テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
普段なら、楽屋のソファで携帯をいじっているRYUKIの隣に、当然のような顔で滑り込んでくるのはNAOYAのほうだった。
「ねえリュウキ、これ見て!」
「今忙しいんで」
「つれないな〜」
という、いつもの決まったやり取り。口では鬱陶しそうにしながらも決してその場を離れないRYUKIと、それを分かっていて楽しそうに絡み倒すNAOYA。メンバーも誰も気に留めない、MAZZELの日常の一コマだ。
しかし、その日は少し様子が違っていた。
ダンスレッスンが終わり、各自が汗を拭ったり水分を補給したりしている休憩時間。NAOYAは珍しく一人で鏡の前に座り込み、真剣な表情で振りの微調整を繰り返していた。周囲に流れる緩やかな空気とは対照的に、彼の周りだけぴりっとした集中力が漂っている。
そんなNAOYAの後ろ姿を、部屋の隅からじっと見つめる視線があった。RYUKIだ。彼はスポーツドリンクのボトルを握りしめたまま、しばらくフリーズしていたが、意を決したように立ち上がると、一直線にNAOYAのもとへと歩き出した。
トントン、と少し強めに肩を叩かれる。NAOYAが振り向くと、そこには眉間に少しシワを寄せ、どこか不機嫌そうな、けれど少しだけ照れくさそうな顔をしたRYUKIが立っていた。
「……何? リュウキ」
NAOYAが汗を拭いながら尋ねると、RYUKIは言葉の代わりに持っていたタオルをNAOYAの頭からバサッと被せた。
「……やりすぎ。集中すんのはいいけど、休憩中にまで根詰めんなよ」
いつもなら「構って」と寄ってくるNAOYAをあしらう側のはずのRYUKIが、自ら距離を詰めてきている。NAOYAは被せられたタオルの下で、一瞬ぽかんと目を見開いた。
「なにそれ。珍しいじゃん、リュウキから来るとか」
「……別に。お前が静かだと、ペース狂うだけだし」
RYUKIはフンと鼻を鳴らすと、NAOYAの隣にドカッとあぐらをかいて座り込んだ。そのまま強引にNAOYAの手にスポーツドリンクのボトルを握らせる。「飲め」と言わんばかりの圧だ。
バチバチと視線が交差する。お互いに譲らない強い意志を持った二人だからこそ生まれる、いつもの張りつめた空気。けれどその底には、言葉にしなくても伝わる絶対的な信頼と気遣いが隠れていた。
「ふーん……」
NAOYAの唇の端が、ニヤリと上がった。先ほどまでの真剣な表情は消え、いつもの意地悪で楽しそうな笑みが戻ってくる。
「なんだ、寂しかったの?」
「は? 違うし。ただの体調管理の指摘だから」
「素直じゃないな〜。本当はナオが構ってあげないと退屈だったんでしょ?」
「絶対違う!!」
即答するRYUKIの耳が少し赤くなっているのを、NAOYAは見逃さなかった。タオルの上からポンポンとRYUKIの頭を雑に撫でると、RYUKIは「やめろよ!」と手を振り払おうとする。
「はいはい、ありがとうね。じゃあ、もう少し休んだらまた付き合ってよ」
「……言われなくても、最後まで付き合うし」
そっぽを向くRYUKIの横顔を見て、NAOYAは満足そうにドリンクを一口飲んだ。自分から踏み込んできた年下の相棒の存在が、心地よい熱となって身体に充填されていくのを感じながら。
𖤐·̩͙
10,330