「で、あるんだろ?」
「そうですね…楽しかったと思います。」
「随分と幸せな顔だねェ。」
「どんな思い出なんですか?」
「友達とバーで悪戯をしあっただけだったけれどとても楽しかったよ。」
「貴様に友人などいたのか…」
「国木田くん!失礼な!私にだって友人の一人ぐらいいるさ!」
とても簡単な説明だけだったけれどそれだけで十分楽しかったと言う思いが伝わっていた。太宰の顔は今までにない程穏やかでありながら泣きそうだったからだ。そして漸く太宰の頬に一筋の光が伝った。
太宰が人前で泣くのは友人達の前を除いて初めてであった。太宰も困惑気味にして目元を擦っていた。そんな太宰を見て決心したように敦が太宰さんの片手を掴んだ。
「絶対に太宰さんが楽しかったと言ってくれるようなパティーにします!」
「だから泣かないで。」
「ありがとう。敦君、鏡花ちゃん。」
それに続いて他の社員達も太宰に一言言っていった。国木田は太宰がないていると言う脳の情報整理が追いついていないようで少しの間フリーズしていた。
太宰は涙でぐしゃぐしゃになった顔を更にふにゃりとさせて笑った。
彼は今を精一杯幸せに生きていた。
END…
コメント
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初めての比較的短編小説。結構自信作だから見てくれたらオイラとても喜びます。