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魔法学園 物語
〜幼馴染との再会と新たな予感〜
小柳『』伊波「」
風の音が、ロウの耳に届く。ここは魔法学園。魔法の素養を持つ者が集められ、その才能を伸ばすための場所。ロウは、今日もまた、この学び舎へと足を運んでいた。
『(また、あいつは屋上にいるんだろうな)』
ロウはそう思いながら、屋上へと続く階段を上る。屋上には、いつもライがいた。
『ライ、またこんな所でサボって。』
「サボりじゃないって〜休憩!
ロウは、真面目だね」
ライは、屋上の手すりに寄りかかり、街を見下ろしていた。その姿は、どこか憂いを帯びているようにも見える。
『どうせ また何か考えてるんだろ。
俺に言えないことか?』
「別に、大したことないよ、
ただ、この学園のこと少し考えてただけ」
『学園?』
「この学園でオレ達は魔法を学んで、
将来は様々なことに力を使うでしょ?」
『あぁ。』
「でもさ、本当にそれでいいのかなって。
自分の力なんだから 自分のために力を
使ってもいいんじゃないかな、って」
『自分のため、か……。お前らしくないな』
「そう?」
『だって、小さい頃のお前は
人の為に魔法を使いたいって言ってたじゃん』
「そうだっけ?」
『あぁ』
『魔法を使ってみんなの
スーパーヒーローになるとかなんとか…』
「そっかぁ…」
「その話はおいといて、
オレ試したいことあるんだよね〜」
『試す?何をだ』
「まだ内緒♪ でも、きっと面白い!」
『(また始まった、ライのこういうところは、昔から変わらない。いつも何か面白いことを探してる。そして、俺を巻き込む、危険なことじゃないといいけど、 )』
「どうしたのロウ?難しい顔して、」
『いや、別に。ただ お前が何を考えてるのか、少し気になるだけだ。』
「ふふ、心配性だな〜。大丈夫だって!
悪いことしないから」
『そうだといいけどな』
「さ、そろそろ授業の時間だよ。行こ!ロウ 」
『あぁ』
ライは、ロウの手を取り、屋上から走り出した。その笑顔は、太陽のように眩しかった。ロウは、そんなライの背中を見ながら、これから始まるであろう騒がしい日々に、少しの期待と、大きな不安を感じていた。
「よし!行くか〜」
「授業を抜け出すなんて初めてだけど、
大丈夫…だよね?」
そう心の中で自分に語りながら、学園の通用門へと走り出した。警備の目を盗み、塀を乗り越え、見慣れた学園の敷地を後にする。
「ふう、何とか抜け出せた〜!
さて、どこで試そうかな」
「(人気のない場所がいいな、
それに、ある程度広さも必要だ。
魔法を使うとなると、
周りに迷惑をかけないようにしないと!)」
「確か、学園の裏に広がる森の中に、開けた場所があったはず!あそこなら、誰にも邪魔されずに試せるよね?」
ライは森へと向かった。木々の間を縫うように進み、目的の場所へとたどり着く。そこは、木々が円状に途切れ、まるで小さな広場のようになっていた。
「ここなら、大丈夫そう、、」
「よしっ!」
最初は、何を試そう。魔法の基本は、属性をイメージして、魔力を込めること。でも、それだけじゃ、面白くない…
俺の魔力は、風を操ること。風を刃のようにして攻撃したり、風に乗って空を飛んだり……でも、それだけじゃ、まだ足りない気がする。
もっと、風の可能性を引き出して、
風の力を、自分のために使いたい。…となると
オレのやることは…、、
目を閉じた。そして、深く呼吸をする。
風の音、木の葉が擦れる音、土の匂い……。
全ての感覚を研ぎ澄ませ風を感じようとした。
「(風よ、お願い、オレに力を貸して!!)」
その時、ライの体に異変が起きた。
魔力が暴走し、制御不能な状態に陥ったのだ。
周囲の空気が渦を巻き、強烈な風が吹き荒れる。
「うわあああ!?」
『ライ!何が…!っ、』
「(ロウ!?なんでロウがここにッ!)」
「ロウ!来ないで!危ないよ!」
ライは叫んだ。しかし、ロウの声は届かない。暴走した魔力は、ライの意思とは無関係に、
周囲の木々を薙ぎ倒し、地面を抉っていく。
「(ッ、止めないと!
