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「ぼくって、みんなにとってどんな存在なんでしょう?」
後輩がぽつり呟いた言葉に、なんともいえない気持ちになる。恋人だとはいえ、此奴になにかを言える資格はない気がするし、それに彼の周りのみんなが本当はなんて思ってるかなんて知ってるはずない。バカ正直に「分からない」と言ってしまっては彼を傷付けてしまうだろうナ。
さて、彼がこう言ってくることは度々ある。と言っても本当に稀に、だが。彼がこういうとき、心から求めている言葉はなんだろう。いつもそれに悩んで、口を開くのだ。
「…さあね。」
「オレは高山くんのこと、大好きだぜ」
彼を傷付ける言葉がなんだってんだ、俺は俺のしたいようにするだけ。だって、俺はこれの明確な回答をしらない。彼が求めているのはこれであって、これじゃない。
鬼太郎として完璧に生きようとする彼と、ひとりの妖怪として生きたい彼とが混ざりあってるんだ。他人の心が読めないからこそ怖くなるし、読めてもそれはそれで多分、他人が怖くなるんじゃないだろうか。きっと、日本中の妖怪のリーダーとして、そして地獄の鍵の主として、誰もに求められたのは、どっちの自分なんだろうか。って悩んでるんだろう。彼のお父さんも、彼のところのねこちゃんもきっと彼の自然体なポーカーフェイスに惑わされてるだけであって、言えば助けてくれるはずだ。彼のところのねずみ男だって、彼を助けてくれるはず。
それをしないのは多分、自分が傷付きたくないからなんだろうナァ。
「ぼくの、生きてる意味って、なんなんだろう」
俺の前でだけはその仮面を置いて、素直になる。この心の中で渦巻く気持ちが優越感なのか独占欲なのか、はたまたもっと別なものなのか分からないけれど、 俺は彼の物語に、彼は俺の物語に、互いに介入は出来なくて、メンタルケアくらいしかできない。
彼に「助けてやる」なんて嘘はつきたくないし、これぐらいしか、できることは無い。あとは彼の好きなように。
隣に座っていた彼が此方に寄り掛かるのを、そっと支えて、冷たくなった身体を優しく抱いた。嫌なら抜け出せるように、最低限の力で。やがて彼は蹲り、小さな啜り泣く声が聞こえて、
ああ、ごめん。ごめんなさい。助けてやれなくて。でもオレは悪魔とは契約出来ないし、願いをかなえる魔法のランプもない。あっても、使っちゃいけない。だって、自他ともに認める、正義の味方なんだもの。
そうしていつも通り、彼に懺悔をする。