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「……初めはなんてこと無かった」
少し落ち着いたぼんじゅうるが上半身を起こしてゆっくり話し出した。
でも、少しずつ蓄積していって、アンチコメントが頭から離れなくなった。メンバーの弄りに対応できなくなる程、心に残って気づいたら理想のぼんじゅうるを演じていたと。
知らないで欲しかった。
見ないで欲しかった。
考えないで欲しかった。
俺という存在を意識しないで欲しかった。
君達の貴重な時間を俺という存在に少しでも使って欲しくないんだ。
なんで分かってくれないんだよ。
と毎日毎日考えて毎日毎日演じてた。みんなのぼんじゅうるはこうかなって、、、
「心がすっげえ痛てぇんだ…ははっ」
心臓付近を強く抑えながら、悲しそうに笑いながらドズルを見る。ギュッと繋いでいた手が強くなった。
「ぼんさん、俺たち、みんな貴方の力になりたいです。」
「……ん」
「関わらせてください…」
「……」
ぼんじゅうるはゆっくりと頷いた、もう無駄なプライドは捨てて全てを仲間に預けようとヘラり微笑んだ。その顔はドズルのよく知っただらしなくても、いざと言う時は頼りになって、ずるくて、かっこよくて、、そう、いつものぼんじゅうるだった。
「っ、ぼんさん、本当に俺と、俺たちと一緒に居てくれて…ありがとうございます」
頼ってくれてありがとう、と繋いだ手を額にあてながらドズルは掠れた声で思いをぶつけた。
「……ドズルさん、俺、少し疲れたよ、」
「…はい」
本気の気持ち、動画内ではキャラでよく言うが滅多に出さないプライベートの弱音。
「ちょっと、……休もうかな、」
「…………はい」
ぼんじゅうるは活動休止を選んだ。
あの後、1ヶ月程ぼんじゅうるとドズルは話し合いを続けた、ストックの動画が少なくなりリスナーも『最近ぼんさん休みの動画多いね』と気づき始めた頃、2人は生配信にて自分達の今の状態を話す事に決め、そしてそれをメンバーに報告しようと動いた。
ぼんじゅうるは、ちゃんと自分で話すよ、とよろける体を奮い立たせる。
その身体を横でドズルが支えながらゆっくりと会社に出勤した。
会議室の前に着くまでに遠巻きにスタッフ達が心配そうにぼんじゅうるとドズルを見ていたが、皆話しかけず見守ってくれていた。
「情けないね……あんなに強がってたのに、こうも弱るものなんだね、人って……」
ぼんじゅうるが乾いた笑みを浮かべながらヨロヨロと歩く。息も上がりやっとの思いで目的の場所まで着く。
その扉をゆっくりと開けると、定位置に座ったメンバーがゆっくりと顔を上げぼんじゅうるを見た。
数ヶ月ぶりに見たぼんじゅうるは痩せていて、今にも折れそうな程弱っていた。
「……遅いよ」
おんりーが苦しそうに笑いかける。
「お待たせ、、 」
ごめんねと弱く笑い返事をするとその隣に座っていたMENがクッ!と唸り俯いた。
「皆に、、言わなきゃいけない事がある」
「……ぼんさん、ここに座りましょう」
ドズルが席に案内しゆっくり腰を下ろす。そこの席はドズルの隣でメンバーと向かい合う形になっていた。
「っーーー!!やだ!!」
突然、目の前に座るおらふくんが泣き叫んだ。
「やだよ!!聞きたくない!!」
辞めるとか言わないで、居なくならないで!!とぼんじゅうるを睨み涙を散らしながら話す。
「おらふくん……」
「ドズルさん!!なんとも思わないんですか!!?僕は絶対嫌だ!!ぼんさんが居ないドズル社なんて!!絶対いやだ!」
なんで納得した見たいな顔するの!なんで止めないのドズルさん!!と、うわぁー!と泣く。おんりーがその背中を横から抱きしめ静かに涙を流している。
大事な話があるとだけ言われ集められたメンバーは最悪な事を沢山考え沢山悩んだ、どうやったら元に戻れるか、どうやったらぼんさんを守れるか、、必死に考えて答えを出せずにいた。そんな中、今にも消えそうな様子で現れたぼんじゅうるとその横で全てを悟った様な表情のドズルを見て、「あ、終わりなんだ」と心が凍った。
ドズルがぼんじゅうるの家に行ったあとから、ぼんじゅうるへの全てのコンタクトはドズルが担っていた、それから何かある度に1度ドズルを挟み、そこからぼんじゅうるへという流れができていた、、そんな中の集まり、、皆最悪な事態を想像していた。
「ふふふ」
ニコリと笑うぼんじゅうるに端に座ったネコおじが怒鳴った
「何がおかしいんですか!!こっちがどれだけ!!」
心配して苦しんでると思ってるんですか!?と叫びかけてその口を閉じた。
ドズルがぼんじゅうるを見つめながら笑ってる、その顔を見ながら「ドズルさんの言う通りだね」とぼんじゅうるも笑う。
