「 あの、なーくん … ? 」
「 … 何? 」
「 お、怒ってる? 」
「 怒ってる。 」
ジェルの両腕を纏めて掴んで壁に押し付け、おどおどする彼にそう即答すれば、小さく開いた口から「ひぇ」なんて情けない声が出る。
忙しなく視線を彷徨わせるジェルに溜息をつけば、大袈裟に体を震わせて1つに定まらない視線で俺の事を見て。
「 ご、ごめんね? 」
「 … それは、何に対して? 」
「 怒ってる理由が分からないことに対して … ? 」
… 本当に、コイツは。
俺が怒っている理由だが、至ってシンプルで。俺以外の奴と距離が近すぎるのだ。
顔に吐息がかかるほどの距離で話し合ったり、腰を抱かれても何の疑問も持たないし、なんなら自分から更に近付いていく始末だ。
彼氏としてはそんなの見過ごせないだろう。俺もその場に居るのにそんなことを平気でするもんだから、今日はその相手となってしまった莉犬に随分気を遣われてしまった。
「 … お前さぁ、距離近すぎんだよ。 」
「 えっ、あ、なーくんッ、!? 」
するり。
彼の両足の間に自身の足を滑り込ませる。焦った様子の彼を気にせず、膝を少し引き上げ、服越しに彼のそれを刺激して。
「 ん、っん、まって、 」
「 俺がいんのにあんな近い距離で話す必要ある? 」
「 あッ、ごめ、でもまって、 」
「 この前もそれで俺にお仕置されたばっかだよな? 」
もしかして、狙ってやってんの?
ぐい、と思い切り押し付けてやれば、びくびくと体を震わせて体の力が抜けたジェル。荒い息と真っ赤な顔、潤んだ瞳から察するにこれだけで軽く果ててしまったんだろう。
無自覚天然、かつ不器用で俺のことを振り回しまくっている彼が狙ってやるなどという器用なことは出来ないと分かりきっている。所詮ただの嫉妬だ。男の、醜い嫉妬。
まだ余韻に浸ったままのジェルがゆっくり顔を上げ、俺と目が合った時。
ぶわり、と効果音がつきそうなくらいハッキリと顔が赤く色付いた。
「 … 何? 」
「 あ、や、その … 」
可愛い恋人の顔を見るのを邪魔をする前髪を乱雑に掻き上げる。するとまた、漫画みたいに分かりやすく赤くなる顔。
「 なに。 」
「 っ、その、… なーくん、かっこよくて、 」
「 … は? 」
「 いつもと違う目してるのも、髪 … そうやって触るのも、なんかかっこいいなって 」
「 照れちゃうっていうか、あの … ごめん、きもいよね!? 」
… 本当に、本当に、コイツは。俺の気持ち知らないで。
ごめん、今そんなこと言ってる場合じゃないよね!俺今怒られてんだもんね?!なんて、1人であたふた喚く口を塞ぐ。無論、俺の唇で。
「 ん、っ … ぃ、ふ、ッ … ぁ 」
「 お前さぁ、ほんとに … 煽ってるよな? 」
「 あ、えっ?ごめん、俺また、なーくん怒らせ … ? 」
「 それはもういいから。 」
「 え、そ、そうなの … ? 」
「 うん、もういい。だから今からお仕置な。 」
「 … エッ?! 」
待って、なんで?!何に対しての?!なんて1人で騒いでる口はベッドの上に降ろしてもうるさいままで、シャツを引っ張って少し乱暴に口付ける。
コイツは、多少酷くされる方が好きなのを俺はよく知っている。
今だってほら、さっき果てたばっかりのはずなのにもう硬さを取り戻している。
キスだけでとろとろになって、肩を上下に動かして息をしている彼の耳元で囁く。
「 ジェル 」
「 、ん … ? 」
” 意識飛ばすなよ。 “
え、と戸惑ったような声を聞こえないフリをして、2人でシーツの海に沈み込んだ。
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