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【メチャクチャ人せい】
Episode.7 言わない
《🎼🍵side》
その日から。
何かが、はっきり壊れ始めた。
音が、遠い。
色が、薄い。
体は動いてるのに、中身が追いつかない。
◇
学校。
チャイムが鳴る。
席に座る。
黒板に文字が並ぶ。
先生の声が、教室に響く。
でも。
耳鳴り。
キーン、と細い音。
言葉が、上滑りする。
ノートは開いてる。
ペンも持ってる。
でも、書けない。
何を書いてるのか、分からない。
🎼📢「すち?」
呼ばれてる。
たぶん、いるまちゃん。
反応が、遅れる。
🎼🍵「……なに?」
🎼📢「聞いてんのか」
🎼🍵「あー、うん」
声が遠い。
らんらんが、じっと見る。
ひまちゃんが、机を軽く叩く。
🎼🍍「顔、やばいぞ」
🎼🍵「寝不足、かな」
それで済ませる。
いつも通りの言い訳。
でも今日は。
自分でも分かる。
集中、どころじゃない。
黒板の文字が、滲む。
先生に当てられる。
立つ。
何も入ってない。
数秒の沈黙。
🎼🍵「……分かりません」
ざわっとする。
珍しい。
俺が答えられないの。
座る。
耳鳴りが、強くなる。
頭の奥で、父さんの怒号が反響する。
赤ちゃんの泣き声も、混ざる。
止まらない。
◇
カフェのバイト。
「アイスカフェラテ一つ」
🎼🍵「はい」
手が、震える。
氷を入れすぎる。
ミルクをこぼす。
🎼🍵「あ、ごめんなさい」
すぐ拭く。
でも、次の注文を間違える。
「それホットじゃなくてアイス」
🎼🍵「あ……すみません」
叱られる。
声は、強くない。
でも、刺さる。
「最近、ミス多いよ」
🎼🍵「……すみません」
それしか言えない。
視界が、一瞬白くなる。
カウンターに手をつく。
大丈夫。
倒れない。
まだ、倒れない。
◇
居酒屋。
エプロンを結ぶ手が、うまく動かない。
🎼🍵 「いらっしゃいませ」
声が、少し掠れる。
注文を取る。
メモを間違える。
違う席に料理を運ぶ。
「あの、これ頼んでないけど?」
🎼🍵「……申し訳ありません」
厨房に戻る。
また怒られる。
面倒事に、引っ張りだこ。
酔った客に絡まれる。
「兄ちゃん、顔色悪いぞー」
笑えない。
でも笑う。
途中、視界が眩む。
床が揺れる。
壁に手をつく。
深呼吸。
注文ミス。
また。
また。
また。
店長が、低い声で言う。
🎼🍵「……すみません」
みことさんが、そっと横に立つ。
🎼👑「休む?」
🎼🍵「…大丈夫です」
口癖。
条件反射。
🎼👑「本当に?」
🎼🍵「はい」
嘘。
でも、本当とも思ってる。
倒れてないから。
動いてるから。
大丈夫。
みことさんの視線が、長く残る。
でも、俺はホールに戻る。
◇
コンビニ。
深夜。
レジ打ち。
バーコードを通す。
ピッ。
ピッ。
金額を間違える。
袋を入れ忘れる。
お釣りを落とす。
🎼🍵「すみません」
また。
また。
また。
ミス。
ミス。
ミス。
ミス。
ミス。
店長が、さすがに眉を寄せる。
「今日どうした?」
🎼🍵「……ちょっと、寝不足で」
「無理するなよ」
🎼🍵「はい」
はい。
はい。
はい。
頭の中で、音が反響する。
◇
朝帰り。
足が重い。
階段を登る。
鍵を回す。
扉を開ける。
泣き声。
うるさい。
小さいのに、部屋中に響く。
うるさい。
頭の奥を、かき回す。
うるさい。
耳鳴りと混ざる。
うるさい。
でも。
言わない。
言えない。
抱き上げる。
腕が、重い。
🎼🍵「……」
声が出ない。
泣き声が、近い。
近すぎる。
頭が割れそう。
うるさい。
うるさい。
うるさい。
でも。
言わない。
俺は、何も言わない。
ただ、立ってる。
泣き声を、受け止める。
父さんはいない。
静かなはずの部屋で。
泣き声だけが、響いてる。
俺の中も。
何かが、崩れ続けている。
でも。
まだ。
壊れきっていない。
そう、信じている自分がいた。
next.♡700
コメント
6件
無理してるきってだいたい色んな言葉が自分に刺さっちゃうよね....🍵くん休んで~、、
どうしていいか何も分からない時、他人の言葉が、強くはなくても 深く残るから辛いんだよね😭 🍵くんはで自分でも無理していないと思い込んでいるから、 余計辛く感じるのかなって思った… 続き、楽しみにしてるねん🫶🏻💕︎︎🙂🎐 無理せず!頑張って👊🏻❤️🔥