バリバリバリ……ッ!!!
黒い触手をたなびかせながら、主は静かに一歩前へ出た。
その手には一本の絵筆。
トアが怪訝そうに眉をひそめる。
「……おいおい、ここでお絵描きの時間かよ?」
「そうだ」
主は淡々と答え、甲板にしゃがみ込む。
そして、トアの姿を正確に描き始めた。
シャッ、シャッ、シャッ……
まるで見えているものをそのまま写し取るように、異様な速さで筆を走らせる。
血のような赤黒いインクが甲板に染み込み、瞬く間にトアの写し身が浮かび上がった。
「……へぇ、なかなか上手いじゃねぇか」
トアはニヤリと笑う。
しかし、次の瞬間――
ボッ……!!
主は無言で、その絵に火を放った。
「っ!? なッ……」
トアの身体が一瞬、ビクンッと震える。
まるで自分が燃えているかのような錯覚。
否――錯覚ではない。
トアの腕が実際に焦げた。
「っがあああああッ!?!?」
トアが激しくのたうち回る。
その右腕の皮膚が炭のように剥がれ落ちる。
「……これが、俺の新たな拡張能力」
主が静かに呟く。
「『藁絵』」
「この筆で描いたものは、俺の意志で“現実”と連動する」
「つまり――お前は、俺が描いた瞬間から、俺の作品というわけだ」
ゴォオオオオオッ!!!!
甲板の炎が更に燃え上がる。
トアの影がゆらぎ、その姿が歪んでいく。
「おいおいおいおい!?!?ちょっと待てよ!!!」
トアは必死に暴れるが、その腕はすでに焦げ落ち、指が一本ずつ消滅していく。
「ハッ、いいねぇ、主!!」
葵が剣を肩に担ぎながら笑う。
「で、次はどんな絵を描く気だ?」
主は無表情のまま、再び筆を構えた。
「そうだな……」
「“トアの死”とでも、描いてみようか?」
トアの瞳が、恐怖に染まる――!!
ギィ……ギィ……ギィ……
木の床を引っ掻くような音が響く。
燃え盛る甲板の上、トアは膝をつき、崩れ落ちるように自らの腕を見つめた。
――焦げ、ただの炭になり、ついには風に散っていく。
「……は、ははっ……」
トアはひきつった笑みを浮かべながら主を見た。
「面白ぇ……こんな死に方、想像もしてなかったぜ……」
主は無言のまま筆を走らせる。
今度は、トアの全身を描いた。
トアはそれを見て、自嘲するように嗤った。
「なあ……最後に聞いていいか……?」
「……何だ」
「この“藁絵”って能力……もし、お前が自分の死を描いたらどうなる?」
「試すつもりはないな」
主は淡々と答え、筆を止めた。
そして――
その絵に、ゆっくりと火をつける。
「っぐ……があああああああ!!!!」
トアの体が、現実とシンクロしながら燃え上がる。
皮膚がはがれ、肉が裂け、燃えながら消えていく。
それでもトアは笑った。
「はは……地球を支配するつもりが、俺自身が絵の一部になるとはな……!」
「なあ主……俺のことも“傑作”だったって、言ってくれよ?」
主は炎の中で燃え尽きていくトアを見下ろし――
「……駄作だ」
冷たく言い放った。
ボォオオオオオッ!!!!
トアの身体は、灰となって風に消えた。
沈黙。
その場に残ったのは、黒く焦げた甲板と――
葵の、乾いた笑いだけだった。
「おいおい……芸術ってのはもっとこう、ロマンチックなもんじゃないのかよ?」
主は筆を軽く払って、静かに呟いた。
「芸術には犠牲がつきものだ。」
夜の海に、ただ煙が立ち昇る。
コメント
3件
今回も神ってましたぁぁぁ!!! おおおぉ!!何かトアちの死より主たんの能力が凄すぎて頭入ってこん((( トアち、、、確かにお前は駄作である(製作者にも見捨てられててなんか可哀想() いや全然そんな事ないんだけどね???そういうつもりで言ったわけじゃ、、ね???(?) 次回もめッッッッさ楽しみいいいいいいいぃ!!!!!!
おぉぉすげぇえええ!!!✨主新しい能力手に入れた!!✨すんごいかっこいい…!!!続き楽しみです!!!✨
フゥン…イイジャンw? じゃあこっちも御相手させてやろうかの。(キャラ?)