【注意書き】
nmmn作品です。
ご本人様や、nmmn作品が苦手な方のお目にふれないようご協力ください。
ご本人様とは一切関係がありません。ただの二次創作です。
無断転載、スクショ、拡散、晒しなどはお控えください。
最初にそう思ったのはいつだっただろうか。
彼とは幼稚園も小学校も中学校も高校も同じで、ほぼずっと同じクラス。学校に行く時も帰る時も、遊びに行く時もほぼずっとそばにいた。それが当たり前で、それが日常だ。
何年も一緒にいるのに彼と喧嘩したことはないし、彼を嫌に思ったことはない。
身長がめちゃくちゃ高くて、頭が良くて、バスケ部のリーダーで(部長にはなりたくなかったらしい)、歌がめちゃくちゃ上手くて、コミュ力はバツグンで、仲良い人の前ではよく楽しそうにケラケラ笑って、俺の次にモテて、変なところで恥ずかしがり屋で、なんかあるとすぐ顔真っ赤になって、褒められるとすぐ調子乗っちゃって、でもかわいいくて、痩せてて、でも筋肉もちゃんとあって、深緑の綺麗な髪で、色白な肌で、そして赤い赤いあの目。
あの目に見つめられれば、どくんと心臓が高鳴り、言葉に出来ない気持ちが湧き出す。もちろん嫌なものじゃない。
中学3年生の頃にそんな気持ちに気がついちゃって、一緒の高校に行きたいって思った。彼より頭が悪かった俺は彼の数百倍勉強して、見事彼と同じ高校に滑り込めた。自分の受験番号を見つけた瞬間、たぶん今までで1番叫んだと思う。
そんであれこれと過ごしてたらもう高校3年の夏終わり。
青春とか、受験とか、部活とか、もうめちゃくちゃ忙しい。授業だってグンと難しくなって、でも彼に好かれたいからいっぱい勉強して、なんとか学年1位を保ってる。彼に出来る男って思われたくて生徒会長になった。彼が『テニスやりてぇ〜』って言ってたからテニス部に入った。(結局彼はバスケ部入ったけど)
くだらない嘘とか俺の体調不良とかは鋭いくせに、こーゆー系には鈍感だから、こんなあからさまに行動しても彼は俺の気持ちに気づかない。
いつかはこの気持ちを伝えなきゃいけない。
それはわかってる。でも、もし振られたらって思うと息が詰まる。
もう隣に立てないかもしれない。
もう話せないかもしれない。
もう笑ってくれないかもしれない。
そんなの絶対ヤダ。生きてけない。だからずっとこの気持ちは胸に秘めている。
キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴る。日直が号令をかけて、授業が終わる。ふわぁと欠伸をかまして、ググッと体を伸ばす。明るい陽の光はカーテンを閉めているのに溢れ出していて、今日はいい天気だなーってぼんやり思った。帰りの準備をして、ちょっとだけ彼にちょっかい出して、席につく。
あぁそういえば。
今日は神社で夏祭りが行われるらしい。高校最後の夏祭り。学校はその話題で持ちきりだった。
ま、もちろん夏祭りに一緒に行くのは彼。
帰りの会も終わって、学校から帰ろうと、彼と共に下駄箱へ向かえば、俺の外靴の上に白い封筒が置いてあった。
その内容は、「今日の午後8時に本殿裏に来てください」とのこと。名前は同じクラスの女子。
そういや“俺のことを好いているんじゃないか”って噂が流れてたけど、ホントだったのか。しかも呼び出された時間は花火が上がり始める時間。彼と2人で見たかったのに。
でもこればっかりは仕方ない。告白っていうものはその人の人生に大きく関わるものだ。だからしっかり向き合ってあげなきゃいけない。せめて告白してよかったって思ってもらえるぐらいには。
隣で手紙を覗き込んでた彼がニヤニヤした顔で『どうすんの?付き合うの?』って聞いてきたけど、残念ながら俺の心はお前だけ。「付き合わないよ 他に好きな人いるし」とだけ言って歩き出す。