このままじゃ、ロウまで巻き込んじゃう!)」
「(集中して、大丈夫、
風を感じて、、 風を操るんだ、)」
ライは、必死に魔力を制御しようと試みた。
しかし、魔力はまるで意思を持っているかのように、ライの制御を拒む。それどころか、ますます勢いを増し、ライの体を内側から蝕んでいく。
「(まずい、制御出来ない、 このままじゃ、
ロウが巻き込まれちゃう…!)」
『ライ!しっかりしろ!!』
ロウは、吹き荒れる風の中、 必死にライに近づこうとしていた。 しかし、強風に阻まれ、なかなか前に進むことができない。
『何があったんだ!
急に魔力が暴走するなんて…、
まさか、またあの時みたいに…!?』
「(ロウ、お願いだから逃げて、
これ以上巻き込みたくないッ…!) 」
その時、ライの目に、ロウの姿がはっきりと映った。 必死な表情で、こちらに向かって手を伸ばしている。 その姿を見た瞬間、ライの心に、迷いが生まれた。
「(逃げて欲しい、でも、、
助けて欲しい…なんて、我儘かな、)」
その一瞬の迷いが、更なる魔力の暴走を招いた。ライの体から、今まで以上の強烈な魔力が溢れ出し、周囲の空間を歪ませる。
『ライ!!』
ロウの叫びも虚しく、ライの意識は、完全に魔力に飲み込まれていった。そして、次の瞬間、信じられない光景が、ロウの目に飛び込んできた。
ライを中心に、巨大な風の竜巻が発生したのだ。それは、まるで生きているかのように蠢き、全てを飲み込もうとしていた。
『(嘘だろ…ライ..お前、一体…)』
視界が白く染まる。意識が途絶える寸前、ロウの叫びが微かに聞こえた気がした。しかし、それもすぐに風の音にかき消され、ライは完全に意識を手放した。
「ここは…」
おぼろげな意識の中、ライは自分がどこにいるのかわからなかった。ただ、体中に強烈な倦怠感と、今まで感じたことのない魔力の奔流が渦巻いているのを感じ る。
「(体が熱い… それに、 この力、
オレの魔力どうなってるの ?)」
ゆっくりと目を開けると、そこは、見慣れない場所だった。高い高い天井、豪華な装飾が施された壁、そして、何よりも目を引くのは、部屋の中央に鎮座する巨大な魔法陣だ。
「(魔法陣?こんなの、見たことない)」
オレは、よろよろと立ち上がり、魔法陣に近づいた。 すると、突然、頭の中に声が響き渡った。
「《我は風を司る者…
汝に、その力を与えよう》」
声の主は不明だったが、ライは、その言葉の意味を理解した。これは、風の精霊の声だ。そして、自分は今、その精霊から力を与えられようとしているのだと。
「(風の精霊….?
そんな存在、本当にいるのか…?)」
疑念を抱きながらも、ライは、精霊の言葉に耳を傾けた。精霊は、ライに、風を操るための方法、そして、その力を使う上での注意点を、懇切丁寧に教えてくれた。その言葉は、ライの脳に直接響き、まるで知識が流れ込んでくるかのようだった。
「(これが….風の力… こんなにも、
自由自在に風を操れるなんて…)」
精霊との対話が終わると、ライは、自分の体の中に、今まで以上の強大な魔力が宿っているのを感じた。それは、まるで自分の体の一部になったかのように、自然に、そして、自由自在に操ることができる力だった。
「(すごい…本当に、力が手に入った…
でも、こんな力、一体何に使えば…)」
その時、ライの脳裏に、ロウの顔が浮かんだ。必死な表情で、自分に手を伸ばしてくる、あの時のロウの顔が。
「ロウ…!」
「(そうだ、ロウに会いに行かないと!
一体何があったのか、 ちゃんと説明しないと…)」
ライは、魔法陣から飛び出し、ロウの元へと向かった。しかし、その時、ライはまだ知らなかった。自分が手に入れた力が、想像を絶するほどの力であり、そして、その力が、自分とロウの運命を大きく変えてしまうことを。
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