テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#カラスバ
小鳥遊
5,337
217
360
第一話「出会い」
⋯何だろう?
⋯なんだかふわふわする。
「⋯⋯夫か⋯」
⋯誰?
私に呼びかけるのは⋯
「大⋯夫か⋯」
何だよ⋯うるさいな⋯
「おい、大丈夫か?」
誰かの声で、はっと目を開ける。
誰かが、私を覗き込んでいた。でも、この顔って⋯
「あぁぁぁぁぁ!?!?」
この人物の正体に気づいて、驚いて起き上がる。
「うおっ!?なんやなんや!?」
「カラスバさん!?!?!?!?」
そう。私を覗き込んでいた人物は、あるゲームに登場する、カラスバだった。
ちなみに、最推しである。
⋯いや架空の人じゃないの!?なんで目の前にいるの!?
そもそも、ここどこだ!?
頭の中は大混乱だった。
「どないしたん?急に黙り込んで⋯」
心配され、なんとか我に返る。
「⋯あ。すみません⋯えっと、ここはどこですか?」
「ここ?ここは、ミアレの公園やで」
「⋯は?」
ミアレ⋯?ミアレって、ミアレシティ?ゲームに登場する都市の名前⋯
「⋯夢かな?そうだ夢だ。」
そう言って自分の頬をつねってみるが、しっかり痛い。
「⋯夢じゃないの?マジ?じゃあどういうこと??」
「なんか事情がありそうやな。うちの事務所で聞くから、ついてきぃ」
「あ、はい⋯」
そう言って、カラスバは歩き出したので、ついていくことにした。
事務所は、とにかく大きくて、和風な建物だった。周りの建物と比べると、
少し場違いな気もする。それにしても⋯
(めっちゃ見たことある⋯そりゃ、ゲームでめちゃくちゃ遊びに行ってたもんな⋯)
ここまでの景色は、すべてとあるゲームで見た景色そのものだった。
もしかしたら、ゲームの世界に入り込んでしまったのだろうか⋯?
そうだとしても、なぜ⋯?
色々考えているうちに、事務所の奥に着いていたようだ。
「ボス、その方は?」
「ああ、ジプソ。こいつは大事な客人やから、失礼のないようにな」
「承知しました」
ジブソ⋯たしか、カラスバさんの部下だったっけ。
「さて、お前さんに何があったんか、聞かしてもらおか。
こっちも話したいことがあるから、手短に頼むで」
「わかりました⋯」
そして、私は今までのことを話した。
いつものように自分の部屋で寝たはずなのに、目が覚めたらあんなところにいたこと。
向かう途中にガラスに写った自分を見たが、自分の見た目が
ゲーム内のアバターになっていたこと。
この世界が、ゲームの世界であるかもしれないということ⋯
全て話し終え、一旦の沈黙のあと、カラスバが口を開いた。
「⋯ちょっと信じられへんけど、オレはお前さんとは初めて会ったのに、
お前さんがオレのこと知ってるんは、そうやないと辻褄が合わへんな」
「はい⋯私もちょっと、信じられてないです、この状況⋯」
「でもな、初めて会うた言うても、何でかお前さんのこと知ってるような
気もするねんなぁ…」
「…どういうことでしょうか?」
「それはな、おそらくやけど…」
カラスバは、私の目を見て、言った。
「もしかしたらこの世界の時が戻ってんのかもしれへんってことなんや」
「⋯え?」
驚いて、目を見開く。
「時が戻る前に、タワーが暴走して街がエライことになって、それをオレと、
他の街の奴らと、一人のお嬢さんとで、確かに鎮めたんや。」
「⋯」
ゲームのストーリーと、同じだ。
カラスバは続ける。
「そのあと、騒ぎも落ち着き始めてきた、そんな時やった。
朝起きたら、時が戻ってたんや」
「⋯!?」
「なんか違和感を感じて、スマホロトムの日付を見たら、
騒ぎが起こる前に戻っとったんや」
「⋯記憶は持ったまま?」
「そうらしい。時が戻る前の記憶はちゃんとあったんや。そんで、
ジプソにも確認してみたんやけど、覚えてる様子は無かったんや。
どうしてオレだけ記憶がそのままなのかはわからん」
カラスバさんも、わたしと同じように、不思議な体験をしていた。
「そのあと、何かに導かれるような感じがして、街の外の草原に出たんや。
ほんで、お前さんに会ったってわけやねん」
カラスバさんの話も信じられないようなものだった。
しかし、私の話もあるので、これは信じるべきだろう。
「それでな、そのお嬢さんと自分が、よう似てる気ぃするんや」
「似てる…?」
「声も見た目も、お嬢さんとそっくりなんや。お嬢さんは無口なほうやったけどな」
…もしかして、その時が戻る前って、私が実際に遊んでいた時のゲームの世界なのかな?
