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──────────何も無い。そんな場所に私は1人生まれた。生まれた、と言うよりはそこに居た。
何一つない空間には僕一人だけだった。
寂しい。なんて感情何一つとしてなかった。
そんな日が何年と何百年と続いた。
だが、ある日。
“地面に小さな芽が生えた”
その時の感情はよく覚えてる。
嬉しい。仲間ができた。
1人じゃない。
そんな気持ちが湧いてきた。
感情を初めて経験したのはこの時だった。
──────────僕は一生懸命にそれを育てた。次第に育つ芽は、僕にとって兄弟を育てているお兄ちゃんのような気持ちだった。
芽と一緒に居ると感性が段々と豊かになっていった。
感情があるって楽しい。
誰かいるって嬉しい。
─────芽はやがて蕾となった。─────
僕は毎日蕾へと話しかけた。
【早く育ってお兄ちゃんに顔を見せておくれ。】
【きっと、綺麗な顔をしているんだろうな。】
そんな言葉を毎日かけた。
僕はずっと、寝る間も惜しんで蕾の前に座っていた。
見てみたかったのだ。
兄弟の顔が見れる瞬間を。
そして、ある日。
─────────蕾は開いた。──────
外側は優しい色合いをした黄色で、内側には深い赤色が広がっていた。
僕は直ぐに花へと触れて。
【ようやく、顔を見せてくれたね…綺麗だ。】
そんな風に声をかけた。
僕は懸命に自分の事を話した。
僕は君のお兄ちゃんということ。
今此処には2人しか居ないと言うこと。
とにかく沢山。沢山話した。
だが、楽しい時間も長くは続かない。
─────────花を咲かせて数日後。
何処と無く元気がない。顔を下に向け俯いていた。 どうしたのだろう。 水が欲しいのかな?
…
水をあげても元気にはならない。
なんで?今までは水をあげれば元気になったのに。
僕は必死に元気を出させようとした。
話をしたり、褒めたり、…
…
だけど、無駄だった。
花は、髪の毛が抜けていき、遂には頭 を落としてしまった。
僕はそれを見た時に初めて
胸の当たりが尋常ではない程に苦しくなった。
呼吸も上手くできずに目からは涙が零れた。
また、1人に、なるのか。
そんな事が頭によぎった。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
ひとりは、いや、
おねがい、やだ、お兄ちゃんは1人じゃなんにも、出来ないんだ
だか、ら、置いていかない…………
─────突然、僕の目の前に影ができた。
僕はボロボロに泣き崩れる顔のまま 顔を上げた。
その時、一瞬で涙が止まった。
なぜなら。
僕の目の前には
──────【二人の子供がいた】──────