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SVが消えた。
僕にとって、何よりも大切な僕の妹。
ただ悲しくて、探し回って。
そんなことをしているうちに、2年もの年月が経っていた。
時の流れってのは信じられない程に早いものだ。
でも、どうしても諦めきれない。
SVは死んだわけじゃない、どこか他のところに消えただけ、そんなはず。
そう淡い期待を込めに込めて、僕は2年間SVを探し続けている。
あのころ、一緒に遊んだ海岸。
遭難しかけて大変なことになったあの山。
幼い頃、よく行った駄菓子屋…の跡地。
下積み時代、弾き語りライブをしたあの公園、そして駅前。
少し遠いところにも、足跡を辿るようにして探した。
どこにでも行った、SVがいるような気がしたから。
でもどこにもいなかった。
結局、SVはどこにもいないという結論に毎日辿り着きそうになった。
毎回、そんな結論に辿り着かないように明日こそ明日こそと無理やり笑った。
SVが消えてから、僕はSVの部屋に入っていない。
だって、なんだか、その…。
どうしても、なんだか見てはいけないような気がして。
でも、それももう終わりにするつもりだ。
最後にSVの部屋を確認して、僕は死ぬ。
そこにもいなかったら、いや居るわけないだろうが、いないことを確認して死ぬ。
2年間、頑張って耐えてきた。
でもそれももう限界な気がしてきた。
もう耐えられない、SVのいない世界に魅力を感じられない、生きる理由がない。
明確にそう思った。
そんなことをぽたぽたと思い返すように考えていたら、SVの部屋への扉の前に僕はもう立っている。
軽い木の扉には鍵などかかっていない。
ドアノブを下げ、押して部屋を開く。
埃っぽい匂いが充満してはいたが、懐かしいSVの匂いと、どこからか血の匂いがするような気がした。
電気を付けてみる。
蜘蛛の巣が辺りにちらほらとかかっている。
その先にあるのは…。
…あゝ、それはその、2年前のことだ。
いやぁ、今になって思い出すとはね…。
なんでここまで思い出せなかったのやら。
その、さぁ、僕はSVのことが好きだった。
それを恋愛感情だとは認めたくなかったけど、きっと恋愛感情を抱いていた筈。
誰だったかな、いや、思い出さなくていいや。
SVはさ、僕とは違う人が好きだったみたい。
そいつが女だったか男だったかは覚えてない。
思い出したくもない。
僕やSVはさ、キメラってやつで。
あー、あんま言いたくないけど、その…あれだよ、あれ、男性器も女性器もあんの。
だから、人間とそういうことをしようとすると、バケモノだと罵られることが多いんだ。
なんで知ってるのかって?…そりゃ僕も同じ目に何回もあったからね。
だから、いや、それは偽善だな。
結局のところ、僕のエゴだったね。
どこにも行かないで?…なんて思いで、SVの腹を包丁で突き刺して殺した。
紅い血が跳ねて、床を汚して。
愛しい大きな肉の塊が目の前に転がって。
他の人間ならそうはならなかっただろうね。
でも、SVだったから僕はそれを食べたんだよ。
素敵だと思ったんだ。
大好きな人が、僕の血となり肉となる。
ああ、素敵だ。素晴らしい、最高じゃないか。
ずっと一緒なんだ、僕とSVは。
どんなに引き離そうとしたって、もうできない、僕はできないようにしたんだ。
SVの作業机に置かれたホルマリン漬けの赤い左目。
宝石のように綺麗な赤い目に吸い込まれそうになる。
ふとその隣に目をやると、一冊のノートが目に入る。
それはレシピ本になっていた。
手に取り、軽く読んでみる。
腕の肉の調理法、心臓の調理法、脳みそ、大腸、お腹、太もも………。
どれにも写真が貼ってある。
それは愛しいSVの血肉の彩度を、そのまま映し出しているように見える。
ああ、愛しい…。
SVはもう僕の血肉になった。
ずっと一緒だ。
ああ、なんて僕らは幸せなんだ。
こんなボクらの辛せが、未来永劫続きませんように。