テラーノベル
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煙草が嫌いだった。
酒もたまに嗜む程度だった。
俺はいつから…お前に染まってたんやろうな。
桃 ただいま。
青 おかえり。
お風呂溜まってるで。
ご飯も作ったし…
桃 ご飯は食べてきたからいらない。
風呂入ってくるから…ベッドで待ってて。
青 …おん
きっとお前は気づいてないんやろうな。
首元についた俺の知らない独占欲の赤い跡
煙草に混じる甘い女の香水の匂い
俺が全部気づいていることさえも。
桃 今日も可愛いね 青
そう言って俺の口に噛み付くお前
それは甘酸っぱい恋の味なんかじゃなくて。
口に広がるのは煙草の香りだけ。
青 あぁ”ッ♡
イくッ”~♡♡
桃 くッ”~~~♡
桃 もう一回…いいよねッ?
その瞳に何人映してきたのだろう。
どれだけのやつがこの身体を見たのだろう。
青 ええで。
意識失ってお前の匂いと気持ちいいことしか理解できなくなるくらい
俺に愛注いでや♡
青 んッ…
目が覚めるとお互いに服も着ないまま眠っていた
桃の寝顔はどうにも綺麗で
つけたままのピアスが日にあたって輝いていて
青 ふふっ…かわええなぁ
ふわふわとしたピンク髪をそっと撫でる
青 やっぱり…幸せなんよな…
体を起こすと 柔らかい日差しとは対比するように鋭い痛みが全身を巡る
青 朝ごはん作らな…
仕方なく痛い身体にムチを打ってキッチンへと向かう
青 久しぶりに帰ってきてくれたんやから…美味しいご飯作ってあげなな…
桃 おはよ。
青 おはよう。
起きたん?思ったより早かったな。
桃 なんかいい匂いしたから…
青 今日は和食にしてみたんやけど…どうかな
桃 美味しそう。
いつもありがとうね。
そう言うと桃は昨日とは違う優しい口づけをする
ほのかに煙草の香りはするが、それさえも心地良かった。
桃 ごちそうさま。
今日は帰り遅くなるから。
飲み会もあるしご飯いらない。
青 分かった。
飲み会楽しんできてや。
桃 ありがとう。
行ってきます。
青 いってらっしゃい。
今日は優しかったな。
あぁでも、
今日は飲み会か。
憂鬱やな。
桃 …。
青 おかえりなさい。
お風呂っ…
桃 うるっせぇな…今イライラしてんの。
見てわかんない?
こんなに一緒にいるのに俺のこと何も知らねぇんだな。
飯は?
青 今日はいらないって…
桃 気分変わったの。
っていうかそう言うの察せれないかなぁ。
無理か。
お前無能で低能だもんな。
その言葉とともに今朝の幸せな痛みとは違う重たい痛みが腹に深く突き刺さる。
青 うッ”…
桃 イライラしてるからさ。
無能でもストレス発散道具くらいにはなれるよな
どれほど時間が経ったかも分からず
ただひたすらにこいつからの痛みを受ける。
これを耐えるのだってもう何度目かわからない
何十回なのか何百回なのか。
もう慣れてしまった俺はこれさえも日常の断片で。
おかしなことなんて一つもない。
いつも通りの日。
この時にはもう、俺はおかしくなっていたのかもしれない。
青 よしっ…ほな行ってきます。
桃 どこ行くの。
青 友達とカフェ行くんよ。
桃 友達って誰。
青 黒。
前に1回だけ会ったことあるやろ。
桃 あぁ。
あの人ね。恋人もいるし。
まぁいいか。いってらっしゃい。
黒 久しぶりやなぁ。
見ないうちに随分と痩せてないか?
青 そんなことないで。
黒 それならええけど…。
黒 その腕のあざ…どうしたん?
青 この前桃の飲み会あったから
黒 どういう意味や。
青 だから…飲み会あったから不機嫌だったんよね。
黒 それがあざと何の関係があるん?
青 不機嫌だと殴ってくるやろ ?そん時に
黒 は?それ絶対おかしいで
青 そうなん?
俺は友人と話して初めてあいつの異常さに気づいた。
普通は不機嫌でも殴らないこと。
浮気なんてもってのほかであること。
全て日常的だった俺には衝撃でしかなかった。
黒 なぁ。
悪いことは言わん。
別れたほうがええよ。
その言葉が頭から離れなかった。
桃 おかえり。
青 ただいま。
…なぁ。
桃 何?
青 俺がもし…別れたいって言ったらどうする?
桃 どうって言われてもなぁ…普通に別れるけど。
青 …
その言葉が俺の胸を突き刺す。
俺が一番でなかったことが分かってしまったから。
俺なんてあいつの玩具の一つに過ぎなかったから。
その事実にふつふつと怒りが湧く。
今までの俺の努力はなんだったん。
お前を一番に考えた俺が馬鹿みたいやん。
なぁ。
青 じゃあええか。
別れよう。
桃 ん。
青 ここ俺の家やから。
お前が出てってな。
浮気相手の家にでも泊めてもらえばええやろ。
桃 気づいてたんだ。
別に隠す気も無かったくせに。
あぁ。
どうしてこんなやつに時間を割いてたんやろ。
もう全ての言葉に行動にイライラする。
俺は何百回もお前を許したのに。
俺の全てをお前だけに尽くしたのに。
桃 必要なものだけ持っていくから。
要らなかったら捨てといて。
使いたかったら使ってくれていいよー。
そんな軽い言葉を残してあいつは出ていった。
青 …。
あれから3日が経った。
俺はまだ1歩も外に出れていない。
せめて月の光に当たろうとベランダに出る。
あぁ。
煙草が嫌いな俺を気遣ってベランダで吸ってたっけ。
ふっと吹く風が冷たくて心地良いのに。
ほんのり香る煙草の香りがない事実がまた俺を突き刺す。
青 煙草…。
ふと机を見るとそこには忘れられた煙草が置いてあった。
無意識だった。
俺は煙草に火をつけていた。
吸ってみると盛大にむせてしまったが、身体も心も桃の香りに包まれた。
目が熱くなる。
あぁ。
青 ほんまに…もう…いないんやなぁ。
頬を伝う涙は煙草の火を消してしまいそうだった。
作るのめんどいしコンビニでご飯買おう。
あ。
お酒冷蔵庫になかったな。
買っとかんと桃がまた怒ってまうなぁ。
これ桃が好きなやつ。
次いる帰ってくるか分からんけど買っとくか。
煙草も…買い足しとこう。
よし。
これでお願いします。
うちに帰ってから家にはもう桃がいないことを思い出す。
飲まない酒と吸わない煙草。
好みとは全く違う食事のはいった袋を見てため息をこぼす。
買ってもうたし。
飲むか。
それから俺は毎日酒に溺れて。
家は桃の香りが充満していて。
夜の街に出ては男を捕まえて身体の関係だってもってみた。
でも全部何かが足りなくて。
いつも浮かぶのはあいつの顔だけで。
応答なしの履歴だけが映る画面を開きながら今日もまた俺だけがあいつに溺れる。
コメント
3件
いつも読ませていただいております🙌✨️ 桃さんのクズ化大好物ですので、書いて下さり嬉しい限りです😭🫶
いつだったら青は引き返せたのか。 そもそも引き返すことなんてできなかったのか。 お気軽にコメントお待ちしております。