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ちょっと待ってよ。確かに元貴のことは”恋愛的に”好きだけど。
元「わ、わかいぃッ」
「⋯っも、もとき⋯!?」
こんな夢を見るとか聞いてない!!!!
「っは⋯!?!?」
急いで布団を捲り上げて下腹部を確認する。
「まじかよ⋯冗談きついって⋯」
どんなだったかは想像に任せよう。
夢。それは、脳内の記憶を整理するため、寝ている時に行われる。
だから例えば、夢の中でゾンビが出てくる悪夢だったり、学校の夢だったり。
見る夢の種類によって自分の精神状態が分かったり分からなかったり⋯。
とりあえず、そんなようなものが、夢らしい。
だが、今回の夢は洒落にならん。
「好きな子とエッチなことする夢って⋯」
ちょっと検索してみよう。えーっと、ふむふむ⋯
「"今の関係性に満足していない""もっと深い関係に⋯"って⋯」
「なんだよそれ⋯⋯」
でも確かに、元貴とバンドメンバー以上の関係にはなりたいとは思うけど⋯
元貴って、思わせぶりが激しいし⋯⋯確かに、満足はしてない⋯⋯のか?
いや、だからと言ってこんな夢を見るのはおかしい。
とりあえず、今日の収録は休もう。
涼ちゃんに連絡すれば⋯⋯
いや、優しい涼ちゃんに漬け込むのはなんか嫌だ。
だからと言って張本人に連絡するのは色んな意味で無理だ。
⋯⋯マネージャーに連絡しよう。それが安全だ。
「もしもし」
『もしもし、若井さんですか、どうされました?』
「ごめん、今日ちょっと収録行けないかも。」
『えぇっ、そりゃまたどうして』
「ちょっと具合悪くてさ⋯咳とかはないんだけど、頭痛かったりするんだよね」
『そう⋯ですか』
「うん⋯」
『⋯分かりました。皆さんには僕から伝えておきます。お大事にしてください。』
「ありがとう。お願いします」
ツー⋯ツー⋯⋯電話が切れた。
やっぱり少し罪悪感は残るけど、こんな夢を見てからじゃ意識しすぎてまともにギターを弾けそうにもない。
多分、これが正解だったのだろう。
今日はもう寝よう。さすがに二回目は見ないだろう。
プルルルルという電話の音で俺は飛び起きた。
「ん⋯?誰からだ⋯?」
そこに書いてあったのは、紛れもなく、
"表情筋オバケ"──────通称"大森元貴"からだった。
「な、んでだよっ!こういう時ばっか連絡してくるんだから⋯!」
指名されては仕方ないので電話に出よう。
「⋯もしもし」
『あっ、やっと出た!良かったぁ』
画面の向こうからでもあからさまに安堵した声が聞こえてくる。
くっそ、可愛いなおい。
「なに?どうしたの」
『い、いや別にどうもしないけど、風邪って聞いたからどんだけ酷い状態なのかを⋯ね?』
「うん」
いや可愛いな!?ツンデレかよ!!
そんなときでも夢の中で起きたことを知らない元貴は、さらに俺を追撃してくる。
『あの、さ⋯明日、くる?』
「⋯え、あ⋯⋯た、多分⋯?」
『多分、か⋯⋯あっ!?ぜっ、絶対来てね!?』
「う、うん⋯?」
『そっそれだけ!じゃあね!!』
「あっちょっ─────」
なんだったのだろう。すごく、動揺、というか、焦っていた⋯?
「はぁぁ⋯わかんねぇ⋯」
明日、どうしようかな。
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