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3.冒険
「母さん、聞いて欲しい。昨日言えなかったこと、謝るのと一緒に。」
次の日の朝、まだ太陽ものぼらない時間。
俺と母は向き合って座っていた。
いつも穏やかな母も静かに、そして真剣だ。
「凛を、見たんだ。たしかに凛がいた、俺の手を引っ張って山から追い出された。」
「…そう、その山に1日ずっと居たのね。」
「…それが、俺はあの山に30分もいなかった…と思う。それが間違っていたとして丸1日なんか絶対に居なかったと断言できるよ。」
俺の言葉に母は動揺を隠せない。
「あの山に何かあると言うの…?」
「多分…母さん、俺は凛を探したい。止めないでほしんだ。それと、あの山には入らないで。」
俺の身勝手で謎に包まれた発言。
母さんももちろん素直に頷けない。
「よっちゃん、無理はしないで。お願いよ。」
「うん、約束するよ。必ず戻ってくる。凛と話が付けたら、3人で家に帰ろう。」
母さんは目の縁に涙を溜めていた。
小刻みに震えて、でも微笑んでいた。
「強くなったのね、よっちゃん。必ずよ、必ず戻ってきて一緒に帰ろう。」
「…!」
俺は大きく頷いた。
そして机の上の母さんの手を強く握った。
(俺が凛を探すことは、周囲の人を泣かせてしまう。でも、この光を手放すことはできない。)
やっと太陽が見え始めた中、道路の脇を歩く俺に近づいた影があった。
「潔。早いね、朝。こんな時間になにしてんの」
振り向くとそこには蜂楽がいた。
蜂楽とは入学当初から仲が良かった。
放課後によく遊んでいたのも蜂楽だ。
サッカーが好きで、自由奔放。
俺が引越しで電車に乗り込む時も1番泣いてくれていた。
「散歩。蜂楽こそ、何し
「部屋から潔が見えたから急いで着替えてきた。ねぇ、潔。昨日何があったの?」
蜂楽がここまで走ったのはやっぱりその事だ。
「…え」
俺はありのまま全てを蜂楽に話した。
少しだけ驚くもすぐに笑い出す。
「潔は凄いよ。可能性、捨てないんだもん。ねぇ潔、俺にも手伝わせてよ。」
蜂楽の目は真っ直ぐと俺を見つめていた。
本当に巻き込んでいいのか不安になる。
俺は危険なことは巻き込まないことを条件にそれを許した。
これから2人の夏の冒険が始まる。