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磁石°🎧
58
#文ストBL
えびてんた
205
どうも、磁石です。
今回は私が大尊敬している霰石様のアイデアリレー企画に参加させていただきます。
本当に、ありがとうございます!!!!
では、どうぞ!
⚠️注意⚠️
太中
22歳、本軸
片思い
バーが賑わう時間帯。静かに流れるジャズ、酒を飲みながら会話を交わす人々。
その中、ドンッッ!!!と大きな音が部屋に響く。
何人かがその音がした方向へ振り返るが、誰も何事もなかったかのように振り返った顔を元に戻す。
先ほどの音がした方向には、1人、小柄で黒帽子を被った男が、カウンターの席に座って机に突っ伏していた。片手にはワイン、もう片手の拳で机を叩いていた。
その男の隣に腰をかける男がいた。ベージュの外套、首や腕に包帯が巻かれており、マスターに対して「いつものを」と注文した。
彼の名は太宰治。武装探偵社の社員であり、元ポートマフィアという異色の経歴を持つ男。彼には相棒と呼ばれる男がいた。その相棒は、今太宰の隣にいる。ワインを持って突っ伏している男、中原中也だ。
「やっぱり当たった、今日ここにくるって」
太宰は嬉しそうな表情をしながら頼んだ酒を一口飲む。しかし、嬉しそうな表情に比べて声は落ち着いていた。
まるで、突っ伏している中原に嬉しい気持ちを悟られぬようにするかのように。
「…なンのようだ」
いつもならクソ太宰だの、青鯖だの、散々悪口を言いまくる中原だが、そんな元気もなくぶっきらぼうに返事をする。そしてゆっくり顔を上げて太宰の方を見る。
「うわ…酷い顔、どれだけ泣いていたんだい」
「うっせ…黙れ、喋ンな」
「三つとも同じ意味なんだけど」
「ガチで死ね、揚げ足とってンじゃねぇよ」
「死ねるなら死にたいね」
会話を交わし、中原は手に持っていたワインを一気に飲み干す。勢いよく飲み干したグラスを机に置く。マスターはそれを静かに頂戴し、新たにワインを注ぐ。
中原の顔は、確かに元気そうな顔、とは到底言い難いものだった。
酷いクマ、腫れた目、そして顔色が悪い。呼吸が浅く、鼻水を啜っている。
太宰は中原の背中をさすろうと手を伸ばすが、それを感じた中原は太宰の手を振り払う。
「触ろうとすンじゃねぇ」
「嗚呼そうかい」
「…ほんと、今誰よりも理不尽にキレてるから、わかってくれ」
「わかってる」
沈黙が続く。中原のところにワインがまた置かれ、中原は一口飲んでグラスを置いた。
中原の目には涙が溜まっていた。それを乱暴に手で拭う。太宰はそれをただ見ていた。
「……フラれたんだよ、アイツに」
「嗚呼、半年付き合ってる彼女さん?」
「…そうだ、浮気されて、寝取られて……別れを切り出された」
「そりゃ酷い、中也めっちゃ可愛がってたよね、彼女さん」
「…なンでだよ、今回だけじゃねぇ、前の奴にも浮気されて、前は浪費癖が酷い奴だったし…」
「束縛やばかった人と付き合ってたこともあったね」
「…そうだったか」
再び沈黙が訪れる。段々酒を飲む頻度が減っていき、静かにかかっていたジャズが右から左へと流れていく。
中原は呼吸を整え、深いため息をつく。
「…俺が全部悪いンだよ、感情を入れすぎンだ、…だから重いって思われて、愛想尽かされて、浮気される。そンな思っちゃ駄目なのかよ、愛しちゃ駄目なのかよ……っ、何が『仕方なかった』だよ…こっちが悪いみてぇにぃっ…!!!っざけんなよ…っ…」
中原の涙が頬を伝わって机に落ちる。太宰は複雑そうな表情を浮かべ、ずっと中原を見つめていた。
やがて、太宰が口を開く。
「…君は、もう好きじゃないのかい」
鼻を啜った後、なんとか手で涙を拭い中原は口を開く。
