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鳥取は砂丘の上を駆ける。
だが——
「甘い。」
兵庫の低い声が響いた瞬間、視界が揺れた。
ドガッ!!
「ぐっ……!」
兵庫の拳が鳥取の肩を撃ち抜き、砂の上に叩き伏せる。
「お前の動きは悪くない。だが、まだ読みやすい。」
兵庫は鳥取を見下ろしながら、冷静に告げた。
鳥取は痛みに耐えながら、拳を握りしめる。
(確かに……今の俺の動きは、さっきと同じだった……!)
砂丘の動きを活かし、相手の死角を突く。それは有効だった。だが——
「相手に読まれたら意味がない。」
兵庫の鋭い眼差しが、鳥取を射抜く。
「戦いは生き物だ。同じ手は二度と通じん。」
鳥取は歯を食いしばった。
(つまり、俺はもっと……変幻自在に動かなきゃいけない!)
大阪が腕を組みながら、ニヤリと笑う。
「ええなぁ、鳥取! そろそろ見せたれや! お前の“真の砂丘の戦い方”を!!」
「“真の”……?」
鳥取は大阪の言葉を反芻した。
(俺の戦い方……俺だけの戦い方……)
鳥取はゆっくりと立ち上がり、砂を握りしめた。
(砂丘は、俺にとってただの戦場じゃない……これは、俺の“地元”だ!)
砂丘は常に動き続けている。同じ形を留めることはなく、一瞬ごとに変化する。
(そうか……俺も、砂と同じように変化し続ければ……!)
鳥取は深呼吸し、兵庫を見据える。
「……いきます!!」
次の瞬間、鳥取の身体が砂に沈むように消えた。
「!」
兵庫の表情がわずかに変わる。
鳥取は砂丘の斜面を滑りながら、まるで“砂の流れ”そのもののように動き始めた。
——右、左、急停止、再加速!
(読ませない……!)
兵庫の拳が空を切る。
「ほう……!」
大阪の目が輝いた。
鳥取の動きはさっきまでとは違う。一定のパターンではなく、まるで砂の流れそのもののように変化し続けている。
(俺は砂丘で育ったんだ……この地形を、誰よりも理解している!!)
鳥取は兵庫の懐に入り込むと、砂を蹴り上げながら拳を突き出した。
ドゴォッ!!!
「……っ!」
兵庫の身体がわずかに揺れる。
大阪が口笛を吹いた。
「おお〜ええやん! ついに手応えある一撃やな!」
兵庫は拳を握りしめたまま、静かに目を閉じる。
そして——
「……なら、俺も“本気”を出すか。」
鳥取の背筋が凍った。
(——今までは、本気じゃなかったのか!?)
兵庫は深く息を吸い込むと、両足を砂に沈め、拳をゆっくりと構えた。
その瞬間——
砂が……割れた。
「なっ……!?」
鳥取が目を見張る。
兵庫の周囲の砂丘が、まるで真っ二つに裂けるように割れ、砂が舞い上がる。
大阪が笑う。
「そいつはな、関西の要や。防御も攻撃も隙がない。さぁ、ここからが本番やで、鳥取!!」
兵庫は鳥取を見据え、静かに口を開く。
「……来い。」
鳥取は拳を握りしめ、砂丘を蹴った——!!
〈続く〉