テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
彼が消えてから時は3年
みんな覚えていないかのようにいつも通りの日々を過ごしている
何食わぬ顔で道を歩き
なんでもないよと笑う
俺らがこんなに悲しんでても
物事は進む
その現実が最初は辛かったが
今になってようやく受け入れられてきた
彼が生まれ育った町に久々に来て見た
昔イベントできた時以来
ずっと来れていなかった
彼のお母さんも喜んでくれて
彼の実家の
部屋まで案内してくれた
そこには彼の日記が机の上に置いてあった
彼の部屋を見渡すと
少し散らかった服と布団
台本や「みるくノート」とかいうノート
真面目な彼を写し出した部屋だった
時はそのままとまっているかのように
まるで彼を待ち続けているかのように
俺は目の前にある机に置いてある日記を
そっと開いた
見た感じ1ページしか書かれていなかった
そこにはたった一言だけ書かれていた
震える手で書いたのだろう
少し荒れている字で
「いつもの場所で集合な」
そう書かれていた
いつもの場所それは一つしかなかった
俺らが初めて出会った日
あの場所
俺は居ても立っても居られなくなって
階段を駆け下りあの場所へ急いだ
仁人のお母さんは
優しく微笑むだけだった
もうわかってたなら先に言えよ…!
なんて思いながら久々に思い切り走った
少し走って見覚えのある木が見えた
そこには
誰もいなかった
わかっていた事実が俺を襲う
当たり前だよもういないんだから、会えないんだから
俺は足取りが重くなったが
それでも約束を守りたくて必死に足を動かした
ようやく辿り着いた桜の木下
俺らと同じくらいに植えられて
俺らと同い年
それでも俺よりデカく育って
立派になって
今じゃ観光スポットになっている
散りばめられた桜の花びら
俺は木下に座る
昔よく此処で彼と話していた
たわいもない話
しょうもない話
全部全部楽しかった
17年前ここで出会った
でも出会った頃の話なんて
正直覚えていない
けどそれくらいがちょうどいい
なんて思っていた
今じゃ日記にしておけばよかったって
後悔してるのに
唯一覚えているのは
俺がなんかで落ち込んでこの木下に来て
隣に仁人がさっと座って
…なんかの花を渡してくれたんだよな
確かその花を受け取って
「俺仁人、お前は?」
それが初めての仁人との会話だった
でも
「ねぇ」
そう言って話しかけてくれる隣のやつは
もういない
俺に笑いかけてくれるあの優しい彼は
すっぽり空いた隣
座ってくれる相手も誰もいない
「はぁ…」
綺麗な目の前の川をフェンス越しに見つめていると
後ろから
足音がしてきた
今はお昼時
ここらは子供達の遊び場にもなっているそう
俺は変わらず
川を見つめる
すると隣に1人の子供が座ってきた
見ず知らずの初対面の子…?
だけど
謎の安心感があった
隣をふとみると
まるであいつみたいなそんな感じがした
横顔しかちらっと見てないけど
なんとなくそんな気がした
お互い何も話さない
けどそれがいいのかもしれない
埋まった隣の席
その事実が俺の心を満たしていく
「ねぇ」
あいつみたいに話しかけてくる
初対面の大人に向かってよく
話しかけられるな、なんてその時は思いもしていなかった
だって俺は今隣にいるやつを
子供じゃなくて
吉田仁人として見ていたから、いや
見ていたかったから
「ん?」
「約束ちゃんと守ったんだな」
「…うん」
その言葉に隣を見る
その先にはこちらを見つめ微笑む仁人がいた
さっきまでいた子供じゃなくて
俺が知ってる仁人が微笑んでいた
優しく
俺は泣きそうになるが
その気持ちをグッと堪えて
多分この姿を最後に
仁人を見れなくなる
そう感じとった俺は
優しく微笑む人とに
少し目尻を熱くしながらも
笑ってみせた
仁人もふっと笑った
これが幻覚でもまた見れたことが嬉しい
仁人の笑顔で満たされていく感覚
懐かしいな、と思う
そして俺はまた川を見る
これ以上仁人のことを見つめていたら
此処から先へ進めなくなりそうだから
手を後ろに置いて足を伸ばして