「……わかンねぇ、だが…まぁ、好きではない。人として終わってンだろ、浮気なんて…けどよ、そんな奴とつるんでた俺も俺なンだよ、俺もクズなンだよ、それが嫌ってわけじゃねぇが…わかりきってたことだしな、だが……なンか、疲れたわ、全部…何もかも」
こうなることは、初めてではなかった。
先程の会話にもあった通り、今まで中原は何人かの女性と交際していた。
中原は全員の女性を愛していた。記念日にはデートに行き、プレゼントをよく買ったり、彼女のしたいことが自分のしたいこと。将来も見据えて付き合っていた。
しかし、全員が中原を愛しているわけではなかった。
2人の女性に浮気され、1人の女性にはお金を散財され、1人の女性に至っては束縛が激しすぎるあまり、監禁罪、暴行罪として警察沙汰になったこともあった。
また別れて、しばらくすると良い女性と出会い、また別れる。中原はとことん自分のことを愛してくれる女性を見つけ出せずにいた。
太宰にとっては面白くもあり、大変不愉快であった。
「…そりゃ疲れるさ、よくやったと思うよ」
外套のポケットの中から赤色のハンカチを差し出すが、中原はそれを受け取らず、太宰に顔を背ける。
「…褒めんじゃねぇ気色悪い」
「酷くない私慰めてるんですけど」
「手前に慰められると吐き気するわ、ぶん殴りたくなる」
「あーはいはい、そーですか。ワイン無くなってるけどおかわりいらないの?」
空になったワイングラスを指で弾く。残っている氷とガラスが振動し、カランという音が溢れた。
中原はそのワイングラスを黙って見ると、太宰の方へ差し出し、手前の奢りな。と呟いた。
太宰は一瞬微笑んだかと思われたが、すぐ顔を歪ませ、今月給料厳しいのだけれど…とブツブツ文句を言いながらマスターにもう一杯頼んだ。
溺れるようにワインを飲む中原を横目に太宰は自分のグラスに目を落とす。
太宰の心には二つの大きな感情があった。
一つ目は、中也へのちょっとした同情。いつもは煽り合う仲だけれど、流石に束縛、散財、浮気を2回も経験したとなるといじるにいじれなくなる。とある感情が芽生えていなければ全然煽るのだが、芽生えている以上それは難しかった。
二つ目は、いじれなくなっている原因にもなっている感情、私はずぅっとこれに悩まされ続けている。
それは
恋愛感情だ。
私は、ずぅっと前から中也のことが好きだ。
それは友情ではない、恋愛感情だということも認識している。
けれど、ずっと告白していない、否できない。
できるわけがない。プライドが理由でもあるけれど、そんな甘いことだったらとっくに吹っ切れて告白している。
私の気持ちがわかるだろうか、誰かには伝わるのだろうか。
この気持ちが、実らないと分かりきっているから。いつもそうだ。この女性が気になっている、いつデートに行けばいいか、プレゼント何を買おう、デート楽しかった。私の彼女じゃないのに、中也の彼女だから誰よりも知りたい。誰よりも中也のことを深く知りたい。
好きな子にはどんな態度を取るんだろう。どんな話題を振るんだろう。どんな服装でデートするんだろう。たくさん考えては、結局私にはしてくれないというのがわかりきっているから言えないんだ。
わかりきっている状態で告白したところで、今までの関係に戻れなかったら?私が今まで積み上げてきたものが全て崩れるんだとしたら?だったら言わないのが最適解だ。
人間の心理を図ろうだなんて、神でもない限りできない。わかった気になるだけ。
全部、わかってる。わかっているに決まっているだろう。
たくさん嫉妬した。目を背けたかった。何度中也の彼女を暗殺しようかと思ったかわからないくらいにはね。
だから、別れたという言葉を聞くと何故か口角が上がる。
私なら浮気しないのに、散財なんてしないのに、犯罪行為を中也にはしないのに。
こんな近くに、いるのに。
どうして私は近くにいる人を自分のそばにいてもらうことができないのだろう。
織田作の時もそうだった。どうしてみんな私を見てくれない?
