「生きてるー?」
「だ、大丈夫ですか…?」
⁇?「トウカァァァァァァ! 来てくれたんだねぇ!? よかったよっ!!!」
「落ち着け変態。」
早速大声で歓迎してくれたのはアルカ。
変態だ。
「あ…ぇ…。?」
「うわお」
ベルソーとヒスイは突然のご登場に驚いたようだった。
「今日は何しに来たんだい!?」
「調べ物」
「それってさ、3人目の転生者の話ぃ!?」
「うん」
大声で問い詰める。
腐っても、ここは図書室。
そこで大声を出すコイツはどう見ても場違いである。
何コイツ薬でもキメちゃった?
いつも以上に頭おかしくなってるわね。
「温度差すげぇな」
「ね……」
「白い方は疲れてるんだろうな」
「あ! お友達も来てたんだ! どうぞどうぞ! 今お茶入れるね!」
ようやく2人の存在に気づいたのか、お茶を入れてくれるらしい。
そう言って、急いで台所へと走っていった。
騒がしい奴……
「んー……勝手に漁りますかね…」
アイツの使っている、引き出しを開けたり、本棚を覗いていると、
「お待たせっ!」
台所から、カップの限界まで紅茶を注いだ
お盆を抱えてお茶の用意していた。
「さ、どうぞ! あ、これはトウカの分ね!」
「は?」
彼が指さしたのは、他のものとは色が全く違い、異臭を放つティーカップだった。
は? なにこれ……これって飲み物なの?
この世の終わりみたいな色してる……
私だったらこの紅茶にダークマターって名前つけるわよ……?
「な、何が入ってるのよこれ……」
「これは……不味そうだな……」
「……なにこれ……」
2人も、私の紅茶を見つめながら、ポカンとしている。
???「あぁ、これね! 僕が三徹目くらいに作った薬! ぐっすり眠れるよ!」
「え、遠慮しとく」
「そっかぁ……なら、これ貰うね!」
そう言うと、彼は、私のティーカップを手に持ち、それに入っていた、ダークマターを一気に飲み干した。
やっぱりこいつ変態だわ。
「お、意外といける……」
「え、えっと……お名前は?」
こいつの変態っぷりに若干引き気味のヒスイが
尋ねる。
「え? あぁ! そういえば、自己紹介がまだだったね! 僕の名前は、アルカ!よろしくね!」
「あ、あぁ」
「よろしくお願いします!」
「あ、そうそう! 他にも紹介したい人がいるんた!」
新しいペットでもいるのかしら……
アイツに友達なんていないもの……
「ほらほら! こっちに並んで!」
???「はぁ……? なんでだよ……」
???「……」
文句を言いながら現れたのは、見覚えのある1人の少年、見覚えのない少年だった。
「あ、アンタは……」
「おっ、お前は昨日の夜の! アルカの友達だったんだな!」
「この人の事、知ってるのか?」
「昨日会った!」
「紹介するね! 脳筋の方が、ラン! 青いのがアオトだよ!」
「誰が脳筋だよ! ぶっ飛ばすぞ!」
「そういう所だぞ、脳筋。」
「あぁ?!」
「それで、こちらが……僕の彼女!」
「は?」
「え?」
「……」
アルカが彼女と言ったそれは、綺麗な女性の人形だった。
球体関節人形と言うらしく、とても細かく動くらしい。
「か、可愛いですね! お名前は?」
ヒスイは人形の登場に動じない。
そしてここでもヒロインっぷりを発揮するヒスイ。
ほんとに気持ち悪い。
「えっとね、エメって言うんだ!」
「はぁ……」
「かわいい!」
「そろそろ本題に入ってもいいかしら…?」
「あ、そうだった! いいよいいよっ! 聞かせて!」
ーーーーーーー
そこで私は、3人目の転生者のことを話した。
話が進むにつれて、ベルソーとアルカの顔が曇って行くのがわかる。
そうよね……みんなの大好きなヒスイがいじめられているんだもの。
みんな助けたいのよね、ヒスイのことを。
私じゃない。
ーーーーーーー
「んー…そうだなぁ…僕が考えるに、そのアイラっていう奴はみんなのことを『洗脳』してるんじゃないかな…」
アルカは腕を組んで、意外にも真剣に考えているようだった。
「せ、洗脳?」
「うん。 多分ね」
「洗脳を解くにはどうすればいいの?」
「殺す。」
アルカは先ほどと変わらない表情で続ける。
