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元貴が新しい曲のサビのアイデアを相談してきた時、心臓は一瞬跳ね上がった。
スタジオに二人きり。
もともと、一目惚れだったんだ。
2人きりなのが嬉しくて嬉しくて仕方ない。
元貴の気持ちに気づいていないわけではない。むしろ、痛いほど理解していた。
元貴が自分を見る時の、あの熱っぽい視線。
バンドに誘ってくれた時の、少し照れたような笑顔。
そして、あの「僕たちってどんな関係?」という、震えるような声。
全てが、僕への特別な想いを物語っていた。
でも、僕はそれを受け止めることができなかった。
もし違ったらどうする、
という気持ちが頭のなかでぐるぐる回る。
「家族みたいな感じ……」
そう答えた時の涼ちゃんの心は、複雑な思いで揺れていた。
もちろん、元貴のことは人として、バンドメンバーとして、大切な存在だ。
でも、それは「愛してる」と言えるほどの深い愛情だ。
だけど、元貴が望むような、甘い関係ではない。そう、自分に言い聞かせていた。
僕は、元貴の気持ちに応えられない理由がある。
それは、元貴との関係を壊したくないという強い思い。
そして、何よりも、バンドを続けていく上で、この関係が歪んでしまうこと。
もし、二人の間に恋愛感情が絡んでしまえば、今まで築き上げてきた全てが、脆くも崩れてしまうかもしれない。
そう考えると、怖くて一歩を踏み出せなかった。
元貴が新しい曲のフレーズを弾きながら、僕に視線を送ってくる。その真っ直ぐな瞳。僕は思わず目を逸らす。
(ごめんね、元貴)
心の中でつぶやく。
元貴の想いを知っていながら、気づかないふりをしている自分に罪悪感を感じていた。
この関係を守るためには、そうするしかないんだ。
元貴のアイデアに耳を傾けながら、心の中で密かに願った。
いつか、元貴がこの気持ちを乗り越えて、別の誰かと幸せになる日が来ることを。
そして、その時も、自分たちが最高のバンド仲間でいられることを。
僕の心には、元貴への友情とは違う、甘く切ない感情が確かに存在していた。
でも、それは決して表に出してはいけないものだと。
だから、今日も、いつものように笑顔で元貴と向き合う。
その笑顔の裏に、秘めた想いを隠しながら。
長くてすいませんっ!
書いてるうちに止まらなくなっちゃって笑