『誕生日おめでとう 』
パソコンに向かって作業をしているとスマホから通知音がなり画面が明るくなる
ロック画面を見ると最愛の彼からのLINEの通知
そっかもう誕生日か
スマホの時計を見ると12月15日ちょうど0:00を表示している
歳を重ねる事に誕生日の重みが減っていることを実感している
昔は誕生日が楽しみで仕方がなかったが今ではどうだろうか
20歳を過ぎた頃からだんだん楽しみが薄れていった
他のメンバーたちからも続々と通知が来る
『ありがとう』
たったの5文字を淡々と打つ
どうせ明日というか今日、リハでメンバーに会う
その時にどうせまた何かしら言われるだろう
そんなこと考えないで早く寝ないと体に響く
そう思い寝床に着く
いつものようにリハのスタジオに着いた時間は集合時間よりも15分はやい
メンバーはまだ誰も来ていないっぽい
荷物を下ろし準備をしているとメンバーがだんだん集まってきた
みんな開口一番は「誕生日おめでとう」だ
それに「あぁ、ありがとう」と返す
この一連の作業を今日はあと何回しなくては行けないのか
メンバーみんなが集まり時間までのんびりしていると太智が「よしださん!26歳の抱負は!!」とでかい声で聞いてくる
「 ないよ抱負なんて」
「面白くなーい」
「人の抱負に面白さ抱くな」
えぇ〜とか何とか言っている太智を置いて控え室からスタジオに向かう
「じんと今日この後ひま?」
休憩中いきなり後ろから話しかけられびっくりして後ろをむくと勇斗が立っていた
「このあとひま?」
聞こえてないと思ったのかもう一度言ってくれる
「仕事ないしやることもないから暇だけど」
「誕生日に予定入ってないって逆にどうかと思うけど笑」と鼻で笑われる
「うるせえ」
あんたからの誘いを待ってたんだよと心の中で思うがそんなこと恥ずかしくて言えるわけが無い
「今日行きたいとこあるから帰り待ってて」
「わかった」
どこに行くんだろうと考えているとリハが再開した
リハ終わり帰る支度が終わった頃勇斗から「行くか」と言われ後ろをついて行く
外に出ると風に吹かれ手足がかじかむ
冷えきった手を息で温めるがイマイチ効果はない
12月になりすっかり冬の寒さになってしまった
「寒いな」「そうだな」なんて在り来たりな言葉を交わしながら2人横並びで歩いていく
ショーウィンドウが立ち並ぶ街中、街路樹には無数の電球の装飾が施されている
「きれー」
「仁人にも綺麗って感情あるんだ」
「お前どんだけ失礼なんだよ」
勇斗を小突くが効果は無い…
まず気づいてすらない
どこまでも腹が立つやつだ
勇斗がとなりでスマホを出し写真を撮り始め自分もカメラを起動し写真を撮る
「これ、2人で同時に投稿したら匂わせ?になるんじゃない?」
「いやただ仕事帰りに一緒にイルミ来ただけに見えるでしょ」
「冷たー…み!るきーずはそういうの待ってるかもよ」
「はいはい、そうですねー」
だんだんめんどくさくなってきて軽くあしらっていると勇斗から小指を絡めてきた
手を繋ぎたいという合図
それでも僕は握り返さない
握り返さない僕を悟って勇斗は正面を見たまま平然とした顔で口を開く
「大丈夫。人多いから見られない」
「そういう問題じゃない…」
そう話している間も小指は絡まったまま
無言の押しに負けて手を繋ぐ
すると恋人繋ぎに直される
外で手を繋ぐなんていつぶりだろうか
最近は予定が合わず2人きりで出かけることなんてそうそう無い
今しかない幸せを噛み締めていると勇斗が口を開く
「キスは家に帰ってからね」
「しないわ//」
そう言われ顔が熱くなる
ショーウィンドウに映る顔は赤くなっている
寒さで顔が赤いのか照れて顔が赤いのか自分には分からない、というか分かりたくない
「ちょっと期待してたんじゃないの?」
「してないわ!ばか!」
勇斗の方を見るとケラケラと笑っている
ほんとにもう…こういうところだけずるいんだら
「なんか欲しいものないの?どっかのお店寄ってなんか買うよ」
そう言いながらふたりで歩き始める
歩いても手は繋がったまま
「ないよ」
「誕プレ、なんかあげたい」
「いや大丈夫」
「なんでよなんかあげたい」
「いやいいよ、はやとといるだけで十分…」
我ながら恥ずかしいことを言ってしまいだんだんと声が小さくなる
一方勇斗は何も言わない
「なんか言えよ」
「いや、それはずるいわ…」
「コンビニかどっか寄って酒でも買って俺ん家帰るか」
ご機嫌な声で勇斗から提案される
「飲みすぎないでよ?」
「その言葉そっくりお返しします。いや、でも酔った仁人可愛いからな〜」
「わかった、飲まない」
そんな事言わないで〜と言われながら繋いでいる方の手を振り回してくる
まあ、今日くらい楽しんでもいいよね…?
end
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