テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
第17話
あらすじ
二人は壊れそうな心を慰め合うように、身体を重ねる。
しかし心の中には、まだ大森の存在が残っていた。
この夜を、どうやって越えるのか…
17-1 〜執着〜
ソファーに駆け寄ると寝っ転がっている、藤澤の上に馬乗りになる。
藤澤の視線が、 ふらふらと揺れながら若井を見つめた。
若井は顎を掴むと、噛み付くようにキスをした。
すると、藤澤が若井の舌を噛んだ。
ピリッとした痛みの後、口内に鉄の味が広がる。
若井は慌てて唇を離す。
「…ご、めん」
若井はとりあえず、謝った
正直 舌より心の方が痛いが、何とか自分に言い聞かせる。
確かに、今のは強引だったかもしれない。
しかし、藤澤は再び顔を寄せた。
そして、唇を合わせると口内に舌を入れてくる。
若井は困惑しながらも、それに答えようと舌を絡ませた。
もしかして、間違えて噛んだだけ?
キスをしながらも、藤澤の様子を伺う。
ふいに藤澤がすっと離れると 若井を見つめた。
若井もそれに習って、目線を合わせる。
しかし、藤澤は何も言わずに若井を見つめ続けた。
まるで、告白する直前のように身体がふらふらと揺れる。
見えない何かと、葛藤しているようだ。
若井は、藤澤の気持ちを落ち着かせようと頬に手を伸ばす。
すると その手を避けるように、顔を横に背けた。
若井の手の動きが止まる。
急に拒絶が強くなった気がした。
若井はどうしていいか分からず、困惑して藤澤の様子を伺う。
藤澤が床を見つめながら、ぼそっと呟く。
「ミセスやめようかな」
若井は息を飲む。
藤澤が続ける。
「なんか俺ってずっと二人の邪魔しかしてないし」
まるで、瞳の色が薄くなるように
藤澤が遠くを見つめ始める。
「落ちたのも俺だったら良かったのに
そしたら休止だってしなくて済んだよね」
若井は、耐えられず藤澤の腕を強く掴む。
「…涼ちゃん」
しかし、藤澤は誰かを馬鹿にするように鼻で笑った。
「俺の替えだったらいくらでも居るし」
若井は首を振った。
「まって、それは違うよ」
しかし、藤澤が遮るように言葉を続ける。
「いや、正直みんな思ってるよ
よりによって元貴か
俺だったら良かったのにって」
若井の心臓が早く脈を打つ。
藤澤の様子がおかしい
確かに、藤澤は昔から自己愛が薄かったり極端に自信が低い所がある。
だが その感情をはっきりと口に出したのは今が初めてだ。
藤澤は、壊れる寸前なんじゃないか
そう思ったら、どうしてでも助けたかった。
しかし、方法が思いつかない。
藤澤は こちらに視線を投げず、まるで独り言のように呟き続ける。
「みんな気使ってくれて言わないけど
俺でも思うもん… 俺なら良かったな
そしたら全部が上手くいった 」
若井は言葉の途中で、口を塞ぐようにキスをした。
藤澤が驚きからか唸る様な声をあげるが、気にせずに舌を絡ませる。
藤澤が若井の腕を掴むと、爪を立てて握った。
ヒリっとした痛みが走る。
つい若井が痛みで顔を顰めると、 藤澤が囁く。
「ごめん、痛いよね」
若井は首を振ると答える。
「大丈夫」
痛みはあるが、それよりも藤澤を安心させようと優しいトーンで答える。
しかし 藤澤は再び爪を立てると、若井の腕を引っ掻いた。
再び、腕に痛みが走る。
しかし、若井はこれで確信した。
