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おそらにはきれいなにじがかかってたみずたまりがくさっちゃった
—4時間前
雨が降っていた。
低気圧のせいか、頭がズキズキと痛い。
とてつもなく家に帰りたくなかった。
怒声
庇う声
腹の青痣
赤黒い痕
『 この地獄から逃げたい 』
かちゃ
悟られないように静かにドアを開けた。
噎せ返るような煙草の匂いがする家。
我が家などと呼びたくもない。
家族など誰一人いない。
頼れる大人などいない。
帰る場所など、心休まる場所など、何一つない。
傘立てが住所の古い金属バットを手に取る。
「 やるなら今しかない 」
そう叫んでいる。
あぁ、頭が痛い・・・
窓の外の空を見た。
いつの間にか雨が上がっていて、虹がかかっている。
足元のみずたまりは、赤い色をしていた。
心もモヤモヤが晴れて。
あんなに痛かった頭も晴れたように澄んでいる。
着替える必要もない。
「help」と黒字で印刷されたTシャツ。
赤に染まってしまった白い服。
そのあときっと自ら警察へと足を運ぶだろう。
夕方、テレビのニュースには、小学生が帰宅後、家族を殴り殺害という見出しで報道されていた。
[完]