全部飲み込みたい。
全部好きだよ。
よく眠っている君の喉に、牙を突き立てた。