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おと
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#Mrs. GREEN APPLE🍏
こんぶ@ミセス推し
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kurara
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スタッフさんが扉にぐっと力を籠めるのが分かった。扉を挟んで、和やかな笑い声が聞こえてくる。
『――さて、皆様。楽しい時間はあっという間に過ぎ、このご披露宴もいよいよ結びの時間を迎えようとしております。ここで、お二人にとって何よりもかけがえのないご友人から、特別なプレゼントがございます。これまで共に歩んできた確かな絆と、これからの未来への祝福を、お二人にとって大切なゲスト様とともに、届けていただきます。それでは皆様、どうぞ大きな拍手でお迎えください!』
その声を合図に、扉の中でドッと温かな拍手が巻き起こった。
「…よし、行こう。」
俺が声をかけると、スズは少し強張っていた表情を柔らかく緩め、深く息を吐いて頷いた。
「うん。…最高の音、届けようね」
重厚な大扉が、スタッフの手によって静かに開け放たれる 。その瞬間、眩しい光が一気に押し寄せ、会場内の視線が一斉に俺たちへと降り注いだ。
高砂の席で入場を待っていた元貴と涼ちゃんが、弾かれたように目を見開いて立ち上がる。元貴は息を飲み、目の前の現実を疑うかのように言葉を失っていた。涼ちゃんに至っては、一瞬で目元を赤くしてポロポロと大きな涙を頬へ伝わせていく。
「…っ、スズ…?」
静寂を裂いた涼ちゃんの震える声。胸の奥の痛みを必死に押し殺すように手を当てながらも、スズは今までで一番眩しい、穏やかな笑顔を二人へ向けていた。
せまる時間のせいか、少しだけ震える手で、マイクを握りしめた。
「りょうか、もとき…結婚おめでとう。驚かせてごめんね。信じらんないかもしれないけど、本物です。…今日だけは、二人を祝いに帰ってきました。」
少しの困惑と、それを上回る大きな驚きと温かさに包まれる会場の中、俺はスズの身体をそっと支えるようにして、涼ちゃんと元貴と向かい合うように設置されたグランドピアノの前へと歩みを進めた。
アコースティックギターを肩にかけ、マイクに向かって軽く息を吹き込む。
「元貴、涼ちゃん。…サプライズ成功かな。今日は俺とスズから一曲、二人へ祝いの曲を贈ります。聞いてください。」
元貴は込み上げてくるものを必死に耐えるように唇を噛み締め、力強く、何度も頷いてくれた。
スズが静かにグランドピアノの椅子に腰を下ろし、その白く細い指先をそっと鍵盤の上へと滑らせる。一瞬だけ交わし合う視線。二人だけの呼吸を静かに合わせた。
ポロン、とスズの指先から澄んだ第一音が弾き出された。その音色に寄り添い、優しく重ねるように俺もギターの弦を爪弾いた。
ボーカルも、ベースも、ドラムもない。ピアノとギターの音だけで紡がれる、素朴で温かな旋律。二人で一夜漬けで作った曲だから、元貴が生み出す世界に比べたら、あまりにも粗削りかもしれない。
けれど、ここには俺たちのすべてが詰まっている。
すれ違い、傷つき、遠回りをして…それでも今日という奇跡のような幸せに辿り着いた元貴と涼ちゃんへの祝福。そして、どんな言葉でも語りつくせない感謝と祈り。
スズのピアノは、優しく、けれどどこか力強かった。涼ちゃんと似ているようで、やっぱりちょっと違ってて。 身体を蝕む苦しさなど感じさせないようなまっすぐな音が、会場全体を包み込んでいく。
