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じゃむじゃむあっぽー🍏
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🫧🎀🫧
〜過去〜
「ねえ、元貴、清宗聞いてよ」
ファミレスのドリンクバーのメロンソーダをストローでつつきながら、涼架がいつものようにふにゃふにゃとしたタレ目をさらに下げて笑う。
僕と清宗は、他校の吹奏楽部にいるこの風変わりで愛らしい友人の話を、いつも「はいはい」と半分呆れながら聞くのが日課になっていた。
「またその話?涼ちゃん、最近本当にそればっかりだよね」
清宗がポテトを口に運びながら苦笑する。
「だって本当にカッコいいんだもん!同じ学年の若井くん。いつも美術の授業をサボって保健室にくるんだけどね、すっとしてて、ちょっとツンとした野良猫みたいな目をしてるの。最初はみんな怖がってるんだけど、僕、ひと目で
『あ、綺麗な目だな』って思っちゃってさ」
涼架はそう言って、自分の白いカバンから一つの消しゴムを取り出した。
白い紙カバーに、ちょっと不機嫌そうな黒猫のイラストが描かれている。
「これね、購買で見つけて若井くんに似てるからって見せたら、若井くん、自分の目が吊り目なの気にしてたみたいでさ….。僕、慌てて『キリッとしてて凛としててカッコいいんだよ!』って言っちゃった。そしたら若井くん、照れてこれ、大切に持ってろだって。ほら、可愛いでしょう?」
「へえ…。自分の目を気にしてる男の子、ねえ」
僕は手元のグラスを回しながら、涼架の手の中にある黒猫の消しゴムをじっと見つめた。
涼架が誰かのことをこんなに楽しそうに、熱を帯びて話すのを見るのは初めてだった。
病気のせいで、いつもどこか一線引いて「普通の青春」を諦めていたようなあいつが、学校の、しかも男の友達のことでこんなに目をきゅるきゅると輝かせている。
「写真とかないの?涼ちゃん。そんなに言うなら見てみたいんだけど」
清宗が身を乗り出す。
「あ、写真はね、僕が勝手に撮るの申し訳ないから無いんだけど…..あ、でも、こないだ生徒総会のパンフレットに、学年委員?の集合写真があって、そこに若井くん小さく写ってたの!携帯でそこだけ撮ったやつあるよ!」
涼架は嬉しそうにスマートフォンを操作して、
「これこれ!」と僕たちの前に画面を突き出してきた。
画面の端っこ。ブレザーを着て、少し面倒くさそうにカメラから視線を外している男の子が写っていた。
不鮮明な画質だったけれど、涼架の言う通り、すっと切れ上がった鋭い目元が印象的な、綺麗な顔立ちの少年だった。怒っているわけじゃない。
ただ、周囲に馴染めずに、自分の殻にこもっているような、どこか危うくて、真っ直ぐな瞳。
ドクン、と胸の奥が妙な音を立てた。
「….あ」
「ほら、カッコいいでしょ、元貴!」
涼架が自慢げに胸を張る。
「…..うん。確かに、綺麗な目をしてるね」
嘘偽りのない本音だった。それと同時に、僕は自分の胸の中に、生まれて初めての『小さくて苦い感情』が芽生えるのを感じていた。
写真の中の少年、若井くん。
彼が自分の吊り目を気にしているなら、僕ならなんて声をかけるだろう。「そのままで十分、人を惹きつける 目をしてるよ」って、僕の言葉で伝えてあげたい。
あいつがどんな声で話し、どんな風に笑うのか、もっと知りたくなってしまっている自分がいた。
「元貴?どうしたの、じっと見ちゃって。若井くんに見惚れちゃった?」
涼架が悪戯っぽく笑いながら、僕の顔を覗き込んできた。
「まさか。涼架の惚気話を聞かされてるだけだよ」
僕はわざと呆れたような嘘の笑みを浮かべて、ストローをくわえた。
大好きな親友の大切な人。気になっちゃいけない。好きになりかけてるなんて、絶対に口が裂けても言っちやいけない。
「でもさ、若井くん、僕がときどき息が苦しくなっちゃうとね、すごく心配そうな目で僕を見てくれるんだ」
涼架はそう言って、少しだけ切なそうに目を伏せた。
「僕、あの日差しが強い日のサボりの言い訳、若井くんに「嘘つき」って見破られてる気がするんだよね。若井くんの目、すごく真っ直ぐだから、僕の悪いところ、全部見透かされちゃいそう」
「涼ちゃん、本当に大丈夫なの?無理して学校行ってない?」
清宗が心配そうに声をかける。
「大丈夫だよ。若井くんがね、『苦しい時は苦しいって言えよ』って言ってくれたの。だから、僕、若井くんの前ではちょっとだけ、弱い藤澤くんでいられる気がするんだ」
幸せそうに、愛おしそうに語る涼架の横顔。
僕はその隣で、ただ「そっか」と短く返すことしかできなかった。
涼架、お前は本当に若井くんのことが大好きなんだな。そして若井くんも、お前のその不器用な強さに、ちやんと気づいて傷ついてくれてるんだな。
(若井くん、か….)
一度も会ったことのない。他校の、黒猫の目をした少年。
涼架の話を通して、僕の心の中にどんどん彼の存在が大きく育っていく。
「今度、3人でどこか遊びに行く時、若井くんも誘ってみようかな!元貴たちとも絶対に気が合うと思うんだよね」
「あはは、それいいね。俺は賛成」
清宗が笑う。
「….うん。僕も、会ってみたい、な」
僕は胸の奥の、涼架には絶対に言えない『秘密の恋心』をそっと隠すように、メロンソーダをゴクリと飲み干した。
若井くん。君は今頃、あの学校の保健室で、涼架とどんな風に笑い合っているんだろう。
いつか君に会えたなら、僕はどんな顔をして、君のその綺麗な目を見つめればいいんだろう。
夕暮れのファミレスの窓の外、うっすらと昇り始めた三日月を見上げながら、僕は届くはずのない想いを、ただ静かに抱きしめていた。
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