仲良しさんから頂いたリクエストです。今回は少しダークなお話に挑戦してみました。
【お願い】
この小説はnmmn作品となっております。
知らない方はブラウザバックをお願い致します。
ご本人様とは一切関係ございません。
《黒赤》
******
「ないくーん?もう帰るけど…」
ひょこっと社長室のドアから顔を覗かせて、デスクでパソコンと睨めっこしてる桃髪に声を掛ける。
「あー、ごめんりうら。俺まだ仕事終わってないから先帰っててくれん?」
ちらっとこちらを見たものの、それだけ言ってまた何かの作業を再開した彼氏に、少し寂しさが芽生えた気がしたがまぁいつものことかと思い直した。「わかった」とだけ言ってまた社長室を後にする。
今日の夕飯もウーバーでいいか。一人の廊下を歩きながらぼーっと考える。 ないくんと一緒に帰らなくなってから、それに伴って夕飯も別々に食べるようになった。たまに自炊することもあるが、殆どウーバー頼りの毎日。何ヶ月か前に珍しくないくんが作ってくれた鍋の温かさを思い出しては、心にもやもやが残った。
「あ、おった」
「あれ、あにきいたんだ。りうらに用?」
「おん、次の歌枠のセトリ決めたいんよね」
「あ〜、じゃあ帰りながら話そ」
ばったり出会したあにきと一緒に帰路に着く。先月までは隣にいるのが桃髪だったのに、今日は隣を見ると黒が映ることに少し背徳感を覚えた。
******
「ふぅ〜…これで大体決まった?」
「おう、後の3個はリスナーのリクエスト枠やし…これで全部やな」
「疲れたぁ…気づいたらもう9時って時の流れ早すぎない?」
「まぁ夢中になってると時間って一瞬よな。夕飯なんか作ったるから待ってろ」
「え、いいの!?ありがとあにきー!!」
キッチンへと歩いて行ったあにきを見送り、ぼふっとソファーにダイブする。 結局駅までの短時間じゃセトリは決まらず、あの後あにきの家にお邪魔することになった。キッチンの方から聞こえてくるトントントンという音と、美味しそうな匂いに思わず顔が緩む。もうすぐかな、もうできるかな、なんて待ちきれずにしていると、あにきの呼ぶ声が聞こえてきた。瞬時に立ち上がってキッチンへ向かうと、美味しそうな料理が机いっぱいに並んでいる。真ん中の鍋が今回のメインだろう。飛びつくように席についた俺を見て、あにきがクスクスと笑った。
「ちょっと作り過ぎたかと思ったけど、そうでもなかったみたいやな」
「お腹空いてるもん、いただきますっ!!」
ぱんっ、と両手を合わせてそう言い、まずは鍋から口に入れる。ほわっと旨味が口いっぱいに広がって、なんとも言えない幸福感に満たされた。…手作りって、こんなに温かかったっけ。思わず泣きそうになるのを隠すように、二口目を頬張った。
「ご馳走様でした」
夕飯が食べ終わり、食器洗いも終わった。ないくんはまだ帰ってきていないだろうけど、ぱぱっと荷物をまとめて玄関へ向かう。靴を履いて、最後にお礼を言う為振り返ろうとしたその時。後ろからぎゅっと抱きしめられたような感覚と同時にふわっと柔軟剤の香りがした。
「あにき…?」
「…なぁ、りうら。もう帰ってまうん?」
「え…」
初めて聞いたあにきの切なげな声。どうも心臓がどくどくするのは、ないくん以外に耳元で囁かれた事がなかったからだろうか。
「お前にはないこがおるんもわかってる。わかっとるけど、でも…今日だけでええから、俺にもりうらを愛させてくれんか…?」
ぎゅっ、と強く抱きしめられる。震えたような低く甘い声は、ドクンッと俺の心を動かしたようだ。今だけは、あの桃色を忘れてただただ黒に溶かされたい。くるっと振り返ると、綺麗な黒色の瞳と目が合った。その顔はほんのりと赤くなっている。多分、俺も同じように赤く染まっているのだろう。さっきの問いに答えるべく、驚いた様に瞳を揺らすあにきの唇に自分のそれを重ねた。
コメント
2件
うおっほい…しゅしゅてぇ… (訳・最高です!素敵!) やっぱ浮気っていい(物騒) これこれぃ…