藤澤が拒絶と謝罪を繰り返すのは、限界のサインなのだろう。
そう思うと、悔しくて涙が滲んだ。
このまま藤澤まで壊れるのを、ただ見ていたくない。
「…涼ちゃん」
若井は藤澤の瞳を真っ直ぐに見つめる。
「俺に何してもいいから
全部ぶつけていい」
そういうと、藤澤の瞳にみるみると涙が溜まっていく。
それがあっという間に瞳を覆うと、耐えきれずに雫が零れた。
藤澤が口を開く。
「…俺」
そういうと一旦、苦しそうに息を吐く。
「さっき死のうかなって…思って」
若井の脳が鈍器で叩かれたように、衝撃が走る。
どうにか頷くが、自分がどんな顔をしているか分からない。
藤澤が二回、瞬きをする。
「初めてやったけど、むずかし…かった 」
想像しただけではなくて、実行していたという事実に背筋が伸びる。
何を、どんな風に試したのか。
今すぐ問いただしたくなるのを、ぐっと堪えた。
今 大切なのは、そこじゃない。
藤澤が少し震えながら、自分の涙を拭う。
「でも、俺…気づいちゃったんだよね」
若井は藤澤の震えを落ち着かせるように、肩をさすった。
「ミセス無くなったら…俺も音楽できなくなるなって」
若井は、 つい唇を噛んだ。
それは若井も薄らと思っている事だったからだ。
藤澤が震える声で話す。
「他の事…みんな普通に出来ること
俺は出来ないから」
藤澤は、その未来を想像したのだろうか。
苦しそうに顔を顰めた。
「音楽なくなったら… 」
若井は藤澤の肩を寄せると、ぐっと抱きしめた。
溢れそうになる虚しさを抑えながら、言う。
「全部なくなっても…俺がいるから」
藤澤の瞳が、やっと若井を見る。
若井は、藤澤の頬を撫でる。
「涼ちゃんが死ぬまで、ずっと
俺が涼ちゃんの事…笑わせるから」
藤澤が耐えられずに、自分の口を覆う。
喉から嗚咽のような声が漏れる。
「俺が幸せにする、約束する」
若井は小指を立てると、藤澤に近づけた。
藤澤も手を震わせながら、若井の指に自分の指を絡ませる。
それでも不安で若井は、藤澤を見つめた。
視線がぶつかると、やっと藤澤が笑ってくれる。
その笑顔に心を掴まれると、さらに追い討ちのように藤澤がキスをした。
若井も、それに答えるように唇を舐めると涙の味がする。
藤澤が薄く唇を開いたので、ゆっくりと舌を入れた。
若井は指先で腰をするりと撫でる。
藤澤が甘い吐息を吐きながら、潤んだ瞳で若井を見つめた。
その温度に囚われると、藤澤に対する独占欲が湧いた。
こんな状況なのに、と思いながら藤澤の口の中に親指を入れる。
藤澤が戸惑いながらも、親指の先端を舐めた。
柔らかい舌の感覚に、焼けるような性衝動が心に広がる。
若井は指を入れたまま、唇を重ねると舌を奥まで入れ込んだ。
藤澤がくぐもった喘ぎ声をあげる。
若井の下腹部から、何かがぞわっと湧き上がった。
若井は自分を落ち着かせようと、深呼吸をする。
しかし、藤澤が若井の下を指で撫でた。
若井は、つい息を吐く。
それは既に形を保っていて、 藤澤が刺激を与えるとさらに立ち上がった。
藤澤が目線を合わせると、懇願するように言った。
「痛くてもいいから…今、いれて」
若井は一瞬の間に葛藤をする。
藤澤を大切に扱いたい気持ちと、衝動を理解してあげたい気持ちがぶつかった。
結果、若井は頷くとローションを手に取る。
いつもより多めに手に出すと、それを指で掬った。
薬指と中指を使って、藤澤の後ろの窪みに塗り込む。
