僕は「日」を見たことがない。
黒く染まった空、溶岩が溢れる地上、生きているのか死んでしまっているのか分からない生物たち。
けれど唯一、家内に存在している炎は強烈で、僕には大きな存在で直視の出来ないものだった。
兄弟達は何に対しても秀才だった。
出来が悪いに加え、腹違いの子供である僕は、拾った張本人である両親、兄弟達から忌み嫌われた。
何も出来無いのなら、出来無いなりにと身近の存在している可能だと思うものに手を付けた。
誰もが僕の行動に不信感を抱く中、普段使用人が行うような雑務や家事、洗濯を得意としていった。
そして毎朝怪訝な顔をしながら入ってくる使用人には席を外して貰うよう指示し、「自身の身近な物は責任を持って自分が所持する」ということに、両親から許可を得ることが出来た。
しかし、僕を毛嫌いしている両親が「渋々」では無く「快く」承諾してくれたことに、すかさず違和感を抱いた。
数日後、地獄のような稽古が終わり、自身の部屋へ戻ると家具やその他の生活品が諸共破壊されていた。
部屋に散らばる破片たちに、目の前の行為を誰がしたのかなどは明白だった。
今思えば、怒りや憎しみなどの「感情」を失ってしまったのはいつ頃だったろうか。
日常的に起こる災難に非日常的な言葉を並べても埒が明かないと自覚した瞬間からだろうか。
それならば僕は何年、この胸中の痛みから目を背けて来たのだろうか。
膝を床に付き、死んでしまった椅子の破片をかき集める。
冷たくなるはずのない石作りの床は、心の傷を抉るように冷たく、次々と増幅する感情を抑えるどころかその場に留めてしまう。
苦しくも熱い、失っていた感情が湧き出て、そして最後には溢れてしまう。
音もなく流れ落ちた雫が宙を舞い床に到達する時、虚しくも蒸発してしまう姿に孤独さへも感じてしまう。
跡を残すことさへ許されないのかと、存在を否定されているかのような気持ちになるのは、こんなにも苦しく、辛くいものなのだと知らされた。
今まで抑えていた感情と抑えきれなくなってしまった理性が次々と溢れ、やがては自身を飲み込んでしまう。
どれくらい意識を失っていたのだろうか。
熱く焼けそうな瞼をこじ開けると、目の前には焼け野原に変わり果てた景色があった。
いや、しかし以前と変わらないのかもしれない。
今まで見ていた景色も地獄のようなものだった。
住んでいた家も、家族も無くなって、全てが更地に戻っただけ__
認識するとともに撫で下ろされる胸には、一つの黒い指輪が握られていた。
コメント
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優しすぎたからこそ、我慢をしようとしてのことだよね。本当にあり得ることだから我慢をし過ぎないことは大切なんだと分からされたかも。…なんか僕純粋な奴みたいな😂