ただただ眩しい太陽の反射で光って揺れる
川の流れを見つめる
そしてもう一度隣を見る
でももうそこに仁人はいなかった
最初からいなかったみたいに
…あの子供は
昔の仁人にそっくりだった
大きい目とあの黒髪
仁人も全然変わってねーな
相変わらず目が少し泳いでた
けど
なんかそれも
仁人って感じがして
好きだって自覚する
俺は大きく息を吸った
約束守れたんだな俺…
隣を見ると人の体温のかわりに
さっきまでなかった綺麗な花が置いてあった
白い紫陽花。
なんだか…見覚えがある
俺はそれを優しく手に取って
「またな」
立ち上がって懐かしの場所を思い出しながら帰った
帰り道隣で電車が走る
フェンス越し
通ったのは一瞬
だけど
なんだか…胸騒ぎがした
この帰り道もよく一緒に帰って
ラムネ瓶買って飲んで
ビー玉取れるかななんて
そんな小学生みたいな会話をしていた
久々に俺は覚えのある駄菓子屋へ行った
そこには
あの時と変わらない
ばあちゃんがいた
「あれぇあんたはやとかい?久しいねぇ」
俺を歓迎してくれた
俺は手慣れた手つきでラムネ瓶を手に取り
お会計しようとすると
「いいんだよ。ほれもってけ、おまけもつけとくわ。」
ラムネ瓶と俺がよく買っていた
チョコバーをくれた
あの頃と変わってないおばあちゃん
「その花なんだい?」
「あぁ、」
「…仁人からの贈りもんかい?」
「うん」
「そうかい」
そのあとしばらくおばあちゃんと話した
仕事の話、おばあちゃんの娘さんの話
仁人の話、昔の話
できる話は全て話した
そろそろ日が暮れそうな頃
おばあちゃんは嬉しそうに笑って
「また来てな」
「うん。」
「ずっと待ってっからよ」
おばあちゃんと別れて駄菓子屋を出る
おまけでくれたラムネ瓶を開けて飲む
懐かしいこの味
思い出が次々に蘇ってくる
チョコバーも変わらず美味しかった
なんでだろうな
数年前もおんなじもの買ってここで歩きながら食ってたのに
なんでこんなにも涙が出るんだろう。
止まることを知らない涙
涙を拭いて
俺は空を見上げる。
夏の太陽が笑っている
もう夕方になるのにな
あーこんな会話もしたな
なんだか周りを見渡せば全部が仁人との
思い出で溢れかえってて
仁人も多く関わり合ってたってことを
再度自覚させられる
仁人はよく言ってた
「俺が先にいなくなった時は空見て泣け、俺が励ましに行くから」
「絶対こねーだろ笑」
あの時少し切なそうに笑っていたのに気づけなかった
今思い返せば簡単にわかることなのに
それで友達名乗ってたのか…
本当に先に行くとは思わなかった
もしかしたらあの時から
わかってたのかな
そう思うまた涙が出てくる
この白い紫陽花も
仁人からの最初で最後の贈り物
俺の持ってるものも思い出も
全部にいつも笑ってる仁人がいた
仁人が関わってた
仁人がくれたあの白い紫陽花も
奢ってくれたラムネ瓶も
編んでくれたミサンガも
今でも大事に取ってある
昔からなんか捨てれなくてと言うか
これからこれが大事になっていく気がして
大事にしてきた
その判断は正しかった。
もうあの笑顔を見れないなんて
そんなことを思っていた
けど今日久々に顔合わせられたから、
後悔はない
俺は上を向いたまま
仁人に届けという想いだけで
空を見て声を上げる
本当に来てくれるかはわかんないけど
仁人は嘘つくやつじゃないって
知ってるから
「なぁ、俺」
もう少しだけ生きてみようと思う 。
白い紫陽花の花言葉 : 一途な愛
コメント
3件
え、え、え、 最後の花言葉めちゃエモすぎです!両片思いとかかな?!花言葉って聞くときらめけ吉田が出てきてしまったw
えっ…最後の白い紫陽花の花言葉で全部持ってかれた😭💦 日記に一言だけ書いてあった「いつもの場所で集合な」で状況察した瞬間から涙腺崩壊しそうになったんだけど…! それでも最後にまた一瞬だけ会えて、花置いてってくれるの、仁人の優しさがにじみ出てて泣ける…🥺 「もう少しだけ生きてみようと思う」の一文、すごく軽い口調なのにめっちゃ重みあるよね…仁人がくれた最初で最後の贈り物、ちゃんと宝物になってて感動した🌸 素敵な作品をありがとうございます!!