「ごめん、みんな、俺辞めないよ」
でもね、少し休みたいの、とトロンとした瞳でつぶやく。
「え、、やめ、ない?」
本当に?とMENが年相応の反応を見せた。
「ぼんさんにね、どれだけ皆が貴方のことを想ってるか見せたくてさ、」
「きっと皆泣いて止めてくれるってドズルさんが言うから、嘘だ〜て思ってたんだけど、、ふふふ、本当だったからさ、」
皆ありがとう、今まで本当にごめんね
とぼんじゅうるは弱く微笑んだ。
「っ、よかっ、た」
おんりーがカタカタと歯を鳴らし囁く、「怖かった、ぼんさんを追い詰めたのが俺だったかも、俺の存在がぼんさんを苦しめてたんじゃないか」と震える口で続ければ、ぼんじゅうるはゆっくりと首を振る。
「違うよ、俺が弱かっただけだ、おんりーは何も悪くない、あの時は本当に酷いことを言った、ごめん、」
追い詰められて、その捌け口に使ってしまったとぼんじゅうるは頭を下げた。
黒のカーディガンが痩せた身体には大きくて肩から落ちる、ドズルが横でソレを戻しながら「ぼんさん、キツイところは?無い?」と背中を摩る。
「大丈夫?」と聞くと必ず「大丈夫」と返す事を知ってるからか、ドズルはしんどい所がある前提で話し、何処?と聞く。
「ん、少し、喉が乾いたかな」
ドズルは横に置いたぼんじゅうるのバッグから水を出し渡す。
「ありがとう」
と受け取るとペットボトルのキャップを開けようとした、が力が無いその手では中々開けれず、「ごめん、ドズルさん、」とゆっくりと渡し開けてもらった。
少し俯き「こんなのも開けれなくなって、みんなに迷惑かけてる」とモヤモヤと考えると横から
「いま、ぼんさんネガティブモードになってるでしょ」
とドズルがキッと睨んできた。
「仕方ないでしょ、力めちゃくちゃ落ちてんですから、そこはみんなでカバーしますし申し訳ないって思わないでください」
ぼんじゅうるは「そうだね、ありがとう」とふわりと笑う。
「という訳で、ご覧の通り、ぼんさんは弱々になってしまった為、暫くお休みします。」
暗い雰囲気を払うようにドズルがケタケタと話す。
「歳も歳だし、良く頑張ってたよ本当に!」
「……ん」
ドズルがぼんじゅうるを覗き込みながら微笑む。
「大丈夫!!俺たちがついてる!」
ね?みんな!とメンバーを見て嬉しそうに話すドズル。それに釣られるように顔をあげると、
嬉しそうに、少し寂しそうに笑う皆がいた。
「僕たち、ぼんさんとまだまだ一緒にいたい!」
おらふくんが泣きながら笑う。
「俺らに寄りかかってください」
MENがニカッと笑いどんどんと自分の胸を叩いた。
「沢山、沢山、みんなで分けてみんなで乗り越えましょ!」
決して1人ではないとネコおじが声をあげる。
「……貴方の場所は絶対俺が守っておきます」
いつかの言い合いの時、貴方は帰る場所がないと嘆いた、そんな事ないって証明する、俺が守る!とおんりーが強い意志で宣言する。
「……ね?ぼんさん、皆、貴方を想ってるでしょ?」
涙を貯めた瞳で、震える声で、ドズルは相方に呟いた。
「うん、……うん!本当に、ありがとう!!」
ぼんじゅうるは両手で顔を覆い涙を落とした。
「ぼんさんは暫く活動をお休みします」
ドズルのその声と共にメンバーのキャラクターが頭を下げる。
コメントがなんで?!どうして!?とすごい速さで流れ悲しみが包む。
「えーと、」
何から言おうと迷うと両脇からメンバーが手を伸ばし肩を手を握ってくれた。
それをキャラクター達がリアルで表現する。
ーみんなぼんさんを支えてる
ー皆で考えて決めたんだね
ー俺たちは待つのみだ
ーいつまでも待ってる
ー何か力になりたい!のにスパチャ送れないよ〜!?
「えーと、まず、スパチャは送れないようにしてます、これはご報告配信ですので」
ドズルがすみません、お気持ちだけ受け取りますありがとうと続ける。
「……皆さん、本当にありがとうございます、僕、…いや、俺は少し心が疲れてしまい、、少しの間自分と見つめ合い、考える時間が欲しいんです」
戻ってくるのがいつになるのか分からない、でも必ず戻ります。 本当にすみませんと頭を下げる。
ーえ、なにそれ、どういう事?
ー↑↑↑いや、わかってやれよ、それでもファンかよ
ー歳も歳だからね、休むの大事
ー病気?大丈夫?ハッキリしてよ
ー本人が決めた事を私達が否定するのはおかしいよ!
ー↑いや、普通に気になるやろ、否定してない
ー否定するとかしないとかじゃねぇーよ
ー所詮ぼんじゅうるも、こんなもんか
コメント欄がバラバラと荒れ始める。ソレを握りこぶしを震わせ睨むドズルとメンバー達。
(お前らがっ!そうやって!!)
