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仕事終わり
へとへとになった身体に鞭を打って、ふらふらと帰路に着く。
体力には自信があるほうだが、今日は仕事が立て込んでいてさすがに疲れてしまった。
早めに帰れただけましだと自分に言い聞かせながらいつも通り家路を辿る。
すると、突然頭に冷たいなにかが落ちるのを感じる。
辺りを見渡せば、ぽつりぽつりと雨粒が落ちているのが見えた。
🃏「ジーマーで?」
「もー、傘持ってないのに」
「はぁ、タクシーも捕まんないし、」
不満を露わにしつつ、どこか雨を凌げるような場所がないか探す。
と、近くの雑居ビルが目に入る。
あそこなら、と思い駆け足でその雑居ビルへ向かう。
そのまま1階の少し年季の入った扉を開くと、 壁中に並ぶ本たちが目に入る。
がらんとしていて、少し埃臭い。
古びた本棚には本屋さんでは見ないような珍しいものからメジャーなものまで様々な本が並んでおり、異空間に飛び込んで来たような違和感があった。
そんな部屋の中心で、静かに佇む青年が1人。
特徴的な髪型に、切れ長の目。
瞳は綺麗な緋色をしていて、銀縁の眼鏡をかけている。
🃏(ゴイスー顔整ってる、モデルとかしてるのかな)
そう思いながら、じっと見つめていると青年が読んでいた本から顔を上げ、こちらの方を向く。
🚀「ん、ここに客人なんて珍しいな」
「…あー、雨降ってるからか」
窓の外を少し見つめてからそう言う。
彼の喉から発せられた声は想像よりも低く、頭に直接響いてくるようだった。
🃏「あ、邪魔しちゃってごめんね?」
「ちょっと雨宿りさせてくれたらいいから」
何となく申し訳ない気持ちになる。
🚀「んなの気にしなくていいわ」
「一応ここ古本屋だからな」
ふわりと優しく微笑み、そう言う。
俺の申し訳なさそうな雰囲気を察してだろう。
胸がきゅんとした気がするけど、今はあえて無視しておこう。
🃏「そうなの?じゃあ君は…」
🚀「石神千空な」
「俺は知り合いに頼まれてここの店番してんだよ」
まあここいると落ち着くのもあるがな、と俺が聞きたかったことを全部見透かしたように話す。
いつもなら隠せているようなことも、彼と話していると全部表情や声に出てしまうのだろうか。
メンタリスト失格かな、なんて思いつつ自分が名乗っていないことを思い出す。
🃏「あ、俺は浅霧幻ね」
「えーと…千空ちゃん!!」
🚀「……はっ、千空ちゃんとか初めて呼ばれたわ」
目を見開いて驚いたかと思えば、顔をくしゃりと歪ませてくすくすと笑い始める。
🃏「なかなかいいでしょ?」
🚀「クク、気に入った」
などと、ふたりで他愛もない会話を繰り広げていく。
千空ちゃんはなんだか独特な雰囲気を持っていて、なんでも話してしまう。
ついつい、他人には言わないような悩みまで話してしまったりもした。
最近、自分を見失いそうなことも。
🃏「はー、千空ちゃんといるとなんでも話しちゃうな」
🚀「いいじゃねぇかそれはそれで」
🃏「そう?」
「んー、でももう雨も止んだし、帰らないとさすがにやばいかも」
腕時計を見れば、既にここに来てから2時間以上経っていた。
🚀「あ、ほんとだな」
🃏「じゃ、この辺でお暇しようかな」
「またね、千空ちゃん」
寂しい、まだ離れたくないという初対面では到底抱かないような感情を抱えたまま、さよならを告げる。
🚀「あぁ、また話したくなったらいつでも来いよ」
「今度はおすすめの本も用意しといてやる」
🃏「ほんと?楽しみにしてるね」
そう言い、雑居ビルを後にする。
後日もう一度同じ場所を訪れると、古本屋なんてものなかった。
たしかにあの日、この扉をくぐって、千空ちゃんと出会ったはずなのに。
本当に異空間に飛んでいたのか、はたまた都合のいい夢だったのか、真実は分からない。
“石神千空”という青年が存在していた事実を証明出来るものもない。
🃏「『また来い』なんて期待させるようなこと、言わないでほしかったな」
「こっちは一目惚れしちゃってんのにさ、」
そんなものにこんな感情を抱いてしまった俺は、なんなんだろうか。
視界が歪む。
なんなの?これ。
ねぇ、せんくうちゃん。
楽しんで貰えましたか!!!
結構頑張りました
続き、作れたらいいなぁ(未来への淡い期待)
ちなみにタイトルのMissingには「欠けている、行方不明」という意味があるんですよ