4月の風はどこか甘くて、胸の奥をくすぐる。
桜が舞う通学路を、俺阿部亮平は少し早歩きで歩いていた。
新しい学期、クラス替え。
今までと変わらない生活だと思っていた___
少なくとも佐久間と同じクラスになるまでは。
俺はどちらかというと静かで本が好きだ。
誰かと騒ぐよりも窓際の席で風の音を聞いてる方が落ち着く。
そんな俺と違って佐久間は明るくて、誰にでも優しい、クラスの中心に自然と人を集めるような存在だ。
そんな、佐久間と同じグループで自己紹介をすることになった。
🩷「阿部くん、趣味は……読書?」
💚「うん。まぁ…….」
🩷「いいじゃん!好きな本とかある?」
💚「え、あ…..今はミステリーが___」
佐久間は俺の言葉を遮らずにまっすぐ目を合わせて聞いてくる。
この時俺の心はどこか揺れていたことに気づかなかった。
あれから数ヶ月、
俺と佐久間は住む世界が違うくらいに話せない。
佐久間はいつでも周りに人がいる。
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放課後の図書室は、日差しが柔らかく差し込む静かな場所。
俺にとっては数少ないお気に入りのとこだ。
しかしある日、いつもの席に向かうと、先に誰かが座っていた。
🩷「あ、阿部くん久しぶり!」
佐久間だった。
💚「え….佐久間?なんでここに?」
🩷「阿部くんがよくいるって、前から知ってて、」
🩷「ちょっと…..一緒に居たいな〜って」
唐突な言葉に胸が跳ねる。
佐久間は何気ない顔で俺の隣の席に座って、
机にひじをつけた。
🩷「ねぇ、阿部くん。なんかさ静かな所って落ち着くよね」
💚「…..うん、そうだね」
2人はしばらく本を読みながら、時々小さな声で話したりした。
その時間が心地よくて俺はいつの間にか図書室に行くのが”楽しみ”になっていた。
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