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エゴイストらの末路

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エゴイストらの末路

1 - エゴイストらの末路

♥

866

2024年09月09日

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注意⚠️




史実表現あり




過激な表現あり











支部に上げた只管に私の性癖を詰め込んだだけの愚作です。

簡単に言えば日さんが只管に『正しい』選択を選んでって『幸せ』になる話です。

やっぱりシアワセっていうのは人それぞれありますからね。例えそれが、周りからみて地獄のようなものだったとしてももし本人にとって幸せであるならほうっておくのがいいのか、はたまた『エゴ』を押し付けるのがいいのか…まあ難しく言えばそーいう話です。結論、国という存在は何処までも貪欲なものであるということですね!!





ではそれでよろしければどうぞ、ご覧ください!!





































「…………………………………………………………………………………」































血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血
















「…はっ…ははっ…あ、ははは…はははははっっ!!!!」














遠くで狂ったように乾いた笑い声が響く。












笑う









嗤う









わらう











もう楽しくて、愉しくて…!たのしくてっ!!仕方がないのだ。

何がおもしろいのかなんてわからない。

しにたくて、しにたくて仕方がない。

わらっていないと、本当にしんてしまいそうで私は狂ったようにわらうことをやめない。

否、やめられない。

止めどなく自分の口から溢れる高笑いは最早自分では制御できなかった。


















「あはははははっ!!!!!!!!!はははっ、アッハハハはッッッ!!!!!!!!!!」














悲痛な叫び声とも呼べる嗤い声が響き渡る。













ああ、たのしい













たのしい、たのしい、たのしい、たのしい、たのしい、









おもしろい。












何が、楽しいのかわからない。

何が、面白いのかわからない。

それでも感情が昂ぶるがままに刀を肉片に突き刺す。











何度も










何度も何度も何度も















グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!

















「んはっ!!!!ふふ、はっはははっ…あはっ!アハハハハハハハハハっ!!!!!!!!!!!!!!!!」













グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!

グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!











グサッ!!!!!!!!!!!!!!!














ぷしゅっ、と噴水のように血が噴き出す。

血が、肉片が、飛び散る。

びちゃっっっ…!!!!

それらが顔に付着しても何の感情もわかなかった。

手にも、顔にも体にも猟奇的なまでに血にまみれている。

駄目だとわかっていても口角が上がるのを止められない。

こんなこと、おかしいことはわかっている。

それでも、全身の血という血の昂りは抑えられない。

今は只々、心地よかった。

『満たされて』いた。

今まで、この空虚を埋めるために、『満たされる』為に…祖国の『一番』になるために狂ったように働いてきた。

働いて、働いて、働いて、働いて、働いて、働いた。

祖国の為ならなんだってした。

祖国に認めてもらうためならなんだってした。

もう私には祖国しかいなかったから。

その結果が『コレ』だ。

このザマだ!!!

もうとっくに狂っているのだ。

私もアイツラと同じ。

人を殺すことに快楽を感じて、人の血を浴びていないとまともに息もできない。

どうして『こう』なってしまったのか。

最初からそういう、運命だったからだ。

もう自分がやっていることが正しいことなのか、何が正しくて、何が間違っていて誰がおかしいのか、

わからない。わからないわからないわからない。

それでも今は、只、只











血が、











断末魔が、










泣き叫ぶ声が、












恨み言を叫ぶ声が、










睨みつけてくる目が、























すべてが…………っ!!!

















心の底から心地がよかった。



















皮肉にも『今』この瞬間がこれまで生きてきた中で一番、楽しかった。面白かった、生きることに喜びを感じた、満たされていた。シアワセだった。こんなに笑ったこともこんなに楽しいと感じたことも人生初めてのことだった。

ずっとずっと求めてやまなかったものだった。

今まで死に物狂いで守ってきたのに罵詈雑言ばかりのたまった国民を殺すという行為になんともいえない背徳感が私を更に昂らせる。

人生とは何が起きるか分からないものだというが全く持ってそのとおりだ。現に、私は祖国を裏切ってかつての同胞を殺して快感を覚えているのだから。










「ほら、見てくださいよ…っ!!父上、お祖父様、祖国…っ!!!」










くるりと積み重なる骸の中で踊るように一回転して何も言わずに私を見ていた3人を向いた。しかし、肝心の顔は目の部分に黒いノイズがかかっておりその表情を伺い知ることは叶わなかった。



















「私、今とっても幸せです………っ!!!」



























それは、嘘偽りのない紛れのない本音だった。








































































































戦争に負けた。











思えば、全てはそれから始まったことのように思う。

それはまるでガンッ!と重い鈍器で殴られたような衝撃だった。僕は祖国の敗戦をラジオから流れる玉音放送を聞いて知った。

何かの間違えであってほしかった。

負けることなど、一ミリも考えていなかっただけに当時の衝撃は大きなもので今でも鮮明にその時の匂いや背中に伝った冷たい汗までを思い出せる。

まず、最初に思い浮かんだのは父上や叔父上のことだった。そして、次に考えたのはこれからのこと。

父上や叔父上は死んだのだろうか????

