「地元が……俺の武器?」
鳥取は大阪の言葉を反芻した。
(確かに、俺はこの砂丘で修行してきた。でも、それがどう戦いに……?)
混乱する鳥取を見て、大阪はニヤリと笑う。
「お前なぁ……まだ気づいてへんのか?」
「……え?」
大阪は砂を蹴り上げ、その場で軽く跳ねた。
「ここは鳥取砂丘や。普通の地面とは違う。お前はこの砂丘で鍛えられてきたんやろ?なら……この環境を活かさな勝てるわけあらへんやろ?」
「環境を……活かす……?」
その言葉を聞いた瞬間、鳥取の脳内に電流が走った。
(俺は、ここで修行したんだ。普通の地面じゃできない、砂丘ならではの戦い方があるはず……!)
兵庫に勝つためには、真正面から挑むだけではダメだ。なら——
「……やってみます!」
鳥取は力強く頷き、深く息を吸い込んだ。
兵庫はそんな鳥取を静かに見つめる。
「……いいだろう。なら、もう一度来い。」
鳥取は一歩、足を踏み出した。
——だが、これまでとは違う。
砂を踏みしめた感覚をしっかりと捉え、次の瞬間、鳥取の身体はまるで砂に溶け込むように滑る。
「……ほう?」
兵庫の目がわずかに細まる。
鳥取は無駄な動きを省き、砂の上を流れるように移動する。大阪との修行で身につけた「砂丘の戦い方」を最大限に活かすのだ。
(この砂の上なら、俺は誰よりも速く、軽やかに動ける!)
鳥取は鋭い軌道で兵庫の側面に回り込む。
「さっきよりはいい動きだな。」
兵庫は冷静に迎撃しようとする。しかし——
ザザザッ!!
鳥取の足が砂を滑り、次の瞬間、急激に方向を変えた。
「!?」
兵庫の拳が空を切る。
(読まれなかった!!)
鳥取は砂の上で自在にバランスを取りながら、兵庫の背後へと回り込んだ。
「……なるほどな。」
兵庫は口元をわずかに緩めると、すぐさま振り返りざまに拳を放つ。
しかし、鳥取はすでに次の行動に移っていた。
砂の上に手をつき、そのまま体を低く沈めると——
「——喰らえぇぇ!!」
砂を蹴り上げながら、渾身の右拳を兵庫の腹部に叩き込んだ!!
ドゴォッ!!
「……っ!」
兵庫の身体がわずかに後退する。
大阪が目を見開いた。
「おお……当てよったな!」
鳥取は拳を握りしめたまま、息を荒くする。
(やった……ついに、一撃当てた……!)
兵庫は無言のまま腹を押さえ、そして、口元に微かな笑みを浮かべた。
「……ふっ。面白いじゃないか。」
次の瞬間——
「では、俺も本気を出そう。」
兵庫の足元が砂を弾き飛ばした。
「えっ——」
鳥取の視界が一瞬で埋まる。
兵庫の姿が……消えた。
「遅い。」
背後から冷たい声が響いた。
——ドガァッ!!!
鋭い蹴りが鳥取の背中を貫く。
「ぐはっ……!」
吹き飛ばされる鳥取。しかし、砂丘の上で何とか転がりながら衝撃を逃がし、すぐに立ち上がる。
「……今のが、お前の本気……!?」
兵庫は腕を組み、再び鳥取を見つめる。
「今の一撃、悪くなかった。だが、まだ俺には届かない。」
鳥取は拳を握りしめ、砂丘の上にしっかりと立った。
(まだ……まだやれる!!)
負けられない。ここで折れるわけにはいかない。
鳥取はもう一度、兵庫に向かって走り出した——!!
〈続く〉
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