ちらりと藤澤の様子を伺うと、ガラス玉のような瞳で遠くを見つめている。
若井は慌てて、自分の下にもローションを塗ると藤澤の窪みをそれを当てた。
しかし、 このまま入れるのも抵抗がある。若井はその前に藤澤の名前を呼んだ。
「…涼ちゃん」
藤澤の瞳がこちらを見る。
若井は顔を寄せると、唇を合わせた。
さらに肩を抱えながら、ゆっくりと挿入していく。
藤澤の肩が強ばる。
それを感じた若井は、やはり躊躇してしまう。
藤澤の髪を撫でながら聞く。
「やっぱり…慣らす?」
しかし藤澤は何も答えず、腰をぐっと引き寄せた。
十分に慣らされてないからか、藤澤の内側が若井の下を強めに締め上げる。
それが刺激が強く、若井は唸るように喘いだ。
「う゛」
若井が薄く目を開くと、藤澤も苦しそうに顔を歪めている。
藤澤の方が痛みは強いはずだ。
しかし、藤澤は唇を噛み締めながらも腰を動かした。
若井の腰にも強い刺激が走るが、何とか耐える。
藤澤の唇が震えると湿った声で名前を呼ぶ。
「…若井」
若井が藤澤を見る。
藤澤は若井の頬を撫でた。
「俺…こんなでごめんね」
若井は首を横に振ると、藤澤の手の上に自分の手を重ねた。
藤澤が若井の瞳をじっと見つめる。
「…でも捨てないで 」
藤澤はそういうと、腰を動かして若井の下を刺激する。
若井は、強い圧迫感に息を詰まらせながらも返事をする。
「ん゛…捨てないよ」
若井も藤澤の動きに答えるように、腰を動かす。
「大丈夫だから
ずっと、近くにいるよ」
そう言うと、藤澤の唇を親指でなぞった。
藤澤の唇が薄く開くと、 小さな声で甘く鳴いた。
それだけで、若井の思考が溶けてゆく。
藤澤が若井に顔を寄せる。
若井はキスをされるのかと思って、瞳を閉じた。
しかし藤澤はキスはせず、代わりに耳元で低く囁いた。
「俺…そういうの、信じちゃうよ 」
若井の身体が強ばる。
目を開けて、藤澤を見る。
藤澤は若井を試すような目つきで見つめた。
若井は唾を飲み込むと頷いた。
「いいよ、むしろ信じて」
藤澤が安心したように微笑むと頷いた。
顔を寄せると、今度は唇を重ねる。
若井がゆっくりと腰を動かすと、形が馴染んで来たのか
藤澤の内側が下を柔らかく、締め付ける。
さっきの圧迫感から打って変わって、甘く痺れるような気持ちの良さが広がる。
若井は熱を帯びた声で藤澤に聞く。
「涼ちゃん…まだ痛い?」
藤澤が薄目をあけると、顔を横に振る。
そして、 可愛らしく答えた。
「うぅん、きもちい…」
若井の心から、どうしようもない愛しさが湧き上がる。
下腹部が焼けるように、じりじりとした。
若井は藤澤の腰をぐっと掴んだ。
ゆっくりと下を引き抜く。
藤澤の瞳が揺れると、苦しそうに息を吸う。
若井は反動をつけると少し強めに下を打ち付けた。
藤澤が短く喘ぐ。
「ん゛!!」
若井は力加減を間違えた事を自覚しながらも、もう一度押し上げるように下を打ち付けた。
「う゛っ…」
藤澤の眉が下がると、中がぎゅっと締まる。
若井はその快感に耐えられず、 続けて二、三回腰を打ち付けた。
藤澤が首を逸らすと、掠れた声で喘いだ。
「…あ、あ゛」
思考が藤澤の妖艶さに絡め取られる。
若井はどうしても手加減できないまま、同じ動きを繰り返した。
藤澤の呼吸が、徐々に高くなっていく。
若井は縋るように藤澤の名前を呼んだ。
「…涼ちゃん、涼ちゃん」
藤澤が瞳を見つめると、腕をのばして若井の髪を撫でる。