これから、この国はどうなる………???

これから、僕たちはどうなる……?

そんか先行きが見えない漠然とした不安に自然と視線は母上の方に行った。

母は幼い妹妹を抱いて泣き崩れていた。

「ごめんなさい…ごめんなさい…っ!!!」

それにちくり、と心臓に針を刺された感覚に陥りその後にキュッと鷲掴みにされ多様な気がした。

嗚呼、『また』だ。

あの植民地や妹が父や母、叔父達と一緒にいるのを見るとこういった症状に見舞われた。

『いつも』のことだ。

僕はそれをいつもどおり無視を決め込んだ。

慣れればこんなものどうとも思わなくなるから。

何とは言わずとも何に対しての謝罪かは言わずともわかった。壊れたラジカセのように強く妹を抱きしめて悲痛に身をすぼめて謝る母の姿を見て僕は呆然と思った。










僕が、母と妹を守らなければいけない。







僕が、この国を守らなければならない。












この時、僕は誓った。

例えどんなことをしてでも『私』が祖国を守ろう。



















齢十八歳 ✕✕✕✕✕ が『日本』になった瞬間だった。

































それから、私が父のかわりに『日本』として降伏文書に署名してアメリカの占領下になった。

約七年間、それは耐え難い屈辱だった。

GHQによって内側から壊されていくのを、アメリカの傀儡になっていくのを私は只見ていることしかできなかった。

勿論、それは私とて例外ではない。寧ろ私が狙いだ。

祖国とは一度も面会も許されず、七年かけてじっくり『教育』をされた。

それでも、七年で済んだのはまあ早いほうだろう。

執拗に壊してくるから慎重深いかと思えば、やはり楽観的なところはお国柄だろう。

洗脳されたふりをしていればあっさりとそれを信じて解放された。本当に馬鹿な奴らだ。

まぁ、そんな奴らに負けたのかと言われれば耳が痛いが…

しかしここまで入念に壊されれば立て直すのに時間がかかるだろう。






まだまだ、私の困難は始まったばかりだった。





















































母が死んだ。

原因は病気らしい。

それも従兄弟…妹からの連絡で知った。

妹は泣いていた。

本当の母親ではなけれども、生まれてからずっと母に育てられてきたのだ。あの子にとっては母親同然だったのだろう。

私は何も思わなかった。

只、「そうか」とかしか言葉が出てこなかった。

葬儀の日は大切な会合があって出ることはできなかった。

それを淡々と業務事項のようにその旨や葬儀の事務的な内用を伝えると『妹』は突如耳がつんざくほどの金切り声で叫んだ。

「どうして、お母さんが死んだのにそんなになんともないことのように言えるのっ!?こんなのあんまりよっ!!!

お母さんが可哀想じゃないっ!!!あんたお母さんの息子の癖になんでそんなことが言えるのよっ!?!?!」

あぁなるほどな、私はそれを聞いて酷く腑に落ちた。

母はこの子のような『娘』が欲しかったのだ。奇しくも、妹は母と似ていた。顔立ちも、その自分よりも人を思う自己犠牲的な性格も。きっと、最期のときはあの子のこれからを案じて逝ったに違いない。元に、残された遺書はあの子や元植民地を思うものだったらしい。それを聞いても私は特に何も思わなかった。

だって当たり前だろう。

私は男だから。

私は祖国の顔なのだから。

私はもう立派な大人なのだから。

あの子や元植民地は庇護されるべき女でまだ子供だ。

全部『当たり前』の事なのだ。






それと比べるなど守るべき『大人』がすることではないのだ。
























































「そうやって済ました顔してられんのも今のうちだぜ?

近い将来、そっちの祖国サマのお気に入りの妹にとって変わられたらあとは此方のもんだ。」








ぴくり

負け惜しみのようにはっと一笑した米国がそう吐き捨てた。その言葉に絶えず口角を釣り上げていた表情筋が僅かに動いた。その、僅かな動揺を察してかアメリカはあたかも鬼の首を取ったかのように自信満々に畳み掛けてきた。







「気の毒になぁ!お前は誰よりも身を削って国の為に働いてんのに祖国にも身内にも見向きもしてもらえてねぇ。挙句の果てに全部妹に持ってかれてんだ!しかもあーなんていうだっけ…ほらお前んとこの元植民地。妹だけじゃなくて元植民地の方もお前の父親と母親だけじゃなくて祖国にも可愛がられてるらしいぜ?因みにこれお前の妹情報。なのに、お前。屋敷に入る許可すらもらってねーんだろ?ここまでくると、お前………」







































「その話、今関係あります?」













ニコリ、と論すようにそう言ってやればアメリカは静かになった。

まったく…この男は何か喋っていないと気がすまないのか?













「議題に関係のない話は慎んで下さい。貴方、いくつですか?さぞ、偏った教育を受けられたようで」














正論を言われてこめかみが筋立ったのを見てはっと笑った。

あの子の話を出せば私が動揺するとでも思ったのか?