『ねぇ好きな人って誰?』
「誰だろーね」
『俺らの仲じゃん!教えてよ!』
「やだ」
のらりくらりと躱して躱して、家に着けば彼も諦めて、『また後で』って手を振った。
ちょっとお菓子食って、ゲームしてればもうこんな時間。
歯磨きやら洗顔やらなんやらをして、服を着替えて、祭りが行われる神社へ急ぐ。もう彼は待っていて、俺に気づくとニヤって笑って手を振ってくれた。うん、可愛い。
お互い浴衣なんて着てるはずもなく、街に遊びにいくようなラフな格好。
『らっだぁ遅れたから、わたあめ奢りね』
「…ハイ」
いや、わたあめなんだよ。可愛すぎるだろ。
『やったぁ!あっこにいっぱい屋台あったよ』
「じゃあ行くかぁ」
2人で肩を並べて歩き出す。そこはたくさんの音が飽和していて、それでも彼の声だけは聞き取れた。ラムネ買って、射的勝負して、わたあめ買わされて、ホットドッグ買って、シャカシャカポテト食って、とにかく楽しんだ。
「ハイ俺の勝ちぃ〜!!!」
『でもらっだぁ、俺が輪投げしてる時にくしゃみして邪魔してきたじゃん』
「それはゴメンじゃん」
『モテる男はそれで許されるから違うよな』
「ぐちつぼもモテるじゃん」
『一時の感情に流されただけだろ
俺を本気で好く奴なんていないでしょ あんま女子と話さんし』
確かに彼は女子と話さない。話しかけられたら話すみたいなスタンスを貫いていて、彼から話しかけられた女子は当分そのことを自慢できるらしい。普通に話せるし、話もオモロいのに、話さないのは彼のその自己肯定感の低さ故だろう。ま、そんなとこ含めて可愛いけど。
いつもなら流されてしまうけど、今なら聞けると思った。秋の冷たくなり始めた空気を少し吸いこむ。
「ぐちつぼはさ、…好きな人いないの?」
なんでもない。なんでもないフリをして聞いてみる。俺が求める答えなんて来るはずがないとわかっていながらも、期待してしまっている自分の心に溜息が出る。俺ってやっぱりどこまでいっても俺だなぁ。
ちょっと迷ったように頬を掻いたのを横目に見ながら、バクバクうるさい心臓を押さえ込む。
『ん〜、いるっちゃいるよ?』
「えっ!?!?」
ん???いるって言った、今???あのぐちつぼが???
『ま、気になってるってだけだけどね』
「ちょっ待て待て待て 誰、それ?????」
思わず大きな声になってしまったが、そんなことを気にしている場合ではない。今、俺のちっぽけな恋が果てようとしているのだ。
必死なってぐちつぼに聞いてみても、『言わないよ らっだぁだって教えてくれないくせに』と頬をぷくぷくと膨らませてしまう。それも可愛いけど、!!!
「え、俺が教えたらぐちつぼも教えてくれんの?」
『いや、教えない』
「ねぇ、一生のお願い!てか、教えてくんなきゃ俺もうじき死ぬ!」
『らっだぁはそんな脆くねぇよ 生存力Gなんだから』
『てか、早く告白されてこいよ 待ってる女子が可哀想だぜ?』
「うぅ〜…じゃあ帰ってきたら教えてねっ!!!!絶対だよ!」
『ハイハイ 行ってらっしゃい』
「行ってきますぅっ!!」
ぐちつぼに手を振って、手紙に記されてた場所に向かった。
待っていたのはやっぱり同じクラスの女子で、緊張した面持ちで告白された。別にその子のことが嫌いなわけじゃないけど、特に好意を持ったこともない。だから出来るだけ優しく断って、伝えられて良かったと泣くその子に背を向けて、すぐ彼の元へ向かう。
花火はもう始まっていて、やっぱり1番最初に打ち上げられた花火を彼と一緒に見ることはできなかった。
階段を駆け上がって、坂道を登って、少し走れば視界が開けた。そこでみた景色はきっと一生忘れられないだろう。
