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ある日、放課後の教室。
純喜が部活の準備をしていると、隣で拓実が何やらそわそわしていた。
「なあ、純喜くん……」
「ん?どうしたん、拓実?」
いつものツンとした態度ではなく、今日は何だか落ち着きがない。
「べ、別に大したことないんやけど……」
「なんやねん、気になるやん。言ってみ?」
「……いや、やっぱええわ!」
顔を真っ赤にして、机に突っ伏す拓実。
(え、今日の拓実、めっちゃ可愛いんやけど……なんなんこれ!)
純喜は、思わず頬が緩むのを止められない。
帰り道。
いつもなら「早よ帰るで」と先を行く拓実だが、今日はなぜか純喜の袖をぎゅっと掴んでいる。
「なあ、純喜くん……今日は寄り道してもええ?」
「え、珍しいな。どっか行きたいとこあるん?」
「……甘いもん、食べたくて」
拓実が小声でそう言った瞬間、純喜の胸はドキッと高鳴る。
(甘いもん好きなとこも可愛いけど、それを素直に言う拓実とか……やばいやばい)
「ええよ。拓実が行きたいとこ、どこでも付き合うで!」
「……ありがと」
小さく呟く拓実の声が、普段よりずっと柔らかく聞こえる。
二人で立ち寄ったカフェで、拓実はショートケーキを注文。
フォークで一口サイズに切り分けて、ふと純喜のほうを見つめる。
「なあ、純喜くん……いる?」
「えっ、俺に食べさせてくれんの?」
「べ、別にええやろ!嫌なんやったら食べんでもええけど!」
「いやいや、めっちゃ嬉しい!ありがとう!」
純喜がパクっとケーキを口に入れると、拓実は満足げに微笑む。
(な、なんや拓実……天使?いや、もともと天使やけど、今日は特にやばい)
「おいしい?」
「めっちゃ美味しい!」
「そっか……よかった」
ケーキを頬張りながら純喜を見上げる拓実。
その無邪気な笑顔に、純喜は完全にノックアウトされる。
カフェを出た後、夕焼けの中を歩く二人。
純喜は少し先を歩いていたが、ふと後ろから拓実が服の裾を引っ張った。
「なあ、純喜くん……」
「ん?どうしたん、拓実?」
「……今日は一緒にいてくれてありがとうな」
「え、どうしたん急に!?」
「……いつも、純喜くんには感謝してんねんけど、恥ずかしくて言われへんくて。でも今日は、ちゃんと言おう思って」
拓実が顔を赤くしながら真剣に言うその様子に、純喜は胸が熱くなる。
「拓実……」
「あ〜もうっ!やっぱりこういうの慣れへん!」
顔を隠して逃げようとする拓実を、純喜はがっしりと抱きしめた。
「拓実にそんな可愛いこと言われたら、俺どうしたらええかわからんわ!ずっとこのまま抱きしめてたい!」
「バカ言わんといて!」
「ええやん〜俺だけにこんな可愛いとこ見せてくれてるんやろ?」
「……まぁ、そうやけど」
拓実がぽつりとそう認めると、純喜は幸せそうに笑う。
その夜、ベッドに入った純喜は、今日の出来事を思い返していた。
「拓実、今日はホンマに可愛すぎたな……あかん、夢にも出てきそうや」
純喜の頬が緩むのを知る由もなく、拓実は自分の布団の中で、
「……やっぱりデレるの慣れへん。明日から普通に戻ろ」
とひとりつぶやいていた。