だとしたら、あまりにも思考が短絡的すぎる。

やっぱりあの父親そっくりだな。

そこまで考えて一旦思考を切りあげた。

一同を見渡して、会議をに戻る。










「では、……………」








































































































がっっっしゃんっっっっっっ!!!!!!!!










「………はぁっ………はぁっっ……すぅっ…」







暗闇の中、酷く憔悴した青年が動揺を顕にしていた。

それは普段のいかなる時も冷静かつ沈着な彼からは想像もつかないほど荒れきった様子だった。何時も凪いている瞳は瞳孔がカッ、と開ききっておりおぼろげに揺れている。普段きっちりと整えられた髪も今はボサボサだ。それが青年の激しい動揺を明瞭に表していた。気を落ち着けるように何度も大きく深呼吸を繰り返す。

床には様々な大きさのガラスの破片が散らばっていた。赤い筋がつぅーっと拳を伝って不規則に落ちて真っ赤な水玉を作り出す。なんとか、気を落ち着けようともう一度深呼吸を繰り返す。しかし、頭の中に反芻するのは数時間前のアメリカの発言だ。








「……………………………………………………はぁっ…?」










その言葉に全てが詰まっていた。








あんな言葉、私を崩すだけの虚偽であると言いたいところであるがあれがが嘘ではないことくらい少し考えればわかることだった。それが、わからないほど冷静さを失ってはいない。妙に残る頭の中の冷静な部分は言う。








これは、祖国から私への裏切り行だ。









今まで死に物狂いで、祖国のために、尽くしてきた、私への、違背。

嫉妬と、憎しみで、自分でもよくわからない感情で、頭がぐちゃぐちゃになって本当に頭がどうにかなりそうだった。

『完璧』でいかなるときも『冷静沈着』とした『日本』がガラガラとオトを立てて目の前で崩れていく音さえした。











「………なんで………………なんでなんでなんでなんでなんで…っ…!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」














それは、即ち私の存在否定と言っても過言ではない。

私はらしくないとわかっていながら、ヒステリックに声を次第に荒げた。










お前はもういらない。

暗にそう言われているのと同じことだ。

文字通り命を削って祖国の為に働いてきたというのに。










あのこの…あのこたちの何処がそんなにいい?










ふと頭にそんなことがふと浮かんだ。

何をとっても、私より劣る。

しかも女。

しかも子供!

いままで、私が必死の思いで積重ねてきたものをあっけなく奪ってゆく何もできない女子供。










誰よりも、貴方を愛してきたのは私なのに。












誰よりも、貴方に尽くしてきたのは私なのに。
















誰よりも、貴方達の期待に応えてきたのは私なのにっ!!




























「…どうして……っっっ!!!!!!!!!!!!!」



















ガッッシャァン!!!!!!!!!!!!!!!!!









洗面台の横においてあったヘアーアイロンやらあの子の所持物が地面に激しく散乱する。

そんなものには、目を触れずに吐息を震えさせて荒く雑に息を吸い込む。

嗚呼…今こうしている間にもあの子は今頃父らと共に温かい食事をとっているのだろう。きっと幼い元植民地のも一緒にいるに違いない。

私は許されていないのに。

図々しく、私の父上と母上に挟まれて、父上に『あの』優しい笑顔を向けられて母上に口元を拭ってもらってのうのうと笑っているのだろう。

私はそんなこと一度もされたことないのに。

あの子は祖国の隣で、祖国と一緒に他愛のない話をして笑っているのだろう。

心底幸せそうに…っっっ!!!!!!!!!
























「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛っっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」








































がっっっっっっっしゃぁんっっっっっ!!!!!!!!















「なんでっっっっっぅ!!!!!!!!!なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで、

どうしてぇ…ッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」









そこにおいてあった『妹』の物々が無惨にも地面に叩きつけられていく。

日本は手で顔を覆い、最早悲鳴とも言える悲痛な声で絶叫した。指の隙間から見える目はぐるぐると様々な感情が入り乱れており、叫びすぎてカスれた声の大きさと比例して次第に瞳孔がぶれが激しさを増していく。外交のためにあんなにも喉を大切にしていたのにもかかわらず、その声はガラガラでかすれきっておりそれでも感情の昂りと共に尚無理矢理声を裏返らせながら恨みとも取れる言葉を並べていく。まるで、もう全てがどうでもいいというように。




