涼ちゃんはハンカチで顔を覆い、子供のように声を殺して泣きじゃくっていた。元貴もまた、赤く濡れた目元を拭いながら、一音たりとも聞き漏らすまいと俺たちの音を見つめている。
最後のコードが静かに、舞い上がるように響き渡り、やさしい余韻を残して消えていく。 一瞬の静寂の後、まるで堰を切ったかのような雷鳴のごとき拍手が会場全体を激しく揺らした。
俺たちが深く深く頭を下げると、元貴と涼ちゃんがたまらずといった様子で駆け寄ってきた。涼ちゃんは真っ先にスズに抱きつき、その肩を震わせる。
「スズ…っ、スズ…! 会いたかった…ずっと、会いたかったよ…っ」
「りょうか、おめでとう…。泣かないで、せっかくの綺麗な顔が台無しだよ。」
スズは溢れる愛おしさを込めて優しく涼ちゃんの背中をさすり、穏やかに微笑んだ。そして、その隣で言葉を失い立ち尽くしていた元貴へと、そっと視線を向ける。
元貴の瞳は行く場を失ったように揺れ動いており、握りしめた拳は微かに震えていた。そんな、どこか小さく見える彼の背中を、俺はぐっと押した。
「あ、…と、…スズって名前だったんだね…。」
「もときにはスズカって伝えてたよね。ごめんあの時まだアオキのことの心の整理ができなくて。おんなじ顔って言ったらちょっと違うけど、そっくりなもときにアオキが重なっちゃうから辛くなって…。だから、ほとんど一緒でも違う名前なら重ならないで済むと思って。ごめんね。」
元貴の唇が真横に固く結ばれ、その目元から一粒の大きな涙がぽろりと落ちた。そこから溢れ出る涙を止めるすべもなく、元貴は深く、深く頭を下げた。
「スズ、…ごめん、ごめんなさい…っ。僕、あの時…操られていたとはいえ、君にひどいことをして…命まで奪って…っ」
喉を詰まらせ、途切れ途切れに絞り出す元貴の懺悔。スズはゆっくりと、包み込むように首を振った。その透き通った瞳には、恨みも苦しみも、何ひとつとして浮かんでいなかった。
「もとき、顔を上げて。もときが謝る必要なんて、どこにもない。」
スズの声は、どこまでも暖かかった。
「あの時、アオキの術にかかって一番苦しかったのは元貴でしょ?俺はね、もときがりょうかを必死に守ろうとしてくれたこと、ちゃんと知ってる。だから自分を責めないで。もときが今日、こうしてりょうかの隣で幸せそうに笑ってくれていることが、俺の一番の救いなんだから。」
「…スズ…。」
「りょうかを幸せにしてね。もときなら絶対にできるって、知ってるから。」
スズの真っ直ぐな言葉に、元貴は涙を拭い、噛み締めるように力強く頷いた。
「…うん。絶対に、絶対に幸せにする。約束するよ。」
ずっと胸の奥に横たわっていたであろう元貴の重い後悔が、スズの言葉によって、少しずつ溶けていくのが分かった。
式はそのまま温かな空気に包まれながら進行し、俺たちは主役の二人を囲んでかけがえのない穏やかな時間を過ごした。スズは時折胸を抑えて辛そうな素振りを見せつつも、最後までその笑顔を絶やすことはなかった。温かな祝福と涙に包まれた披露宴が幕を閉じ、ゲストたちが余韻に浸りながら順々に会場を後にしていく。
すっかり陽が落ち、静まり返った式場の控え室。元貴と涼ちゃんは名残惜しそうに何度もスズの手を握り締め、何度も感謝と愛を伝えたあと、「ふたりで最後に話しておいで」と気遣うように俺たちを静かな中庭へと送り出してくれた。
夜空には、あの日と同じように静かな月が浮かんでいる。ひんやりとした夜風が、スズの柔らかく巻かれた髪とドレスの裾をかすかに揺らした。
「…やりきったね、ひろと。」
ベンチに並んで腰を下ろすと、スズがふっと息を吐いて呟いた。
その声はどこか遠く、ガラスのように透き通っている。隣で見つめるスズの身体は、月光に透けてしまいそうなほど淡くなっていた。
「うん。…めちゃくちゃ最高の式だった。ふたりとも、すげえ良い顔してたな。」
