その日の夜彼がアタシの隣で寝ている時にアタシは彼の首に手をかけていた。
「愛?どうした?」
彼は寝ぼけていたのかアタシをそう呼んだ。浮気相手の名前だろう。アタシが知る彼の女友達の名前にあいはいなかっから。
「ごめんなさい。アタシ我慢出来なかった。楓がアタシを頼ってくれなかったから…苦しくなっちゃったみたい。」
「和音…?!」
「お願い…アタシを愛しているって言って。誰よりもアタシを想っているって言って。」
気づかないうちに手が力んでしまっていたみたいで彼が苦しんでいる。
「やめろ…!」
彼はアタシの腕を掴んで投げ、アタシは壁に打ち付けられた。とても苦しかった。壁に当たった背中がヒリヒリと傷んで、彼の目が怒りに満ちていて、ここではアタシが悪者のようで。
次の日になると彼はアタシに別れを持ちかけた。アタシはずっと考えていた交換条件を持ち出した。彼が浮気をしたのはアタシが身体を貸さなかったから。だから週1で身体を貸す代わりに恋人関係を続けることと休日に2人で過ごす時間を作って欲しいという内容で。彼はクズに成り下がっていた。すぐに了承し予定を組んでした。昔と変わってしまった彼を見てもアタシは悲しくなかった。なぜかはアタシは分からなかった。
「じゃあ土曜日の夜は10時に帰るよ。日曜日は休みをとる。」
「ええ、ありがとう。」
アタシに友達はいなかったから休日に予定があることもなかった。
平日はお昼はご飯を作って食べて編み物をする。夜は0時を過ぎてから帰ってきた彼を労る。土曜日はベットの上でゴロゴロ。日曜日のお昼は絵を描いて壁に飾る。夜になれば彼が帰ってくるからベットの上で愛を紡ぐ。今までと変わりない、いいえ、今までよりも充実した毎日を送れていると思う。アタシだけを愛してくれる彼との暖かな時間。ずっとこのままでいたい、何年も変わることの無い彼への恋心も全てこのままで。
あの日から何週間か経った時彼はこう言った。
「俺たちの子供が欲しい。和音も子供は好きだろ?」
アタシはすぐに返事ができなかった。したくなかった。彼との間に確実な関係ができるのは嬉しかった。だけど、彼との間に他の誰も入れたくない、例えそれが彼との愛の結晶だとしても。
「子供は好きだけど、アタシは今のままが幸せよ?楓は違ったの…?」
「幸せだよ!でも街を歩いていると親子を見かけるんだ。それがとても幸せそうでね。」
「和音となら何があっても幸せに感じれるそれは間違いじゃない。だけど、、和音ならわかってくれるだろ?」