星がキラキラと輝く空に咲いた色とりどりの大きな花。その光に魅了されて目を離さない彼の瞳。秋の優しい風でふんわりと揺れた髪。綺麗、そんな言葉じゃ表せない横顔。その横顔に手を伸ばしかけて、ぐっと堪える。深呼吸して忙しなく動く心臓を落ち着かせながら、彼に近づく。
『…ぁ、おかえり らっだぁ』
「っ…ただいま」
花火を背に、俺に振り返って笑いかけるその姿はまるで天使のようで、またどきどきしてしまう。
『花火、綺麗だね』
「うん、すっごい綺麗」
花火なんかより、空を見上げる彼の方が断然綺麗で。
「ねぇ、ぐちつぼ」
『ん〜?』
「好きだよ」
叶わない恋だってわかってた。
自分の想いを伝えることで、彼に迷惑がかかることもわかってた。
でも、それでも、それでも伝えたくて。伝えないまま側にいるのが辛くなっちゃって。
『……、ぇ…?』
彼がゆっくりと俺に振り向く。
俺の告白の意味がわからなかったのか、それともわかってしまったのか、こちらを見つめるまんまるな目が可愛い。
「好き、ずっと前から好きだったよ」
『………、っ…!』
首からみるみると顔を赤くさせ、もう耳まで赤くなってしまった。何を言おうとしたのか、ぱくぱく口を開いては閉じて、手を握ったり開いたりする。あぁ、恥ずかしがる姿も可愛いな。この姿を見るのももう最後かもしれないけど。目に薄い膜が張られて、視界がボヤける。
花火はまだ打ち上がり続けていて、彼を美しく彩っている。
「…、……ごめん、ほんとは伝えるつもりなかったんだけど…、…忘れて」
『……っ、…ぃや、……、』
「こんなこと言われたらもう無理かもだけど、出来れば今まで通りに話してくれたら嬉しいな」
『…、ん……』
「…あー、俺先に帰るわ 楽しかった、今日はありがとうぐちつぼ またね」
彼のまだ混乱してるその様子を脳裏に焼き付け、軽く頭を撫でて、背を向ける。これ以上ここにいたら、必死に抑えてる涙が、心が溢れてしまいそうで。いつも通りのペースで歩き出す。
なんで伝えてしまったんだろう、今まで通りでも幸せだったのに、と後悔する自分もいれば、伝えたことで気持ちがスッキリしたし、この告白に満足する自分もいる。
いろんな感情がぐっちゃになって、収拾がつかない心に呼吸を整えながら、帰路につく。
『…待って!らっだぁ!!!』
あぁ、止めてほしくなかった。だって期待しちゃうじゃん、そんなわけないのに。
ざっざっざっ
止まる気配もなく、足音が近づいてくる。深呼吸をして下がっていた口角を上げ、ゆっくり振り返る。
その瞬間だった。
首周りに腕が巻き付いて、そのままぎゅっと抱き寄せられる。彼の爽やかな匂いがふんわりと俺を包み込む。
『─…き。』
周りに誰もいないっていうのに、俺の耳元にぐいっと顔を近づけて、俺だけにしか聞こえないような小さな声で、告げられたその言葉。
嬉しくて、嬉しくて思わず彼の華奢な体に腕を回す。そのまま強く強く抱きしめて、ぐりぐりと肩に押し付けてくる頭を優しく撫でる。
「おれも、俺も大好き。」
しばらく愛を伝えて、彼の背中から腕を離す。ぐずぐず鼻を啜って、静かに綺麗な涙を流す彼の頬を親指の腹で優しく拭って、そのまま彼の柔らかい唇にキスを落とす。
目を見開いたまま固まってしまった彼にまた笑えば、その頬はみるみる赤くなっていく。
「…かわい」
『〜〜〜〜ッ!』
頬を撫でながら呟けば、もっと顔を赤くさせてぎゅっと抱きついてくる。自分の顔を隠すためなのかはわかんないけど、そんな行動とっちゃうお前は何よりも可愛いよ。
腕の中の温かい体温を感じながら見上げた色とりどりの大きな花火は今までに見たどんな景色よりも美しく見えた。
コメント
2件
うわー!!!rdgt最高です👍🏻👍🏻口角上がりっぱなしです😇