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ある昼休み、拓実は数人の女子生徒に呼び出された。
体育館裏という人気のない場所で、彼女たちは無言の圧力をかけるように囲む。
「川西くん、ちょっと話があるの」
「あんたさ、純喜くんのこと 、どういうつもりなの?」
「……どういうつもりって、何が?」
拓実はわざと冷静を装った声で答えるが、心の中はざわついていた。
「私たち、純喜くんが好きなの。あんたみたいな人がそばにいるの、納得いかないんだよね」
「純喜くんには、もっとふさわしい人がいると思わない?」
次々と投げかけられる言葉に、拓実の胸がぎゅっと締めつけられる。
自分は純喜にふさわしい存在なのだろうか。
「……だからさ、別れてくれない?」
「純喜くんのためにも、そのほうがいいと思うよ」
放課後、帰り道で純喜と一緒に歩いている拓実。
普段通りの純喜の明るい笑顔に、拓実は胸が苦しくなる。
「拓実、今日も一緒にコンビニ寄って帰ろか!」
「……なあ、純喜くん」
「ん?どうしたん?」
拓実は足を止めて、じっと地面を見つめた。
「……俺ら、もう終わりにせえへん?」
「え?」
純喜の笑顔が一瞬で消える。
「なんで急にそんなこと言うん?俺、何かした?」
「……別に、純喜くんのせいちゃう。ただ、俺らは一緒におるべきやないって思っただけ」
「そんなこと、誰が決めたん?」
純喜は拓実の肩を掴み、真剣な目で見つめる。
「純喜くんはええやつやから、誰とでも楽しくやれるやろ。俺なんかおらんくても――」
「やめろや!」
純喜の声が響き、拓実は驚いて顔を上げる。
「拓実が俺のこと勝手に決めつけんなや!俺にはお前がおらなあかんの!」
「でも……」
「誰かに何か言われたんやろ?」
拓実は思わず息を呑む。純喜の鋭い洞察力からは逃れられない。
「なあ、言ってみ?俺に隠しごとせんといて」
「……女子に言われてん。純喜くんと別れろって」
泣きそうな声で拓実が告げると、純喜は深いため息をついた。
「そんなん気にせんでええやん。俺が拓実を好きなんは、俺の気持ちや。誰にも邪魔させへん」
「でも、純喜くんが周りから何か言われるのは嫌や……!」
「俺は大丈夫やから。それに、誰が何と言おうと俺は拓実の味方やから」
純喜は強く言い切り、拓実をぎゅっと抱きしめる。
「俺、拓実とおれんくなるのは無理や。絶対に離さへんからな」
「……純喜くん」
拓実の目から涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。
翌日、拓実を呼び出した女子たちの前に純喜が現れた。
「俺の大事な人に、二度と余計なこと言わんといてな。次あいつのこと傷つけたら絶対許さへんから」
その一言で、彼女たちは何も言えなくなった。
帰り道、拓実は純喜の袖をぎゅっと掴む。
「なあ、純喜くん……ありがとう」
「おう、これからもずっと一緒やで」
拓実の笑顔を見て、純喜は誓った。彼の笑顔を守るためなら、何だってする、と。