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うわっ……第12話、めちゃくちゃ重くて美しい回だった……。 百花さんの過去エピソードが刺さりすぎてやばい。死体回収屋で出会った千晴の「守る力がない」って言葉から、あの最期の描写まで、静かに残酷で、でも花のイメージで包まれてる感じがすごく好き。千晴がタンポポを頭に乗せたシーンと、最後の「白く咲き誇りますように」が繋がって泣ける。 リリーと御幸も、この話を聞いてどう心を動かしたんだろうな。続き気になるわ🔥
「千回晴れたら百回花が咲く。」
「ねぇ。リリー」
「はい。なんですか」
「見つかるといいね。流星くんと海の大切な場所」
「――見つかるといいねじゃないですよ。見つけるんです」
「へへっ。そっか」
潮風が2人の髪を優しくゆらした。
「海里中学校」海と流星が通っていた中学校だ。
2人は声をあわせていった。
「海の見える町。
中学校から4つ先の駅から海の方へ歩く。」
2人の埋めたタイムカプセルを探すため2人の言葉に思いをのせた。
「行こう」
「――はい。」
2人は肩を並べ歩いていく。
それでも少し2人の間には隙間があって会話は少ない。それでも妙な安心感はあった。
電車。海里町はなかなかの田舎であるため、2時間に
1本の電車が来るか来ないかというほどだ。
2人は運が良かった。たまたま駅に着くと同時に電車がやってきたのだ。
どの方向の電車に乗るのかもわからないがとにかく
海に近い方向へ向かう電車に腰を下ろした。
駅を出てしばらく歩いた。
すると声が聞こえてきた。
「おばあちゃん。はいお花。おじいちゃん喜んでくれたらいいね」
微かに花の香りが鼻を掠めた。
花屋だ。
リリーと御幸は花屋にいる女の人に目を向けた。
女性というには若すぎて女の子というには大人にちかい。ちょうど20歳ぐらいだろうか。
その女の人が目をこちらに向けた。
「お花。見ていきますか?」
花のように優しく明るい笑顔だった。
リリーと御幸は花屋によることにした。
彼女は百花(もか)というらしい。
百花はリリーたちに向けて声をかけた。
「お二人は姉妹ですか」
「いや。」
「そーなんですか。ではどんな関係で?」
「――友達」
御幸が小さな声で言った。
「お友達ですか。いいですね」
百花は花に水をやっている。
御幸は声をかけた。
「どうして花屋を?」
「そーですね。――昔友達にいわれたんです。
私には花が似合うって。」
「――そうなんですね。」
沈黙が少し続いた。
「――少し自分語りに付き合ってくれませんか。」
百花は話始めた。
昔――季節は春頃。百花が高校一年生だったとき バイトをしていた。
胸を張って言えることではないけれど。
死体回収屋だ。
正しく言えば怪物によって殺された人々を戦場から 持ち帰り身元を確認する。
幼い子供だって多く死んでいた。
私は家が貧しかった。
短期間で金が稼げるのはこの仕事だった。
その頃から花が好きだった。
血生臭い職場よりも平和でしんとしている花の甘い匂いが心を落ち着かせるのだ。
母は死んだ。もともと花屋だった。
カウンターで花束を包む母を店のベンチで寝転びながら見つめることが大好きだった。
私の名前だって、百回幸せな花が咲くというちょっとした意味が込められていた。
母が死んでから父が私を育ててくれた。
花屋は売り払って安いぼろアパートを借りた。
それでも幸せだった。
そんな私は死体回収屋だった。
そこで知り合ったのは千晴。あたたかな家庭で過ごす 優しい人だった。
ある日私は聞いてみたのだ。どうしてこんな場所で 働くのか。
貧しいわけではないだろう。と。
千晴は胸を張って。でもどこか寂しそうに言った。
「親が死んだんだ。」
その言葉が百花の胸を木霊した。
こんなこと。言われるとは思わなかった。
