夏は綺麗な水色が空を覆う。
盛夏に入る頃に降る長期的な雨には名前があるらしいが、俺は知らない。
春を終わらせる雨に名を付けても名残惜しくなるだけだろうとひとりでに思考を運んでいたが、人間達からすればそれは夏の一つ手前の季節、「春」を終了するお告げとも言われているそうだ。
肌に纏わり付くような湿気が空気を濁らせる。
人間だけでなく、畑に育つ野菜や木に実る果実にも纏わり付く雫を人間は嫌うらしい。
傘に優雅な音を立てて舞い落ちる雨を好きでも嫌いでもない場合はどう言葉に表せれば良いのだろうか。
アスファルトを焦がす暑さ、セミの鳴く声、外で走り回る子供の声。
畳の匂いや自身から次々と滲み出てくる汗の匂い。
扇風機から聞こえる壊れかけのラジオみたいな音、階段を親が上る音。
「〇〇、暇なら買い物付き合って?」
六畳半の部屋に大の字で寝る暑さで悶え苦しんでいる俺に対して、親はアイスを片手に言った。
「じゃあ俺の分も寄越せ」
「嫌やし、てかこれ単品やからありませ〜ん」
片目の下瞼を下に思い切り引っ張る彼女に、暑さから来たものか、はたまた彼女の煽りに乗せられただけか分からないが、腹の奥底から怒りという怒りが増幅してくる。
何にせよ買い物には着いて来て欲しいようだったので着いて行くことにした。
暑くも、多少の涼しさがある温度が熱中症を起こさない範囲で体温を調整してくれる。
そんな気候が人間に対してささやかな配慮をしてくれている夏が、俺は大好きだ。
「じゃあここで待っといて」
歩いて二十分という、あらかた近場に位置しているスーパーに入っていく親。
言うことを聞かないと暑さで◯されるかもしれないので素直に従ったが、この暑さの中スーパーの中でではなく外で実の子供を待たせるのはどうかと思うのだが?
まぁ言ったところで口論になるだけなので決して声にはしないようにするが。
「…あ”っつ」
肌に染み付く湿気が強くなってきた。
そう感じた瞬間、いつの間にか灰色に染まっていた空が泣き始める。
ぽつりぽつりと一つ一つの粒達が、先程まで焦がしていたアスファルトに水を注いでいく。
思わずジュッとなりそうなそれは、音をなる暇も与えず湿らせていく。
傘、持ってこやんかったな__
この辺には珍しい自動車の音が聞こえた瞬間、親の声が聞こえた。
最後に見た景色は、なんだったか。
あぁ、そうだ__
見えるはずのない「青い空」だった。
コメント
9件
暑い日にはアイス食べたくなるよなぁ…😭ほかを見ていた運転手が確実に悪い。あときょーさん?と思われる人物に突っ込んだのなら店にも…🤔
事故…!?
最後の方で気づいたけどこれきょーさんか!?確かに喋り方も合致する... 轢かれた?見えるはずのない青い空...てか突っ立ってる子に突っ込む運転手どこ見てんだよおかしいだろ😡