「私も、✕✕の人間なのに…っ!!!!!!!!!!」



「私は、貴方達の息子なのに…っ!!!!!!!!」



「私は、長男なのに…っ!!!!!!!!!!!!!!」



「私は、誰よりも優秀なのに…っ!!!!!!!!!!!」



「私は、誰よりもあなたたちの期待に応えてきたのに…っ!!!!!!!!!!!!」




「私は、誰よりも頑張ってきたのにぃ…っっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


















「私は誰よりも…ッッッ!!!!!!!!!!!!!」











最後の方は、まるで喉から声を振り絞るようにそれを吐き捨てられた。はぁっ、はあっ、と肩を上下させて呼吸を繰返す。

ふらっとした足取りで壁に身を預けて、そのまま電池が切れたように片足だけ立てた体勢で地べたに座り込んだ。
































「……………………ぼくが、だれよりも…あいしてるのに……っ」





























それはまるで何かに怯えるように子細いものだった。

先程の激情とは打って変わって道に迷う小さな子供のようにか細い声で隠すように顔を覆ったまま、確かにそう呟いた。両手の隙間からは水滴が絶え間なく落ちていった。それは重力に従って落ちていくだけで嗚咽一つ漏らさない。只々、それを茫然自失した様子でそれを見つめているだけだった。まるで、泣き方をしらないように。

それは誰が見ても『危うい』状態だった。

その理由は仮に誰かが見ていたのなら、誰が見ても明確だっただろう。

今までかろうじて堰き止めていた彼を支えていたものが消えたのだ。

それによってずっと押し殺してきたものが溢れ出し暴走したのだ。当然とも言える顛末である。

その異常なまでに屈強な精神の『核』が壊れたのだ。

『無条』に信じてきた祖国からの『裏切り』

彼が生きる理由としていた存在からの事実上の拒絶。

それが、壊れた以上もう歯止めはきかない。

何故なら、彼には彼を支えるものが『核』しかなかったからだ。通常何本もの核があるものが、この『少年』には一本しか持ち得ていなかった。

故に、その大黒柱は何をしても今までけして折れることはなかったのだ。

そして、彼の精神的年齢の低さにもそれは起因する。

正直言ってそれは体だけ大きくなって、無理矢理大人になった状態と言っても過言ではなかったのだ。

まだこの時点なら間に合っただろう。

しかし不幸なことにその痛々しい様子を見ているものは誰もいなかった。



























































どうして誰も私を見てくれない……?










どうして誰も私を褒めてくれない………?









どうして誰も私に微笑んでくれない…………?










どうして誰も私の頭を撫でてくれない……………?









どうして誰も私を抱きしめてくれない……………………?












どうして誰も私を愛してくれない…っ!?!?!?






























あくまで、祖国は平等である。

ずっと、そう信じてきた。

私のことも、例え誹謗するだけの他大勢と同様に愛される。

祖国は平等でなければいけない。

いつもいつもあの子や植民地の子供たちの方を父も母も叔父も見ていた。

当然だ。

だって、僕は男で、父の後継者で、兄だから。

同じことを求めることはおこがましいことだ。

傲慢なことだ。

そう。全部当たり前なのだ。

我慢、出来て、当たり前なのだ。

でも、祖国は違う。

祖国は平等に私のことも愛して下さる。

祖国だけは。

私を見てくださる。

しかし、烏滸がましくても醜くとも傲慢にいずにいずにはいられなかった。












だって、私が一番貴方に尽くしていたのだ。









だって、私が一番父上方の期待に答えてきたのだ。









だって、私が一番我慢してきた『いいこ』なのだ。












私には、もう祖国しかいなかった。

だから祖国の為ならなんだってした。

貴方の寵愛を手に入れるためならなんだってした。

あの、アメ公にヘラヘラと媚売って朝鮮のやつらにも下手に出てやった。どんな屈辱も侮辱を受けようとヘラヘラ笑って見過ごした。

だって、他でもない貴方が『平和』を望んだから。

私は他のやつはとは違うから仕方がないのだ。

だって、私は祖国の『特別』だから。

私は、祖国の『唯一』なのだ。

必死にそう信じて疑わなかったから私は今まで立ってこられた。

しかし、『祖国の為』そんなもの結局都合のいい言い訳に過ぎなかったのかもしれないとふと思った。

只、その大義名分を私は利用していただけだった?

自分の快楽の為に。

他でもない私が最初に祖国を裏切っていたのではないか。

だから、祖国はたとえ私が何をしても褒めてくださらなかったし、私だけを愛してくださらなかった。

だから、父上も母上もお祖父様方も私を認めてくれなかった。

だから、祖国は私を捨てた。

そう、考えれば辻褄が合う。

それがあの子たちと私の違いなのかもしれない。

ぼーっとした頭でそんな事を考えた。

あとに残ったのは、どうしようもないほどの『空虚』だけだ。

今の時代は男女平等。

父親が絶対だとか、長男が後を継ぐとかそういう古臭いものは段々と忌み嫌われつつある。

私が此処に立ったときとは違う。

寧ろ、あの子のほうがよっぽど今の時代の『日本』に合っている。それに祖国との信頼も深いようだし、人の懐に入り込むのも上手い。

もう、私の役目は終わった。

私はあの子までの只の繋ぎにすぎなかった、

私はもう必要無いのだ。

だから結局父上や母上からも、叔父からも、先祖らからも、祖国からも。私は結局誰からも認めてもらえなかった。

期待なんてされていなかったし、眼中にすら入れなかった。

あいしてもらえなかった。

なんとか祖国を立て直そうと…なんて、聞こえのいい言葉は紛い物だったのだ。

心に巣食う空虚から目を背ける為の、残された従兄弟や母から距離を置くための、卑しくても祖国を独占するための、言い訳だったのだ。

そんなことに、自分でも気づかないで祖国のためだと自分に言い聞かせてあんなにも我武者羅に働いてきた。父が、先祖が守ってきた祖国を、なんとかこの国を立て直そうという大層な大義名分を利己の為に私は『利用』してきたのだ。

