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ムツキもナジュミネも調査でおらず、ケットも先ほどクーにぶん投げられ、多くの妖精たちが畑や牧場で精を出しているので、家にはクーとユウと数匹の妖精たちがいるだけだった。
ユウは外に出かけることもないからか、金髪の髪を梳かしておらずに少しボサボサにしたまま、純白のフリフリフリルのパジャマから着替えずに昼間を迎えていた。
「やっぱ、ムツキの影響は大きいね。すっかり撫で方を覚えちゃった」
ユウは小さく柔らかな手を使って、ムツキ直伝の撫で方で碧のつやつやの毛並みを持つクーを撫でている。クーは腰の辺りを撫でられるのが好きなようで、終始にこやかな笑顔で彼女の前にいる。
特別なこともなく、ただただゆっくりと一定のリズムで優しく撫でている。
「夫婦は似る、とよく言う」
「あはは、ムツキは私に似ないけどね」
ユウは少し違っているというニュアンスでクーに返す。クーは少し考えて再び口を開く。
「飼い主によく似る、とも言う」
「あはは、だったら、首輪でも付けちゃおうかな」
ユウは撫でる動作を一旦やめて、両手を自分の首に当てる。まるで首輪をしたらこんな感じになるぞ、とクーに示しているようである。
「幼女に首輪は絵面がマズい。まあ、主様は良くも悪くも芯が強すぎる。心根が優しいから気配りもできているようだが」
ムツキは自分の信念を折ることはないが、ある程度の柔軟性も兼ね備えているようだ。
「そりゃ私が見つけてきた最高の人なんだから、当然よね」
「ユウの惚気はいつもそこに落ち着く」
クーもまたナジュミネと同様に、ユウと呼ぶように言われて、素直に従っている。彼の場合、長年の付き合いもあることと、相手によって言葉遣いを変えることが苦手なこともあって、ぶっきらぼうな話し方になっている。
しかし、それを気にする者や咎める者はいない。
「それ以外に言うことないからね」
ユウはえらくご機嫌で鼻歌交じりにクーと会話している。
「自分の回数を増やしてもらってご機嫌なようだな。しかし、主様のモフモフ回数を減らすのは可哀想だ」
「本音は?」
「オレの当番が中々回ってこない」
ユウがドッと笑う。クーは笑っているように見えるが、おそらく楽しくて笑っているわけではなさそうだ。
「その代わりに、私がこうやって撫でてあげているじゃない?」
ユウは次に耳の付け根辺りを丁寧に撫で始める。
「それはそれでありがたい。だが、ユウと主様ではちょっと違う。この差は決して埋められない」
クーはユウに礼を述べつつも、ムツキとユウでは異なると率直に伝えた。
「まあ、愛情の差かな。私も皆に愛情を持って接しているけど、あくまで基本的には平等な愛だから。もちろん、ムツキには偏った愛になっちゃってるけどね」
「主様は全力で関わっている全員に個別の愛情を向けているからな。パワーの使い方が違い過ぎる。ユウはこの世界の全員にちょっとずつ愛情を注ぐから1つ1つは小さい」
「そうよね。まあ、それでも、さすがにここの皆にはもう少しくらいは多めに愛情を注いでいるつもりよ? あまりひいきしているわけではないけれどね」
「そうか。ありがとう。ところで」
「ん?」
クーは話の切り替え方が得意ではない。ユウもそれを承知しているので、急に話がぶった切られても気にしないようにしている。
「昨日だか一昨日だかの寝言について気になっている。リゥパをけしかけたのか?」
「あらら……寝言に出ちゃってた?」
ユウは小さな下をチロッと出して、いたずらが見つかった子どものような表情をする。クーは珍しく溜め息を吐いていた。
「あまりやりすぎるな。ハーレムを増やすと自分の回数も減るし、モフモフも減るだろう。それに、主様や周りへの負担も大きい」
「ん-。私は彼の望みを叶えてあげたいだけ。たしかに、ナジュみんにはちょっと辛いかもしれないけど、ナジュみんも2番目なら魔族としての体裁は保てるし、いいんじゃないかな。わかんないけど。あと、そこに自分だけ見てほしいなんて私情は挟まない」
「分かりづらい愛情表現だ」
「分からなくてもいいよ?」
クーは突き放したように言ったが、逆にユウに突き放された言い方をされてしまう。しかし、彼らはお互いに突き放されたとは思っていない。率直に言い合う関係がお互いに築かれているからだ。
「オレはユウの味方だが、主様が一番だ。主様が困らない限りはいい」
「気を付けるわ。でも、あと3~4人は希望しているみたいよ? ムツキ」
「……知らなかった。実にむっつりスケベだな」
「いろんな種族と仲良くなりたいのかもね」
「……まさか」
「そのまさかも1つの内よ」
「モフモフ好きもそこまで来ると極致だな」
クーもユウもしばらくは何も言わず、ユウがクーをただただ優しく丁寧に撫で回すだけだった。