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昼想夜夢
第1話
大我Side
「大我!
松村さんがいらっしゃったわよ!」
女将さんから声をかけられて
着物の裾を踏まないように
気をつけながら
お店の入口に駆けて行くと
細身で引き締まった体躯に
よく似合っている紺色の着物を着た
松村さんが
柔和な笑顔を浮かべて立っていた。
「松村さん!」
私が嬉しさのあまり正面から
ギュッと抱きつくと
松村さんも嬉しそうに
にこやかに微笑んで
柔らかく抱きしめ返してくれる。
部屋に入って
ふたりっきりになって
照明を薄暗くして
お布団に入ったあとも
松村さんは私のことを
いつも慈しむように
大切に扱ってくれて
けっして
私の着物を脱がせることもしないし
抱くこともしない。
「俺は大我のことを
大切に想ってるから
他の客みたいに
大我を抱きたくないんだよ
大我の体に障ることは
したくないんだよ」
松村さんから
穏やかな口調で言われたときは
その気持ちが嬉しくて
思わず涙が零れ落ちて
声を抑えながら
松村さんの着物の胸元に顔を埋めて
泣いてしまった。
そんな私に優しく寄り添うように
松村さんはお布団の中で
私の髪をゆっくりと撫でてくれて
愛おしむようにキスをしてくれて
穏やかな口調で
ゆっくりと近況を話してくださる。
そして、私にも話を振っていただいて
松村さんの温かい腕の中で
ゆっくりと近況を話して
何度も何度も
熱いキスを交わして
そのまま穏やかに一夜が明けて
朝日が昇る早朝に
私と松村さんの儚い逢瀬は終わる。
最後に名残惜しい気持ちに
耐えるように
お布団の中で
松村さんは
悲しそうな
寂しそうな表情を浮かべながら
私の後頭部を
力強く手で押さえて
舌が絡まり合う音が
部屋に響くほど
激しく激しくディープキスをして
私の唇に
松村さんの想いを残したまま
お店の入口で
小さく手を振って別れる。
その関係が
もう5年間続いている。
松村さんに
恋焦がれても
成就しないことは
わかっている
松村さんはお客様
私は体を売っている遊女
松村さんが
私みたいな下人(げにん)を
雪村 麻耶 @ ペ ア 画 中
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雪村 麻耶 @ ペ ア 画 中
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好きになってくれるわけない。
愛してくれるわけない。
でも
松村さんと逢瀬を重ねるたびに
想いが募っていく。
松村さん好きです
お慕いしています。
その一言が永遠に言えない。
だって
ここは
束の間の春を売る遊郭だから。
(2話につづく)