「まりあ、なぁ。」
放課後、まりあが何か悩んでるような顔をしている。俺が声をかけると、振り返って少し驚いた顔をしたけど、すぐに笑顔を作ってきた。けど、その笑顔、なんだか少し硬い。
「どうしたんだよ?」
「え?」
「最近、なんか元気ないだろ。」
まりあは少し黙った後、目を逸らして言った。
「ううん、大丈夫。」
その言葉に、俺は一瞬、ピンときた。
「嘘だろ。」
まりあは少しびっくりした顔をして、何も言わなかったけど、俺はじっと彼女を見つめていた。
「お前、何か隠してるんだろ。」
「……ごめん。」
まりあが小さく頭を下げると、俺はため息をついて言った。
「俺に隠してることなんかないんじゃないのか?」
まりあは少し驚いた顔をして、それから少し考えるように黙った。
「私、ちょっと聞いちゃったんだ。」
「聞いた?」
「……華嶺家のこと。」
その瞬間、俺は少し驚いた。
まりあの家のことなんて、聞いたことなかったし、まりあ自身も家のことをあまり語らなかった。
「どういうことだ?」
まりあは少しだけ躊躇いながら、言葉を続けた。
「……私、華嶺家が昔から隠していることがあるんじゃないかって思って。」
その言葉に、俺の胸が少しざわつく。
まりあが家のことを気にし始めた理由、俺には分からなかったけれど、何かが引っかかる。
「お前、そんなことで悩んでたのか?」
まりあはうなずいて、黙って下を向いてしまった。
俺は少し考えてから、ゆっくりと歩み寄って言った。
「俺が言うのもなんだけど、お前の家のこと、そんなに気にする必要ないと思うぞ。」
「でも、もし…私の家に何か隠されていることがあるなら…?」
まりあの言葉が、俺の心に引っかかる。
「もし、何かあったとしても、お前がどう生きるかはお前自身の問題だろ?」
「でも、もし……」
「『もし』なんて考えるだけ無駄だ。」
俺はまりあの肩に手を置いて、強く言った。
「今、お前が悩んでるのは、お前の問題だ。家のことなんか、関係ない。」
まりあは少し驚いたように俺を見上げて、それから小さく頷いた。
「……ありがとう。」
「何でもない。」
そのまま、しばらく黙って歩き続ける。
でも、心の中ではわかっていた。
まりあが家のことを気にするのは、きっと家族に対して感じる責任感や義務感からだろう。
でも、俺はそれに巻き込まれたくはなかった。
まりあが一番大切なのは、今の自分だ。
「でも、もし何かあったら、俺が守るから。」
その言葉を口に出してから、俺は少しだけ自分でも驚いた。
だけど、まりあはきっとそれをちゃんと受け止めてくれるはずだと思った。
次回、二人に迫るさらなる危機が!
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