と黒い感情がふつふつと溢れつい声に出しそうになった時、
「……俺は人間です、」
ぼんじゅうるは前を見てはっきりと話し出した。
「あなた達と同じ人間なんです、心があります、 」
ー……ぼんさん、声震えてる…
ー皆、落ち着いてよ
ー話を聞こう
ー喧嘩しないで
「嫌な事を言われたら傷つくし、嬉しい事を言われたら喜びます、」
ーそういえば、最近アンチコメ凄かったね
ーあれ、関係あるのか、やっぱり
ー俺は黙って通報してた
ーわざわざコメントに書かなくていいこと書いてたよねアイツら
ーどーせキッズやろ?
ー↑↑↑決めつけよくない、そういうとこやで?
ーぼんさん!負けないで!
「……それがね、少しずつ溜まるようになっちゃったのよ」
胸の辺りに手を添えて俯く。
「みんなに、いいパフォーマンスで楽しい動画を提供したい、だからこの身体と心が治るまで、、待ってて欲しい」
ー待つよ
ー当たり前でしょ
ー私たちのことはいいから、自分を大事にして
ーぼんさんの幸せが俺たちの幸せだぜ?
ー身体、え?大丈夫なの??!
「少しね、身体もガタが来てたみたいで、、大丈夫治るよ!」
傷ついたその腕をギリっと掴むと隣のドズルがやんわり上から握り温もりを分け与えた。その行動もしっかりリスナーに届いていて、
ードズぼんてぇてぇ
ー絆やな
ーそこを、抑えてるって事は、まさかね?
ー↑↑↑あんまり詮索するな
ー涙出てきた、、、
ーわかる、泣くよね
ーもう、幸せになっていいんだよぼんさん
【待ってる、幸せになっていい、応援してる】
ぼんじゅうるは深く深く頭を下げて肩を震わせた、グスっと泣く声がマイクに拾われリスナーに届くと、やめて泣かないで、ぼんさんが泣いてる!?と暫く涙のコメントで溢れていた。
ぼんじゅうるがメンバーを見ると皆微笑みながら大丈夫と呟く。
「あ、りがと、皆、本当にごめんっ」
ぼんじゅうるは顔を覆い涙を流す、その背中をポンポンと叩きながらドズルが話を続けた。
「みんな、気づいてました?この人すっげえビビりで小心者なんですよ?」
ーえw
ードズルさん?w
ーやっぱりそうだよねw
ーいきなり何何w
「みんなに怒られるとか、嫌われる、とか誰よりも気にしてるんです!その癖カッコつけたがりだからまー困る困る」
ーふふふw
ー確かにねw
ーそういう人程真面目だから自分責めちゃうよね?
「そうそう、変なとここだわり強いから」
根に持つタイプだよねとネコおじが画面外から声を入れる。
ーあれ?ネコおじも居た!
ーてか、涙声じゃね?
ーネコおじ泣いてるw
「ネコおじ泣いてるよー?」
おんりーがニヤニヤと笑うと「やめぇ!」とネコおじが叫ぶ。
「おらふくんも、泣いてます」
「ちょっ!MEN、やめてよー!」
それに続くように2人が話すと、コメント欄も場の雰囲気もふわりといつもの明るさに戻る。
ワイワイと日常の報告も混ぜながら、
ドズルが「と、言うことで、ぼんじゅうるさんをみんなで見送りましょー!」と声を震わせながら叫んだ。
【必ず帰ってこいよ!ぼんじゅうるー!!】
とメンバーとリスナーが一緒に叫ぶ、キャラクター達が手を振りぼんじゅうるに群がる、ベシベシと背中や頭を叩く姿がリスナーに届く。
「あだ、あだっだ、やめぇい!!」
わっ!と身体を起こしリスナーに手を振り配信が終了した、、、
それぞれの携帯からはDMの通知が大量に流れてくる、恐らく配信仲間達から何事?!と心配のメッセージだろう、
鳴り止まない通知の音に 皆はぶはっと笑い声を上げて暫くその場から動けなかった。
無敵でありたかった、何をしても自分でどうにかできて完璧で、怖いもの知らずな、そんな自分でいたかった。
誰に何を言われてもへこまず、折れず、気にしない、そんな【ぼんじゅうる】で居たかった。
でも、そんなの成り立たなくて、、、
いや、成り立たなくていいんだ、俺は、【ぼんじゅうる】は泥臭くて完璧じゃなくて、人間くさい俺であっていい。
皆で支え合いそれぞれの人間なんだ。
誰かひとりでも欠けてはいけない…
そう思った瞬間、
ボロボロだったパズルのピースがカチャリとハマり、
綺麗な絵が出来上がった、
そんな気がした。
THEend……?
コメント
2件
ぼんさんの幸せが尊重される世界でよかった(語彙力マイゴー) 2,3時間で1000♡すごいです!おめでとうございます!
本当に素敵なお話ありがとうございます。感動しました!