いや、みてくれている。そんな冷たい性格じゃないって。私が1番わかっているのに。
じゃあこの苦しみは何?憎しみは?悲しみは?寂しさは?
愛しさは…?
この感情を抱いたことによって、沢山傷ついてきた。何度苦しんで何度諦めようかと思った。
けれど、諦めきれない。好きだから。大切だから。大好きだから。愛してるから
これを世の中では愛と呼ぶのだろうか、はたまた呪いと呼ぶのだろうか。
そんなことはどうでも良いが、私はまたチャンスが降ってきたのだ。
中也とあのクソ女が別れたんだ。今言えるチャンスではないか。
あんな女ではなく、私じゃ駄目なのかい?
「…ね、ちゅうy」
「……ん、すぅ……っぐす…っ」
寝ていた。中也は私がグルグル考え事をしている間に眠りについていた。
何度見てきたのだろう。目は酷いほど腫れている。クマも彫られたかのようにクッキリと深い。
可愛いな、相変わらず。
なんて一途で可愛らしいのだろうか、あんなに他人を思いやることなんて私には出来ない。お人好しがすぎる。どうしてこんな性格でマフィアやってるんだか…私が離れたくないから離れられないようにしただけだけど。
でも結局私から離れたから、何やっているのだろうか。中也が大事なのではないのか。
…でも、織田作の約束は破れない。きっと破ったりしたらそれこそより中也も嫌うだろうし。
ねぇ、私じゃ駄目かい?君のためなら自殺も控えるし、仕事もちゃんとする、嫌なことだって1日5回までにするさ。ねぇ、だから。だからさ。
君の恋人になっちゃ駄目かい…?中也に触れちゃいけないのかい…?
「…ねぇ起きてよ中也、私おんぶして帰りたくないのだけれど」
嘘だよ。本当はもっと頼ってほしい。確かに中也ほど力はないけれど、カッコつけさせてほしい。
「……ん”、っるっせ……手前が運べよ、クソ太宰ぃ…」
中也は私の肩に頭を乗っけて、また眠ってしまった。
本当にさぁ
なんで頭乗っけるの?警戒してないでしょ、だから私は君に対して諦めがつかないんだよ。
可愛いし、間抜けな寝顔。写真でも撮っちゃおうかな。いやそしたらあのクソみたいな元カノたちど同レベルになからそれは嫌だな、やめておこう。
でも、良かったかもしれない。今日まさかこんな形で甘えられるって思ってなかったし。
私でも予測できないから、面白いし諦めきれないんだよね。
でも、泣き顔はもう勘弁だなぁ。そろそろ言おうかな、いや…でも。
「すみません、マスター。お会計を」
「かしこまりました」
「全く…中也また太った?これ家まで運ぶの超嫌なんだけど…!!」
「ふふ」
太宰が支払い、中原をおぶって店を出た。
その夜空には繊月が2人を見守るかのように繊細で、美しく輝いていた。
以上となります。
ここまでご愛読ありがとうございました。
ではまた次回の作品でお会いしましょう。グット・バイ
コメント
3件
投稿がッ…、早いッ…、!!尊敬しますッ!! やっぱりあってたッ…、?知ってたの間違えじゃなくってッ…?、 ぁッ…、ちゅーやそんなくそどものこと愛さなくていいんだよッ?なんなら僕のこと愛してくれていいんだよッ…、?、 ぁッ…、ウスッ…、生意気言ってスイマセンッ 毎回太宰さんに相談しているのッ?!なに無自覚で好きなのッ?!ありがとうございますッ!!でも太宰さんの片思いでもおいしいッ…!!、 ↪返信へ
うわあ…太宰の視点で中也への想いが綴られてるの、すごく切なかったです。特に「私なら浮気しないのに」ってとこ、胸がぎゅっとなりました。近くにいるのに届かないもどかしさがひしひし伝わってきて…。泣き疲れて寝ちゃった中也をおぶって帰るラスト、繊月の描写も美しくて、この2人の関係性がもっと見たくなりました。素敵な作品をありがとうございます🖤