あぁ…そうだ。きっと、そうに決まっている。

そうなのだ。

そうじゃないと、説明がつかない。

全部全部全部私が悪いのだ。







「ぜんぶ、わたしがわるい」
































































































































だから、私は祖国も一族も誇りも全てを捨てた。





















































全部全部全部全部

捨てた

祖国を捨てて、新しい『祖国』の手を取った。

『祖国』の前に膝をついて、忠誠を誓った。

『父上』の前に膝をついて、服従を誓った。

命令されれば、どんな人道を外れる行為もしてきた。

女も、子供も老人も命令されればみんな殺した。

例え、身ぐるみを剥がされようが私は抵抗を許されなかった。

だから、元同胞も殺した。

だって、命令だったから。

私はあの人の『特別』ではなかった。

私はあの人の『唯一』じゃなかった。

私は『必要』とされているわけではなかった。

祖国が選んだのは『私』ではなく『あの子』だった。

けれどそれでも。

私は元国民として、一族の末席として私に出来ることならこの命をかけて、何だってする所存だ。

例え、祖国への想いが全て偽りだったとしても反逆者だと後ろ指を刺されたとしても、待ち受けるのが先が地獄だったとしても。

私は、祖国の為に道化を演じよう。

それが、私の唯一の誇りであり義務である。

私が私である以上、それは曲げられない。

例え、祖国から見捨てられた身だとしても。

例え、それが利己からくる偽りの感情だったとしても。

例え、祖国の国民じゃなかったとしても。

私は祖国のために、家のために、地獄へ墜ちる。

今なら確信を持てる。私は、こうなるために生まれてきたのだ。祖国を裏切って、血にまみれて反逆者となって『祖国』に膝を折るために生まれた。

例え、それが祖国に背くことだったとしても私は祖国が安寧と平和を手に入れられるなら喜んでしよう。

まるで薬物中毒者のように恍惚とした笑みを浮かべる。

頭が真っ白になって、何も考えられない。

今だけは、どうか快楽に溺れることを許してほしい。

そんなこと許されない。

お前にそんな資格はないと私の中の私がいう。

そうわかっていても縋らずにはいられなかった。

此処は地獄だ。

私は生して地獄を生きている。

このまどろみのまま静かに眠れたならどれだけ心地よいだろうか?









そう考えてしまう私はもう手遅れなのかもしれない。

ぼんやりとそう思いながら目の前の人物らを見た。











ザーッザーッザーッ














しかし、ノイズがかかったように目の部分だけが黒いモヤで見えなかった。

そのせいで、その表情を計り知ることはできない。







『帰れ。お前と話すことなど何も無い』






あの時の声がフラッシュバックする。

門の中にも入れてもらえずにそう言われて門前払いされたのは記憶に新しい。他の国々もいる手前であの元植民地を抱き上げた元父がまるで罪人を見るような目でそう言ったのだ。招かれざる客だと言うように酷い雨も降っていたことも相まって酷く惨めな気持ちにさせられた。

まあ、しかし今思えば当然のことだと思うが。今思い出しても正直あのときの私はどうかしていたと思う。

それを踏まえて目は見えずともが、どんな表情かはだいたい容易に想起することができた。軽蔑、非難、失望、憎悪。

前に見たあの軽蔑の眼差しを向けているに違いない。

思えば、この人たちの前にでこんなに笑うなんて初めてかもしれない。不思議と、内側は冷静でそう変に残る俯瞰的な部分で思った。

じっ、と目の前にいる元祖国を見る。そのうちにあるのは、子どもたちを殺された憤怒か、憎悪か、哀愁か、はたまた無か。

しかし、不思議なのは殺気がまるでないことだ。

隠しているとかそういう次元の話ではない。

そもそも、殺気が存在しないのだ。

死体に刺したままだった刀をズルっと引き抜いた。

それでも、殺気はない。

それどころか構えすらも取らない。

一体何を考えているのだろうか?