「親が死んで思い知ったんだ。私にはなにも守る術がないって。愛奪還組にも入ろうと思った。でも止められた。ううん。止めてくれた人がいた。だけど私にはその人たちを守る力がない。いつも守られてる。」
百花はなにも言わずに話を聞いた。
「せいちゃん――兄さんはいつもかっこいい人だった。
親が死んだって聞いたときに、私たちの肩を抱いたんだ。自分だって親のいない日々が怖かったはず。受け入れられなかったはず。でもすぐに受け入れたんだ。せいちゃんは大人じゃなかった。大人になるしかなかったんだ。」
百花はなにも言わない。
「だからせめて金銭的には2人を守りたいんだ。」
千晴は笑った。
強く凛々しく百合の花を見ているようだった。
何色かは分からなかった。
白か黒かはたまた虹色かわからなかった。
そんなことがあって。
いろんなことがあった。
遊園地へ遊びに行った。
千晴の兄弟にもあった。
千晴は笑った。いつも。楽しそうに。
一度千晴に話したことがあった。
「私花が好きだったんだー」
「そーなんだ。」
「うん。花屋さんになりたかったんだ」
「――なんで過去形なの?」
「もう叶わないから」
「――叶うよ。絶対」
千晴は道端に生えているタンポポを優しく手折った。
そして百花の頭へ透かしてみせた。
「ほらよく似合う。」
その一言で、とある女の子がどれだけ救われたのか千晴は知らないだろう。
とある日、百花は仕事をやめることにした。
百花は花屋のバイトをすることにしたのだ。
給料は高くない。
でもずっとしたかったことだ。
千晴にもこの話はした。柄にもなく私は浮かれていた。
その日の現場で死体回収屋での私の仕事は終わる。
千晴は今日は非番でここには来ない。
でも仕事終わりに一緒に遊ぶ約束をした。
百花は現場へ足を踏み込んだ。
いつもとは違った未来を見据えた暖かい笑みを溢しながら。
そこには信じられない光景が広がっていた。
千晴のぐちゃぐちゃの頭。
遠くに飛んでいった千晴の腕。
どうしてわかったのか?
嫌でもわかる千晴はアクセサリーが好きだったから。
お気に入りだと見せてくれたピアス。
兄弟がくれたというネックレス。
そして私が誕生日にあげたおしゃれな指輪。
その全てが目の入り込んだ。
そして千晴のそばには潰れた花束が落ちてあった。
あぁ。千晴はどこまでも優しい人だった。
何よりも怖いのは怪物ではなく何の表情も変えずに 死体を拾う人間なのかもしれない。
それからしばらくして父が死んだ。
怪物によってだそうだ。大切なものは全てなくなった。父は怪物を恐れていなかった。(きっと強がりだっただろうけど。)
――でも殺されてしまった。
「――そんなことがあってね」
風が花の香りをゆらすなかリリーと御幸は瞳を静かに伏せた。
「愛奪還組には入らなかったんですか」
リリーがそっと聞いた。
百花は穏やかに目を伏せていった。
「入らなかったよ。誘われたんだけどね。
――怪物を殺してもみんなは帰ってこないから。
それに人間の方がやっぱり怪物だよ。怪物が怪物を殺したって何にも残らないよ。」
その言葉はリリーの胸を優しく刺した。
御幸もリリーも同じことを考えていた。
愛奪還組は報われないのか。
幸せになれないのだろうか。
愛をとり戻せないのだろうか。と
どうして大切な人を失った。その事だけは
百花と同じなのにどうして私達はこんなにも
苦しまなければならないのかと。
百花は目を伏せた。そしていった。
「またおいでよ。一人の時間が長いとやっぱり寂しいや」
百花の目には寂しさが歪んでいた。
「はい。また来ます」
2人の声が重なった。
傷は癒えることを知らない。
それは愛と同じで戻ることは。取り戻すことはできないのだ。
百花は百合の花を見ていった。
「どうか千晴の花が白く咲き誇っていますように」
百花の表情は優しく明るく。でもどこかで痛みを孕んでいた。
リリーと御幸はまた歩き始めた。