次の日、私はどこか落ち着かない気持ちのまま学校に向かった。
李斗がそばにいてくれる。それだけで、どれほど心強いか分からない。
でも、あの男の子が残した言葉が、頭から離れない。
**「君の周りには、気をつけなきゃいけない人物がいる。」**
私の周りって、誰のことを言っていたの?
私は普通に生きてきたし、変なことに巻き込まれたことなんてない。
でも、もしかして――。
そんな考えが浮かんでくるたびに、胸がざわついた。
***
昼休み。私は一人で廊下を歩いていた。
ふと、廊下の角を曲がると、小さな話し声が聞こえた。
「華嶺家の子なんだってね。」
「すごいよね、昔から名家で、家柄が厳しいって噂もあるし…。」
「でも、最近、妙な噂があるよ。」
「妙な噂?」
私は思わず足を止めた。
**華嶺家――私の家の話をしてる?**
「なんかね、あの家、昔からずっと何か裏があるっていうか…良くないことに巻き込まれてたとか…。」
「え、怖い……。」
「ほら、前に問題になった事件とか…」
「そうそう、それに関係してるって…。」
**事件?**
私は思わず息を呑んだ。
そんな話、聞いたことがない。
家は昔から厳しいし、代々続いているのは知っているけれど、事件なんて関係ないはず――。
でも、その時、私の背筋がゾッとした。
――まさか。
あの男の子が言っていた「危険な人物」って、私の家のこと……?
***
「まりあ?」
気づけば、私は呆然と立ち尽くしていた。
後ろから李斗の声がして、私は驚いて振り返った。
「どした? ぼーっとして。」
「……あ、ううん。何でもない。」
「何でもない顔じゃねぇよ。」
李斗は鋭い目をして、私の顔をじっと覗き込んでくる。
私が何か隠してることなんて、もうバレてるんだろうな。
「……ねぇ、李斗。」
「ん?」
「私の家って、何か…おかしいのかな?」
「は?」
「私、今まで知らなかったんだけど、華嶺家って、昔から何か裏の事情があったみたいで…。」
「誰に聞いた?」
「……たまたま、噂話を聞いちゃって。」
私は不安そうに言うと、李斗は少し考え込んで、ため息をついた。
「そんなの、ただの噂だろ。」
「でも、もし本当だったら…?」
「まりあ。」
李斗は、いつになく真剣な目で私を見た。
「もしお前の家に何かあったとしても、それがどうした?」
「……え?」
「関係ねぇだろ。お前がどう生きるかって、お前の家が決めることじゃねぇんだから。」
その言葉が、胸にすとんと落ちた。
――そうだ。
どんな過去があったとしても、それが今の私に何か関係があるとは限らない。
「……そう、だよね。」
私は少しずつ、不安が和らいでいくのを感じた。
でも、心の奥ではまだ、何かが引っかかっていた。
このまま、何も知らなくていいの?
**――私の家に、本当に隠された“何か”があるのだとしたら?**
次回、ついに明かされる華嶺家の秘密!? まりあと李斗の関係にも変化が――!?
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