内心冷静な部分でそう考えながら、昂った気を抑えられずに感情のままに言い放った。









「今、どんな気持ちですか?」












ザーッ、ザーッ、ザーッ

嗚呼…………ノイズがうるさい。

にやにやと気色の悪い笑みを浮かべて言い放つ。












「ほらっ見てくださいよ…!!今まで、都合よく扱ってきた『代役』に裏切られてどんな気分です?」


















ザーッ、ザーッ、ザーッ、ザーッ、

変な気分だ。内と外がチグハグ過ぎて切り離されたような気分だ。

気味が悪いようにみえるように、けして表情は動かさない。
















「ふふふっ…嗚呼、どうせなら貴方達が後生大切に大切にしまってきた子どもたちも連れてきたらよかったのに。」














目を細めて、口角を釣り上げてみせる。

そして、たっぷりともったいぶってからなるだけ声を低くするように意識した。




































































「そうしたら、殺してやったのに」





















わらう、笑う、嗤う、ワラウ、わらえ












































「オマエラの目の前で、じっくり、嬲り殺して見せたのに」
















































如何にも、『悪役』らしく私はそう言い放った。

しかし相変わらず表情は伺い知れないのでどんな心境かまったくわからなかった。

殺気くらい出してもおかしくはないと思うのだが、それだけ此方を警戒しているのか全くと言っていいほど微動だにしない。此処まで静かだと逆に気味が悪くなる。

暫く様子を眺めていたが、向こうは一向に動く気配がなかったのでそれを破るため、私は口を開いた。


















「………さて、茶番は此処らへんにしておきましょうか。

あまり遊びすぎては祖国に叱られてしまう」
















心なしか此処でやっと空気が揺れた気がした。

ニコリ、外行き用の笑みを貼り付けて心にもないことを言いやった。

我ながら反吐が出るセリフだ。

気色が悪い。

どうやらようやっとアドレナリンがキレてきたらしい。

外と中のがリンクしてきた感覚にほっとした。

先程まではなんだってできそうに思っていたのにとにかく体がだるい。つかれた。コレ以上此処にいることを拒むようにガンガンと脳が拒否反応を起こし出す。ノイズはいつの間にか先程より酷くなっていた。依然としてその顔も見えないままである。

…こんなことなら、余計なことをせずに、早々に撤退すればよかった。先程までたのしくてたのしくてしかたがなかったのに、一気に現実が押し寄せてきて猛烈に死にたくなった。





………もういいだろう。任務は十分すぎるほど果たした。駄目出しを食らうことはないだろう。

もう、帰ろう。

私の、祖国へ







先程まで振り回してた刀身を鞘に収める。

この人たちも『私達』と揉め事を起こすのは出来るだけ避けたいはずだ。平和的解決ができる可能性があるならそれを逃すことはしないはず。

伊達に長い間、この人の国民だったのだ。この人の考えることはよく知っていた。

だから、こうともいえば深追いはしてこないだろう。













「では、元祖国、元身内の皆様、御縁があればまた。…まあ、もう二度と会うことはないでしょうがね」
























仕上げとばかりに嘲笑を滲ませていいやった。

これで、幕は降りる。

私はそう確信を持って元祖国一行の横を通り過ぎる。

コツコツ、と軍靴を響かせながら。































































































































































































「…………、は、?」










































何が起こったのか、理解するのに数秒を用いた。















































刺された。

















つよく、つよく

その細身からは想像もできないくらいの力で。










































……………………なにが……………何がおこっている……?


















「…………な、にを…」























コッポ…ッ!!!!





血が喉にせり上がってきて抑えきれずに血を吐き出した。口端から血が垂れ落ちる。









短刀で深く刺された脇腹からじわじわと血が黒い軍服に染み込む。そして、その血が刀身、柄とつたって祖国の両手を血で真っ赤に染めた。今の私の両手と同じように。











駄目だ。











許されるわけがない。










こんなことが、許されるわけがない。












なんとか、混乱から抜け出して体を剥がそうとするがぐっと刀身を押し付けられ一進一退の状態だ。驚くほどぴくりとも動かない。

何故?

何をしているんだ?この人は??

思考が読めないと言っても、此処まででは無かった筈だ。

やけにでもなったか?

いや…一時の感情の昂りでこの人はこんなことをする人ではない。しかし、これはあきらかな『悪手』だ。動脈を外してるあたり殺す気はないようだが…。

『この人』が『私』を刺した。

それが、どんな意味を持つかなんて元祖国が一番わかっているはずだ。それでも、離れようとしない元祖国にも一切動かない元父親と元祖父に得体のしれない恐怖が湧き上がる。

















「…っ、な、なにを…しているんです…っ!!!今の、私にこんなことを…して……っ…はぁ…っ…これが、どんな意味を持つか…それが、わからない貴方ではないでしょう……っ!?」



















そう言っても私を抱きしめる力は一向に緩まない。寧ろ、強くなる一方だった。益々意味が分からず焦りが積もる。思わず舌打ちが漏れた。額に脂汗が滲む。

ああ…なんで…



















なんで…………っ












どうして…………っ!!!!!!!!


























































「何を、そんなに…っ!自棄になっているんです……っ!!貴方が今すべきことはこんなことでは…っ!ない、と、ゴボっ…!!!ゴホッ!!!他でもない…っ!あなたが…一番…!わかっている、はずだ………っ!!!貴方が今っ!!!することは、あの子達のところに行くことだ…っ!!!!!!

