テラーノベル
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朝日がカーテンの隙間から差し込む静かな朝。佐藤は、普段と変わらないように目を覚まし、まぶたをゆっくりと開けた。その瞬間、何か違和感を感じて、すぐにベッドの中で体を動かす。
「ん…?」佐藤は手で顔をこすりながら、寝ぼけたまま身を起こすと、何かが耳に触れた。軽く触ってみると、それは…ふわふわの猫耳だった。
「え、えぇ!? 」驚いの声を上げ、思わず頭を触ると、確かにそこには柔らかい猫耳が生えていた。そしてその下に、もう一つ違和感を感じるものがある。それは…尾(しっぽ)だ。
「ま、まさか、これって…?」佐藤は信じられない思いでしっぽを確認する。背中からぴょこんと出て、先端がふわりと動く。どうやら、自分が本当の猫耳と尻尾を生やしているらしい。
「どうしよう…会社、行かなきゃ行けないのに。」佐藤は頭を抱えながら、軽く尻尾を揺らしてみる。自然に動いていくのが、少し心地よかった。
そんな時、ドアの向こうから声が聞こえる。「佐藤、遅刻するぞ〜!」それは、同僚のすかーの声だった。
「うわっ!遅刻…」慌ててドアを開けると、すかーが目を見開いて立ち尽くすが、すぐに面白そうに笑いながら言った。「そのまま会社に行って、みんなをびっくりさせよう」スカーは楽しそうに言うが、同時に佐藤の顔をじっと見つめている。まるで、猫耳と尻尾を付けた佐藤が珍しくて嬉しそうな表情を浮かべていた。
その後、2人は一緒に会社へ向かうことになった。すかーがちょっと先に歩き、佐藤は後ろを着いていく。
会社に着くと、まずは自分の席に座る佐藤。尻尾が椅子の背もたれに引っかかって少し苦戦している。
その瞬間、隣の席の同僚たちが驚きの声を上げた。
「佐藤、なにそれ!?猫耳と尻尾!? 」
「うわぁ、すごい、可愛い!」同僚たちは一斉に驚きながらも、どこか嬉しそうに佐藤の頭を撫でたり、尻尾を掴んでみたり、耳を触ってみたり、猫が嫌がる事を含めて沢山触ってきた。佐藤は特に何も言わずに耐えて、定時退社をすかーと一緒にした。
次の日、佐藤の猫耳と尻尾は消えてなかった。
「なんでぇ…!」
佐藤は膝から崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。昨日だけの”奇跡”のような猫耳体験は、今日も続いていたのだ。
隣で何故か眠っているすかーに尻尾を掴まれて、咄嗟に声が出た。
「あ”ッ、!?//♡♡」自分でもびっくりしたが、寝起きのすかーも眠気なんて消え去ったかのように、目をぱちぱちと動かしている。
「まさか、耳の方もか?」少し冗談交じりで猫耳の先をちょんっとつついた。
「耳も、ビクってなった。」
「触んないでよ…ばかぁ//♡」
佐藤の声はだんだん小さく、甘えたようにかすれていく。普段なら絶対に見せれないような顔だ。
「お前な……その姿で、そんな声出されたら、仕事なんて行く気失せるわ!」
「こっちが言いたい…!//」
そうこうしているうちに、時間はどんどん進んでいく。
「……佐藤さん、やっぱりまだ生えてるんですね……!!」
会社の受付嬢が、昨日と変わらずキラキラしたら目で佐藤を迎える。
「やっぱ人気やなぁ。今日も注目の的やん。」
「すかー、笑わないで…ホントに恥ずかしいんだから……!//」
会社ではすでに”猫耳佐藤”は一種のマスコット状態になっていた。
仕事が終わり、すかーと並んで歩く帰り道。空はオレンジ色から群青色に変わっていた。
「なぁ、佐藤?」
「なに?」
「猫耳…消えんでも、ええんちゃうか?」
「え……?」
「俺は好きやで。耳も尻尾も…でも、1番はそれで恥ずかしくなってる佐藤の顔や。」
「……!//」
佐藤は黙ったまま、すかーのシャツの袖をそっと掴む。
「……ほんと、バカ//」
「うん、バカでえわ。好きやから」
そうして、2人は寄り添うに歩いていった
猫耳としつはまだそこにあったけれど、それを隠そうとする気持ちは少しずつほぐれていった。
佐藤の尻尾が、小さく左右に揺れる。
まるで、______彼の言葉に、うれしさを隠しきれないように。
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