そんな考えが私の頭をよぎる。
「⋯そういえば、ずっと立ったままやったな。オレめっちゃ失礼やん。一旦座ろか。」
「あ、そういえば⋯。すみません、ありがとうございます」
そう言って、横のソファに腰掛ける。座り心地はすごくよかった。
立ち上がれなくなるほどに。
「そういや、名前聞いてへんかったな」
「あ、私、ゲームではミラと名乗っていたので、ミラでお願いします」
「ミラ…お嬢さんも、同じ名前やったな」
え…だとしたら余計にさっきの説が濃厚になるぞ…?
「そうなんですか…」
「ところで…」
カラスバは、ふうっと一息ついて、言った。
「ミラは、元の世界に戻りたいんか?」
「え⋯」
その言葉に、固まってしまった。
そりゃあ、推しのいるこの世界を離れたくない気持ちの方が強いかもしれない。
でも⋯
「戻りたい⋯です」
「⋯そうか」
「でも、戻るにしても方法がわからないから⋯結局しばらくは
この世界にお世話になるでしょうね」
「そやろな、よかったわ」
「え?」
「いや、何でもあられん」
なんだか、カラスバさんが私の言葉に安心したようにも見えたけど⋯
気のせいか。
「ところで、しばらくこの世界におるってことは、こっちで暮らすってことやんな」
「そうですね⋯あ、そっか。住む場所⋯」
「そやな、せやから⋯オレの家にでも来ぉへんか?」
「ゑ」
カラスバさんの家に、行く⋯????
カラスバさんの家に⋯????
え〜〜〜〜〜っと、状況を整理しよう。
私はミアレで過ごすことになって、それで住む場所ないって気づいて、
ストーリーではホテルZにいたけど、たった今カラスバさんの家に来るかって言われて、
えーーと⋯
どういう展開だよ!!!!!!!!!
何だよこの謎(最高な)展開!!!!!!
神様はこの話をいったいどこに着地させたいんだ!?
「おーい、起きてるかー?フリーズしてんでー?」
「ハッ!!!」
カラスバさんに顔の前で手を振られて、我に返る。
「すみません!!!」
「ホンマ、ミラはよくフリーズするなぁ」
と、ちょっと不器用な笑顔を返される。
(やめろ!!!!そんな笑顔を向けるな!!!!死ぬ!!!尊すぎて死ぬ!!!!)
「え、はい、で、えーと、家に来るかでしたよね⋯」
内心、悶えながらもどうにか返事をする。
「頼るところもないので、行かせていただきます!!!」
「分かった。じゃあ、もう夕方やし、帰るとするか。ジプソ、事務所は頼んだで」
そうして、カラスバは立ち上がり、歩き出した。
カラスバの家に向かう途中、私は気になっていたことを聞いた。
「カラスバさん、どうして初めて会った私にここまでしてくれるんですか?
というか、女子を家に連れ込むなんて⋯」
カラスバは、笑って言った。
「いや、何考えてんねんな。そんな動機なわけ無いやろ。そやな⋯オレな、
子供の頃にエライ思いをしとって、それである人に助けてもろたことがあるんや。」
ああ⋯ゲームでもそんなこと言ってたっけ。
「それでな、ミラの今の状況が、なんとなく昔のオレに重なる気ぃするんや。せやから⋯
今度はオレが助けたいって、思たんかもな」
「カラスバさん⋯」
「あ、悪い。いまのは忘れたれや」
なにか返そうとは思ったが、言葉が見つからない。
⋯そうして、夜が更けていった。
二人が話しているとき、ビルの上から二人を見つめる黒い影があった。
犬のような形をしている。
影はすぐに走り出し⋯消えた。
コメント
1件
「第1話」読ませてもらいました〜🌙 最初が意識混濁のシーンから始まって、気づいたら推しのカラスバが目の前に!って展開、めちゃくちゃドキドキしました(笑) 「オレの家にでも来ぉへんか?」って最高すぎてこちらまでフリーズしましたよ…尊い。 時が戻った設定や黒い影の伏線も気になって、続きが本当に楽しみです!