その手は、こんな、ことじゃなくてあの子達を抱きしめる為に…っ!!っ…はぁ…!…あるんでしょう…っ!?」



















出血が多い。

急速に血液が失われていってクラクラしてきた。

息が切れながら、正気を取り戻せと暗に言っても尚、何の反応も示さない元祖国と元身内に先程の静かさに相まって不気味さが高まっていく。
































「……ゆ…………せん」



























そこで、やっと元祖国がポツリと言葉を漏らした。

しかし肝心の中身は聞こえなかった。

積もっていく焦りを振り払うように私はもう一度言う。













「…たかが、数✕人でしょう?…なにを、そこまで………」
























「許さない」


















今度は、しっかりと聞こえた。

その冷たい声音にゾクッと背筋に冷たいものが走った。

それは地の底を這うような冷たい声音だった。
































「…許しませんよ…私の、元から去るなんて……絶対に、許さない。」












































ザーッ、ザーッ、ザーッ、ザーッ、ザーッ、ザーッ




元祖国は今にも破裂しそうな激情を抑えるように、言い聞かせるように緩慢に、そして言葉を区切り区切りぶつぶつと呟く。
















「…私達が、間違っていました。私は…私達は、もっと……貴方を…………………………」










「…破滅的な自己犠牲的行動。貴方がその兆候を見せた時点で…私が貴方を止めてやるべきだった。

私は……目を、瞑ってはならなかったのに………」























私はこの人が何を言っているのか理解できなかった。

一体何を企んでいる?

時間稼ぎか?

それとも、油断させて殺す気か?

しかし、それはこの世界にとって明らかな悪手である。

この人がそれをわからないはずがない。

なら、人質にでもする気か?

帝国相手に?

ぐるぐると思考を働かせるがいずれにしても納得のいくものはない。その間にも元祖国は続ける。


























「貴方なら、大丈夫だろうと…私達はそう、貴方に甘えてきてしまった。…まだ、十八と幼かった貴方に都合よく押し付けてしまった。この子ならきっと大丈夫だろうと。賢いあの子ならわかってくらるだろう。この子よりも国民の方を…妹の方を…植民地の子供たちの方を…。そう貴方を後回しにしてきた結果が、コレだ。」
























耳の横でぎりっ、と激しく歯が軋む音が聞こえた。

ゆっくりと祖国の体が離れていく。ずる…っと刀身も一緒に引き抜かれる。よろりとよろめきながら何度か吐血した。かろうじて膝を取るのを耐えて、元祖国を睨みつける.
























ザーッ、ザーッ、ザーッ、ザーッ、ザーッ、ザーッ、ザーッ、ザーッ、ザーッ





















ぼと………っ………………ぼと………………っっ…………


























「誇りもプライドも全てを自ら捨てて、血に塗れた軍服を身に纏って、貴方は今、地獄を歩んでいる。歩ませてしまった。あなたが唯一求めた助けを、私たちは『あの時』振り払ってしまった。

今更こんな事を言っても信じてもらえないと思いますが私達は、貴方を愛していました。誰よりも、何よりも貴方が愛おしかった。我々の期待に応えてくれる貴方が。誰よりも私を愛してくれた貴方が。何にも変えられないほど、大切だった。閉じ込めてずっと愛でていたかった。外なんかを見ずにずっっと私を見ていて欲しかった。そばにおいておきたかった。目に入れても痛くなかった程愛しく思っていました。何度も、貴方を囲うきっかけはありました。何度も、貴方を褒めて、抱きしめることはできた。それでも、私達はそれをしなかった。私達は貴方に幸せになって欲しかった。私達に縛られずに、幸せを手に入れて欲しかった。

貴方に幸せになって欲しかった。只、それだけだった。

だれもが、オマエの幸を願っていた。

………そんな傲慢ともいえるエゴが貴方を不幸にするとも知らずに。」














一拍おいて、祖国は瞳孔を開いて力んだ。

激しい悲鳴とも呼べる悲痛な叫び声が耳を劈く。






















「私達は、そんな幸せを望んでいたわけではない。

そんな『しあわせ』の為に私達はオマエを突き放してわけじゃない。

元祖国???巫山戯るなっ!!!!!

私からでていくなんて絶対に許さない…っ!!!

私以外を、祖国と呼ぶなんて絶対許しませんよ…っ!!!!

誰が何を言おうとも貴方は私の子です。私のものだ。

例え私を思ってのことだとしてもアレの元に行くなんて許さない…っ!!!、

こうなるとわかっていたら、私は………っ!!!!!

………他の世界の私のモノになるなんて冗談じゃない…っっ悪夢以外の何者でもない………っ!」














胸の内の不条理と不幸に激しく憤り嘆き、血反吐を吐くように吐き捨てる元祖国に私は呆然としていることしかできなかった。理解が追いつかない。この人は…一体何、何を言っている?














「こんなこと、せっっったいに許さない……っ!!!!!!オマエは、私の子だ…っ!!!!!!!

