「ゆりも翔太くんもお帰り。」ゆりを連れて帰ると、
ゆりの双子の妹・りりが玄関から顔を出した。
ゆりは実家を離れてりりと2人で暮らしている。
お互いの仕事の場所の間を取ったらこの場所がいい、という結論に至り
そうなったらしい。
「翔太、お帰り。」
その後ろから涼太も顔を出す。
「あれぇ?涼太くん、来てたんだ?」
「ただいまーしょうたありがとー」と少しふらつきながら
よろよろとゆりはリビングへと入っていく。
「翔太くんも少し寄ってく?」
「いや、もう遅いし帰るわ。」
「じゃ、俺も一緒に帰る。」
翔太ちょっと待ってて、と涼太は荷物を取りにリビングへと戻った。
「…ゆり、結構飲ませた?」
「…わりぃ。」
ゆりが酒に弱いことを知っているりりが、翔太に問いかけた。
「翔太くんならいいけどね。
間違いがあっても。」
「え?」
「私のゆりを泣かせないでねってこと。」
にこっとりりが笑ったところに涼太がやってきた。
「お待たせ。
ゆりちゃんソファーで寝ちゃってたからブランケットかけてきた。」
「ありがと。」
後で起こすね、と言いながらりりは2人をエントランスまで送ってくれた。
「またね、涼ちゃん、翔太くん。」
「あぁ。」
「連絡するよ。」
2人は待たせておいたタクシーに乗ると帰っていった。
鍵を閉めリビングに戻って来ると
ゆりは少しぼーっとした顔でソファに起き上っていた。
「…帰った?」
「うん。」
冷蔵庫から水を取り出すと
グラスに注いでりりはゆりに手渡した。
「弱いんだからそんなに飲んで…」
「…ほんとだよね…」
ははっと乾いた笑いがゆりの口から洩れた。
メイク落とさなきゃ、とよろよろと立ち上がると
洗面所へと向かおうとする。
「りり。」
「ん?」
「涼太くんと…うまくいってる?」
「…うん。」
「そっか…」
うん、そっかぁとつぶやきながら
ゆりは洗面所へと歩いて行った。
ゆりだってほんの少しのきっかけで
うまくいく気がするんだけどなぁ…
もはやすれ違うことすら怖がっているように見える2人を思うと
なんだかりりはいたたまれなくなった。
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