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時刻17時20分
下校中のこと、車を搬送するトラック、キャリアカーというトラックだろうか、俺はそのトラックに跳ねられた。
横断歩道を渡っている最中にだ。
しかもそのトラックの運転手は余所見運転していた。
跳ねられたくて跳ねられたんじゃない。
何故俺がこんな目に合わなければならないんだ。
微かに救急車のサイレンの音が聞こえ
る。
そして救急車が近くに停車すると担架で運ばれ、救急車に乗せられる。
俺の意識、俺の呼吸、俺の脈拍が遠のくような、弱くなっていくような、今はそんな感覚だけがする。
手が終わったのか、病室に運ばれる。
もうそれも薄っすらとそんな気がするだ
け。
眠気が津波の如く襲い掛かってくる。
起きたくても起きれない。
目を覚ましたくても目が覚めない。
駆け付けてきた家族や看護師さんの呼びかけも篭って聞こえる。
段々耳の聞こえもよろしくなくなり、呼吸もゆっくりになっていく。
そろそろ俺は駄目なのかもしれない。
笑える話だ・・・・俺の人生はたったの18
年。
それも余所見運転のキャリアカーに跳ねられるなんて・・・・
視界はもう真っ暗で何も聞こえない。
身体ももう鉄の棒の如く動かない。
呼吸も恐らくしていないし脈もないだろう。
家族や周りの皆には申し訳ないが、俺はここで命を人生を終えるようだ。
楠田 透真 享年18
死んだと思った筈なのだが、どういうわけか俺は目を覚ました。
そこは俺がいた現代と何かが違う。煤ぼけたような空気、瓦礫に埋もれた地面、建物という建物は廃墟の様な状態。
いつもと違う、何かが違う。異世界なんだろうけど、俺が知ってる異世界と明らかに違う。
ただただマイナスオーラに包まれていて生気を感じないというか、楽しいとかそんな陽気なものを全く感じられない。
どうしたらいいのかわからない俺は取り敢えず辺りを恐る恐る探索してみる。
酷い有様だ。
黒い煙が立ち昇り、壊れた建物の残骸がそこら中に散らばっている。
何故俺はこんなところにいるのかまるでわからない。
400mほど歩くと誰かが地面に座っているのが見えた。
女性が座り込んでいた‥‥というか膝立ち?の様な体勢でいた。
ただ何故この女性、妙な服装をしている。
服というか下着?みたいな格好をしていた。
白と黒のランジェリーというものだろうか‥‥そんな格好だ。
不思議そうに俺はその女性を見ていると俺の存在に気付く。
「こんなところで何をしているの?」
女性に声を掛けられた。
透真「いえ、何だかよくわからないんですけど‥‥俺道に迷ってしまったみたいで。」
謎の女性「そう‥‥。」
そういうと女性は立ち上がった。
そしてどういう原理かわからないが、巨大な鶴嘴の様な武器と思しき物を出現させた。
透真「な、何ですか?それ‥‥」
謎の女性「これ?私の武器。この世界を生き抜く為の必需品。」
透真「俺を殺しても何も得る物なんてないですよ。」
謎の女性「でしょうね。別に貴方を殺す気はないけど‥‥」
そういうと武器を下ろした。
謎の女性「貴方、何ていう名前?」
透真「俺は、透真。楠田 透真(くすだ とうま)。」
謎の女性「ふ~ん、透真君でいい?」
透真「あ、はい。」
英里佳「私は英里佳、石和 英里佳(いさわ えりか)。」
透真「貴方も日本人ですか?」
英里佳「日本人?あぁ、そうね。昔はそういう人種だったと思う。」
英里佳という女性は謎めいたことを言う。
透真「昔はって、国籍か何か変えたんですか?」
英里佳「国籍?別に何も?」
透真「ここは日本じゃないんですか?かなりズタズタになってはいますけど。」
英里佳「日本とかそういう概念はないわ。国家という概念自体、この世界には存在しない。かつては存在していたけど、今世界を動かしているのは国家じゃないの。」
透真「どういうことですか?国家が存在しないなら何が世界を牛耳っているのですか?」
英里佳「牛耳る‥‥ね。面白いこと言うのね貴方。まぁ、牛耳るっていう捉え方は間違ってないかな。もう、国家なんてものはない。企業が世界を回している。」
透真「企業?」
どういうことなのだろうか?
国家がない世界。企業が世界を動かしているなんて到底受け入れられないし信じ難い。
透真「アメリカとかイギリスとか、イタリア、ドイツ、スペイン、中国にオーストラリアとかそういった国はまだあるんでしょう?」
英里佳「何それ?そんなもの無いわ。」
透真「因みに英里佳さんは自分が何人かはわかっていますか?」
英里佳「日本人ね。」
どうやら自分が日本人ということだけは自覚している様子だった。
でも何故世界各国のことを知らないのだろうか?
英里佳「本当の事を言うとね、アメリカとかイタリアとか、勿論日本という国の存在は知ってるわ。でも国家の概念が無くなって大分長い年月が経っているからそう答えただけ。」
今は西暦何年なのだろうか?そこも気になったので聞いてみることにした。
透真「今西暦は何年ですか?」
英里佳「質問が多いこと‥‥2251年だったかな?」
2026年から225年後の世界?そんなのってありありえるのか?
透真「英里佳さん‥‥英里佳さんは俺が2026年から来た人間って言うと信じますか?」
英里佳「ふ~ん、別に貴方だけじゃないから不思議じゃないかな。」
俺以外にもこの異世界にいるというのは非常に気になるところだ。
英里佳「取り敢えず着いてきて。ここよりは比較的マシな場所に案内するから。」
俺は英里佳さんに着いていくことにした。
英里佳「あまりここで長居してると奴等が襲い掛かってくるだろうし‥‥」
透真「奴等?」
一体何が潜んでいるのだろうか?
透真「俺も、戦わないといけなくなるんでしょうか?」
英里佳「そうなるわね。」
透真「でも、武器なんて持ってないし‥‥」
英里佳「自分の頭の中でイメージしなさい。私はそれでこういう武器を錬成することが出来たんだし。」
武器をイメージすると言われても‥‥あまり大した物が浮かび上がらない。
瓦礫の奥から何かがガサゴソと蠢いている。
英里佳「来た‥‥」
透真「な、何ですか?」
英里佳「私の側から離れないで。」
得体の知れない謎の生き物が飛び出してきた。
長い爪に爬虫類のような鱗と尻尾、頭からは虫のような触角が生えていて、背中からはワイヤーのような物が無数に生えている。
一見人間のようにも見えるが、意思疎通は間違いなく出来なさそうな印象を受ける。
透真「何なんですかこれ‥‥」
英里佳「私が言った奴等の正体がまさしくこれ。この世界ではこの化物がウロウロしてる。人間を襲っては捕食する危険な存在だから、不用意に近付かないことね。」
英里佳さんは武器を構えて化物に斬りかかる。
⸺ギィィィィーーーィィッ!!??⸺
化物は不気味な断末魔と共に真っ二つに切ら捨てられた。
英里佳「コイツ等は身体を真っ二つにするか頭を飛ばさない限り再生するから貴方もその事は覚えていて。」
透真「‥‥はい。」
英里佳「さ、行くわよ。」
英里佳さんは武器をしまって再び歩き出した。
俺もその後を着いていく。
交通事故死の先に辿り着いた異世界には華やかさの欠片もない殺伐とした世界だった。
どこか生々しさもあり、長居したくないと思える程のものだ。
俺は‥‥ここで生きていくのだろうか?