「本当だね。……ひろとがいてくれて、本当によかった。俺ひとりじゃ、きっとここまで来られなかったよ。」
スズは小さく笑うと、そっと俺の手に自分の手を重ねた。その温もりが、少しずつ、けれど途絶えることなく確実に弱くなっているのが伝わり、俺の胸は引きちぎられるように痛んだ。
「…もう、時間なんだね…。」
「うん。…ちょっと寂しいけどね。でも、悔いはないよ。見たかった景色、全部見られたから。」
「…行っちゃうの、嫌だって言ってもいい?」
「…笑ってお別れできなくなっちゃう。」
「それでもいい。」
もう、こらえきれなかった。抱えきれないほどの愛おしさと寂しさが瞳からあふれ出し、地面に落ちていく。
「スズ、…嫌だ行かないで…。もっと話したいことがあったのに、もっと…っ」
そう言うと微笑むスズの目元から、ぽろりと一筋の涙がこぼれ落ちた。演奏前には絶対に泣かないと決めていた彼女が、最後の最後に流した素直な涙。
俺は堪えきれなくなって、その小さな身体を強く、けれど壊れ物を扱うように優しく抱きしめた。
「…ひろと…ありがとう。あの日、消えてしまった俺のこと、ずっと覚えていてくれて。後悔してくれて…泣いてくれて、ありがとう。」
背中に回されたスズの手が、優しく俺の頭を撫でる。
「ひろとと出会えて…一緒に音楽を演奏できて、本当に幸せだったよ。りょうかのことを想うひろとも、俺のために泣いてくれるひろとも…全部、優しくて大好きだった。」
息を呑んだ。なんだ、スズはとっくに気づいていたんだ。俺が涼ちゃんに惹かれてるってこと。それなのに、ずっとずっと、何も言わずに受け止めていてくれたのだ。
「…スズ、俺も…俺も、大好き。涼ちゃんに重ねてたんじゃない。目の前にいる、スズが…っ」
溢れ出る涙で視界が歪む。言葉すらうまく結べない俺の頬に、スズの手がそっと触れた。
「嬉しいなあ…。ひろと、俺、これから記憶を無くして、人間として新しく生まれ変わるんだ。アオキと一緒に。」
スズの声が段々と、吹き抜ける風の音に溶け込むように小さくなっていく。
「だから、もし…もしもいつか、街角やどこかで、理由もなく心が惹かれる誰かとすれ違ったら…その時は、また笑いかけてね。」
「…うん、うん…!絶対に見つける。絶対、見つけるから…っ!」
「うん。約束ね。…バイバイ、ひろと。ずっと、幸せでいてね。」
その言葉を最後に、抱きしめていた腕の中の重みが、ふっと消え去った。
温かな光の粒子が夜空へと舞い上がり、月明かりの中に溶けていく。
手の中に残ったのは、かすかな花の香りと、胸の奥で永遠に鳴り続ける美しい旋律だけだった。
俺は涙を拭い、まっすぐに夜空を見上げた。
「…また、ね。スズ。」
奇跡の一日は終わった。けれど、もう後悔も虚しさもない。スズがくれたこの温かさを胸に、俺はこれからも元貴と涼ちゃんと共に、新しい音を鳴らし続けていく。
いつかまた、どこかで彼女と巡り逢えるその日まで。
コメント
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こちらの話ではお久しぶりです… 長らくお待たせしてしまい申し訳ないです😭 一昨日くらい自分で一気にこちらの話を読み返しまして、そしたら急に書き進めたくなって、やっと完成致しました✨ しかしながら、番外、と称してまだもう一話続く予定です👉👈 長くなりますが、もう少しだけお付き合いください🙇
いやもう…泣いたわ。スズが最後に流したあの一滴の涙、めっちゃ刺さった。「笑ってお別れできなくなっちゃう」って言葉にグッと来たし、ひろとが「それでもいい」って言い返すところがもう…。確かに別れは辛いけど、あの温かい記憶がこれからもずっと響き続けるんだろうなって思うと、胸が熱くなったよ。最高の番外編だった🔥