「話を聞く限りだと、結構強力らしいからね。 殺すしかないと思うよ」
「そう、じゃあ殺しましょ」
即答。当然よね。「私の」親友をオモチャにされたんだもの。
「でっ、でも! みんなを洗脳したのは許せないけど……でも…殺すのは…」
「……嫌なの…?」
「…みんなを助けたいなら、その気持ち悪い考えを捨てなさい。」
「ぇ……」
「アイラを殺せないなら、私は協力しない。」
「わ…私は………わかった……アイラちゃんを…殺す…」
震える声で、そう答えた。
これも面白そうね……悪女を殺したとき、あの子はどんな顔をするのだろうか……どんな顔で泣くのかな…
楽しみ…
「そう、ならいいわ。協力してあげる。」
「それじゃあ,早速作戦会議だね!」
興奮気味に作戦会議を提案するアルカ…
子どもじゃないのよ…
ーーーー
仕方なく参加した作戦会議で決まったことをまとめると、
・洗脳を解くために、アイラを殺す
・ベルソー達は、洗脳された振りをして、いろいろと調べる。
大したことは決まらなかったわね…
「もう遅いから、みんな帰ろっか…」
アルカが時計を見ながら言った。
気づけば、時刻はもう8時。
かなり長い間ここにいたらしい。
日も沈み、カーテンの外からは月明かりが覗く
ベルソーが大きなあくびをしながら荷物をまとめていた。
「ヒスイ、確かお前の家って、近くだったよな? 俺が送っていくぞ?」
「え…いいの?」
ベルソーはヒスイに笑いかける。
「あぁ、アイラにあったら危ないだろ?」
「あ、ありがとう…!」
「今日はありがとう。また来るわ。」
一応、お礼を言っておいた。
「うん…!いつでもどうぞ!」
若干頬を染めながら、笑顔で手を振る。
私はアスカに軽く挨拶をして、家へと帰った。
NO side
「いやぁ…まさか僕が徹夜してる間にそんなことがあったなんてねぇ…」
トウカが帰った後、静かになった研究室兼図書室では、後片付けと、研究の資料のおかげで、またもや徹夜を強いられるアルカの姿があった。
「会議の内容、トウカから聞いたのだけど」
突然、図書室に現れたアスカが言った。
「洗脳される人とされない人の条件ってなんなのよ」
「気に入った人…とか?」
アルカがそう答えると、アスカは声を上げて笑った
「それじゃあ、作戦は上手くいかないわねぇ」
「??」
「なんで?」とでも言いたげなアルカに、
ため息を吐きながらアスカは言った。
「洗脳されたフリをするのでしょう? どうして、“好みじゃなかった”奴らが洗脳されのよ?」
「あ……」
「しっかり考え直すことね。
洗脳の条件から。」
そう言うとアスカは部屋を出ていった。
「……そんなことより、今はこの研究でしょう? ほら、頼まれてた資料ですよ…」
アオトは呆れたように、書類の束を机の上に置く。
「えぇぇ…この研究つまんないー」
アルカは机に突っ伏し、自分の研究に文句を言っていた。
「はぁ…俺だってやりたくないです。」
書類の束を抱えたアオトも文句を零した。
「俺もこの研究嫌い。」
台所で洗い物をしていたランがひょっこりと顔を出して言う。
「だよねぇ!ランも嫌いだよねぇ!?」
「きらーい」
「じゃぁ、もういいや! この研究やめっ!」
椅子から立ち上がって、机の上の書類をシュレッダーにかける、
その様子をランはポカンと眺めていた。
アオトに関しては額に手を当て、うんざりした様子。
「アンタ達、まだいたのね…もう寝なさいよ…」
ナイトキャップにパジャマ姿のアスカがやってきて、大きくあくびをする。
「……トウカ、明日も来ると思う〜?」
「知らないわよ…ささっと寝て。なんでそんなこと聞くのよ…」
「トウカがコイツの想い人だからー」
ランがそう言った瞬間、アルカの顔が一気に赤くなる。
図星だったのだろうか。
「もう寝る! おやすみっ!」
「本当に騒がしい奴………
貴方達ももう寝なさい。片付けはやっておくから。」
「へーい」
「おやすみなさい…」
アスカ以外、誰もいなくなった部屋に、時計の針の音が響く。
ー今宵、彼らの演劇ショーが始まったのであった。
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