「ん…若井、大丈夫」
若井は、心がぐっと苦しくなる。
藤澤の肩を抱きしめると、何かをぶつけるように激しく腰を振った。
藤澤が一層、切羽詰まった声で喘ぐ。
「ぅ…あ゛っ!!」
藤澤は身体を縮こませると、顔を枕に擦り付けた。
その表情や、息遣いが若井の性衝動をさらに煽った。
若井は本格的に枷が外れると、藤澤の片足を高くあげた。
「っ、…え?」
状況を掴めていない藤澤の表情を、じっと観察する。
腰の角度を変えると、さらに下を奥に打ち付けた。
藤澤の身体が大きく跳ねると、犬のような喘ぎ声をあげる。
「くぅ!!」
さらに二、三回突くと、藤澤が腰を逸らして逃げる。
若井は、それを許さなかった。
藤澤が腰を右に捩れば、若井も右側を突いた。
腰を浮かせたら、むしろ突き上げるように動く。
すると、さすがに藤澤も限界が来たのか
泣きながら若井の名前を呼んだ。
「う゛ぅ!!わ、わかい!!」
若井は鋭い目つきで、藤澤見ると問いかける。
「きもちい?」
藤澤の中がぎゅっと締まると、呼吸が早くなっていく。
藤澤は濡れた唇で何とか言葉を紡ぐ。
「ま、って」
しかし、若井はさらに追い詰める。
藤澤の太ももを自分のお腹に寄せると、腰を激しく打ち込んだ。
藤澤が、ほぼ悲鳴のような喘ぎ声をあげるのを若井は冷静に見つめた。
そもそも、考えて見ればおかしな話だ。
藤澤も大森も一緒に居たいと懇願する割には若井を捨てる選択を取った。
その恨みが、じわじわと心を燃やしていく。
若井は藤澤の耳元で囁く。
「涼ちゃん、力抜いて」
藤澤が困惑した顔で若井を見る。
若井は続けて話す。
「息、ゆっくり吐いて」
藤澤が言われた通りにゆっくりと息を吐く。
「はー、 …ぁ」
藤澤の力が抜けていく。
若井はそのタイミングで、藤澤の下腹部をぐいっと押し込んだ。
藤澤が足が跳ね上がると、甘い声で唸る。
「ぅう゛ん」
若井は、 柔らかくなった中に下を打ち込む。
深く根元まで挿れると、 藤澤が震える声で喘いだ。
「んう゛あぁ」
藤澤の中が痙攣すると、がくっと身体も跳ねる。
藤澤が前から体液を放出した。
それでも、若井は動き続けた。
藤澤が息を一瞬詰まらせると、太ももが震え始める。
若井は腰を振りながらも、藤澤の前に触れた。
藤澤の下の先端を絞るように擦ると、藤澤が声にならない悲鳴をあげる。
藤澤が、若井の手を握って動きを封じようとする。
しかし、若井はその手を叩き落とした。
若井は口を開くと、優しく話す。
「涼ちゃん、大丈夫」
若井は爪を立てると、藤澤の下の先端をカリカリと擦った。
藤澤の腰が大きく跳ねると、与えられる刺激から逃れようと身を捩らせる。
その必死な様子に、 若井の口角が上がる。
「本当に大丈夫だから
ただ、俺の事忘れないようにさ
新しいこと、覚えてみようね」
若井は、腰をぎりぎりまで引き抜くと反動をつけて奥に打ち付けた。
藤澤が泣き声のような喘ぎ声をあげると、若井の肩に抱きつく。
若井は愛しさと恨みで、さらに欲望が増していく。
若井は優しい声で囁いた。
「涼ちゃん、好き」
コメント
9件
ぴりちゃ続きありがとう✨ グハ尊い😇涼ちゃん、、、そんなことないのに、、! 続き楽しみっ!!
大森さんの居ないところでのりょっぱの×× 切ないやりとりもありつつ。それぞれ3人共個々で持ってるであろう痛みが読んでて汲み取れる。続き待ってまーす🫶✨
まーて最高すぎる…。あぁ最高です!!💖