オマエをずっっっと見守ってきたのも、期待していたのも、愛してきたのも私達だ…っ!!!!!!!!!!!

他の世界の『日本』の『国民』になるだなんて絶対に許さない…ッ!!!!!!!!

他の世界の『日本』の命令に縛られるなんて絶っっ対に許さない………ッ!!!!!!!!!!」













その目に渦巻くのは確かに醜いドロドロとした執着と嫉妬という感情だった。激しく叫ぶ元祖国に私は思わず息を呑む。

わからない。

わからないわからないわからない。

この人は……この人は一体何、を……、……………、








ぐらっ、










次の瞬間、視界が揺れた。













まずい















どうやら出血を過ぎたらしい。

ここで、気を失うなんて失敗をするわけにはいかない、

そう頭では思っているのに、体は言うことを聞かない、








だめだ、












そんなことしたら


















そこくが、……
































暗転
















































































































































気絶した愛し子を抱きしめる。







目の前にいる返り血にまみれた子供をもう、二度と離さないように、強く、強く。

目の下には最後に見た時よりも濃い隈があり、肌が見える顔には頭や頬、目…その面積のほとんどに白い包帯が巻かれている。そして、それらは意図的に付けられたものだと見ればわかった。髪もボサボサで、どんな絶望的状況下でもけして消えることのなかったあの眩しい光も今ではなりをひそめて両目はどす黒く染まりきってしまっている。それだけで十分なほどにこの子が今まで受けた仕打ちがひしひしと伝わった。

もう一度、もう二度とこの手から離すまいとつよくつよく愛子抱きしめ直す。

先程のあの子の姿を思い出して歯が欠けるほど強く噛み締めた。計算し尽くされた『悪』らしい表情、言葉、振る舞い。骸の上で今までに見たことのない程に楽しげにわらう姿はいっそのこと神秘的でさえあって、まさにこの世の地獄であった。

誰よりも、大切で、いとしかった私たちの誇り。

誰よりも何よりも大切で大切で愛していた。

誰よりも何よりもこの子は私達を愛してくれた。

本当は閉じ込めて、ぐちゃぐちゃに愛でてしまいたかった。

けれどこの子には幸せになってほしかった。

だから、手放した。

だから、拒絶した。

一度触ってしまったら、一度受け入れてしまったら、歯止めが効かなくなるとわかっていたから。

私だけじゃない、この子の父を筆頭にした一族の人間は皆そう思っていた。

こんなにも私達を一途に私達の歪な愛を受け止めて、返してくれた子は初めてだった。

私たちは歓喜した。

自慢すぎる私たちの誇りとも言える子。

だからこそ、手放した。

怖かったのだ。

壊してしまうのが、拒絶されるのが。

なのに。

嗚呼…本当に私達はなんて馬鹿なことをしてしまったのだろう…っ!!!心からこの子の幸せを願っていた。願っていたのに…ッ!!!











不器用なあの子に、あんな顔をできるようにさせてしまった。










真っ直ぐすぎるほどの好意を向けてくれたあの子に、あんな言葉を吐かせてしまった。













誰もよりも、愛しくて幸せになってほしかったあの子に、『悪役』を演じさせてしまった…っっ!!!!!!
























ひゅっ、と息を呑んだあの瞬間をこれからも忘れることはないだろう。

全てを諦めた顔で横を通り過ぎていく愛子をとっさに刺した判断は正しかったと言える。

手放した結果が、このザマだ。

『幸せになってほしかった』だなんていう私たちの身勝手なエゴのせいでこの子は地獄に行ってしまった。

少し考えればわかったはずだ。

私たちが手放したからといってこの子が幸せになる保証は何処にもない。

何処にもなかったのだ。

強く強く強く愛しい愛しい子を抱きしめる。

もう、絶対に手放してなんてやるものか。

この子は私の国民であり、大日本帝国の息子であり、アレらの孫で、私達の誇りだ。

あんな奴らなんかに、この子は渡さない。

例えこの子が望もうがこんな『シアワセ』は認めない。

らしくもないことをするからこんなことになった。

もう、自制などするものか。

それが、正しかろうが間違って入ろうがそれだけは譲れない。例え、世界から糾弾されようと、世界がこの子を悪だと言おうと私達はもう二度とこの子を手放さないし、もう二度と間違えない。












絶対に。













































はい、どうだったでしょうか。

期待させてすみません長文お疲れ様でした。

もう完全に余談なんですけど、やっぱりいいですね。

一方的だった感情を本人が引くくらい倍乗せして返ってくる系の激重な愛。

本人の感情をガン無視した『エゴ』を押し付けてその結果めちゃめちゃ不幸になってる奈落の底に落とされたような絶望!!

しかと、本人はそれを『幸せ』だと宣うんだからもう最高ですね!!!!


おっと余談が過ぎましたね



ここまで、読んで下さり有難うございました!



良ければ感想なり妄想なり癖なりコメに書いてってもらえると嬉しいです!



それではまた!

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