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後ろの席から美奈と彩の会話が聞こえてくる。
「じゃあ、友也の奥さん、あの日のコト知ったんですね」
「友也と彩ちゃんがテントで寝た、って言ってやったの」
「ビックリしてました?」
「友也が出張から帰ったら、派手に喧嘩するんじゃない」
「そうなったらサイコーです! ワンチャンあるかも」
「絶対、あの二人を別れさせて、沙耶を家から追い出してやる」
沙耶は、身体が震えるほど怒りを感じ、同じくらい情けなくなった。
『派手に喧嘩するんじゃない』って、正にその通りだ。
友也とケンカして突き飛ばした。
『家から追い出してやる』も、その通りだ。
本当に家を出て、こんな場所にいる。
すべてが小姑(あのおんな)の思い通りに進んでいる。
なんて悔しいんだろう。
(友也が浮気するから…)
沙耶が、紙ナプキンで涙を拭こうとしたとき、
「でも、友也って、本当に沙耶が好きなのね」
(え? え? え?)
「自信喪失です。あのシチュエーションで拒否られる なんて」
(え? え? え?)
「まさか、テントを出て、車で寝るなんて」
(友也!!)
友也はテントで寝ないで、自分の車に戻った。
車にロックを掛け、シートを倒して、朝まで眠った。
彩に 指一本触れてない。
友也は、嘘をつくとき 右耳を触る。
『テントに誰と泊まったの!?』と訊かれて『一人で』と答えたが、
[車]に泊まったので、右耳を触ったのだ。
(そういうことなんだ。正直者さん!)
沙耶はすべてが判った。
彩が席を立ちかけた。ドリンクバーに行くようだ。
すかさず沙耶が先回りする。
沙耶は、ドリンクバーに来た彩に軽く会釈した。
「初めまして。岸本友也の妻です」
「え!?」
「不貞行為があれば慰謝料を請求します。ですが、夫に その気が無いようですね」
自信に満ち溢れた顔。堂々とした態度。
沙耶に圧倒された彩は、言葉が出なかった。
沙耶は そのまま店を出た。
早く家に帰りたい。
友也が待つ、大切なマイホームに。